蒼月の節「進化と伝説の槍」



 ―闘神オーディンとの死闘から数時間が経過していた。


 アーデルハイトとギルベルトの猛攻は、オーディンのHPを残り三分の一まで削っていた。


 レグルスの回復魔法があるとは言え、二人はもはや致命傷の攻撃を受けても尚、その攻撃の手を緩める事はなくなっていた……。



 アドレナリン出まくりだなアイツら。もうオーディンからの攻撃を受けようがお構い無しじゃねーかよ。



 そして、この短時間でアーデルハイトとギルベルトの二人の連携は見事なまでに成長していた。


 オーディンの攻撃を基本はギルベルトが受けて防ぎ、その隙にアーデルハイトがオーディンへと攻撃をする。


 逆にアーデルハイトがオーディンに攻撃された時は、雷によって一瞬だけオーディンを麻痺らせ、その隙にギルベルトが大振りのダメージを与える。


 このコンビネーションにより、二人はオーディンのHPを着実に削っていった。



「ギルベルト!」



 アーデルハイトが雷を放った。


 雷を受けたオーディンが一瞬麻痺をした隙に、ギルベルトの大剣が襲いかかる。



「うおぉぉぉ!!!」



 ―ドゴンッ!



 ギルベルトのとも言える大振りが、オーディンの体を吹っ飛ばした。


 オーディンはこの死闘で、はじめて地面に手を着いた。

 その光景に思わず、レグルスは目を見開いてしまった。



「ハハハ……やっぱりゲームとは全然違うわ。これが生の死闘ってやつか!」



 するとギルベルトは、なんと大剣を投げ捨てオーディンへと飛び付きその体を抑え込んだ。



「アーデルハイト様、今です! 俺がオーディンを抑えている内にとどめを―」



 おいおい、なんて無茶しやがるギルベルトのやつ。

 オーディンになんて普通しねーだろ!?



「…ありがとうギルベルト。この一撃で決めるわ!」



 アーデルハイトは自身の槍に雷を



「…あれは、まさかアーデルハイトのやつ、この状況で技をさせたのか!?」



 この時レグルスは不覚にも見落としていた。


 ゲーム上では、敵を倒せば経験値は確かに獲得出来る。

 だが、実際の戦闘において敵を倒さずとも、オーディンとの死闘を繰り広げていた二人にはが加算されていたのだ―。



 アーデルハイトLv30。


 ―戦技・雷槍



 槍先に凄まじい雷が集まる。



「闘神オーディン、これで終わりよ!」



 ―はあぁぁぁぁぁ!!!



 アーデルハイトは空高く跳んだ。

 そして、空中からまるで自身が落雷の如くオーディンの胸へと槍を突き刺した。



 ―ドスッ……バリバリバリバリ!!!



 槍を刺されたオーディンの全身に電流が流れ込む。


 自身も電流を受けながらも、決してオーディンを離さないギルベルト。

 槍先にありったけの力と魔力を込めるアーデルハイト。


 そしてついに、全ての電流が消えると同時に、オーディンの体は消滅した。


 だけを残して―。



「いい戦いだったぜ……二人共」




 ★☆★




 ―パチパチパチ



 レグルスは拍手をしながら二人に歩み寄った。


 アーデルハイトとギルベルトは、既にヘトヘトの状態で地面に座り込んでいた。



「いや〜お疲れお疲れ! ナイスファイトだったぜお二人さん!」



 笑顔で二人を祝福するレグルス。


 すると、目つきが変わったアーデルハイトとギルベルトはレグルスへと駆け寄った。



 ―ドゴッ!



 二人の蹴りが、レグルスの尻に入った。



「いってーなあぁぁぁぁぁ! 何すんだ!?」


「それはこっちのセリフよ!!!」

「それはこっちのセリフだ!!!」



 二人はレグルスを睨みつけた。



「ま、まぁでもよ……結果オーライだろ? 二人のレベルはめちゃくちゃ上がったんだしさ!」



 アーデルハイトLv40。

 ギルベルトLv40。



 新たな魔法と戦技も習得し、二人のステータスも格段に上がった。



「…まぁ、確かに私達のレベルは相当上がってるわね。今まで以上の力を感じるもの」


「確かに、普通の稽古ならばここまでの成長は見込めまい。なんせあの闘神オーディンを倒したのだからな」


「だろ? だろ? ほらな、やっぱり俺の計画は完璧だったろ!?」



 アーデルハイトとギルベルトは再び、レグルスを睨みつけた。



「ご、ごめんしゃい……」



「…でも、私達をここまで強くしてくれた事にはお礼を言うわ。ありがとうレグルス」


「あぁ。お前でなければ、この無謀な方法は実現出来なかっただろうしな。俺からも礼を言おう」



 二人の感謝の言葉に思わずレグルスは照れてしまった。



「あ、そうだ。アーデルハイト、オーディンの跡に落ちてたりしなかったか?」


「え? そうね……あそこにが地面に刺さってるけど?」



 ―おい、もしかしてそれは……。



「アーデルハイト、その槍を手に取ってみろ! 今すぐ」


「わ、わかったわよ……」



 アーデルハイトは地面に刺さった槍を手に取った。


 すると、槍はアーデルハイトと共鳴する様に光を放った。



「―え、これは……」



 レグルスの眼には、アーデルハイトのステータス上昇を捉えていた。



 間違いない、まさか、でドロップするとは思わなかったぜ。



 この世界で伝説の槍とされている、闘神オーディンのレアドロップアイテム。



 ―グングニル



「こりゃあ、本当に最強のラスボスを生み出すかもしれねぇぞ俺……」




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】物語に重要な動きが!?


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