蒼月の節「無限の成長」



 ―同調シンクロ



 レグルスの最強スキルであり、その内のひとつの効果。



『スキルを発動した状態でレグルスが経験値を獲得すれば、仲間にも経験値が入る』



 これは、冒頭でも説明した通り原作のゲーム攻略でも大流行した、レグルスのスキルを応用したレベル上げだ。


 これによって、レグルスのレベルがある程度上がってさえいれば、レベルの低い仲間を同行させるだけで簡単に仲間も強くする事が出来る。



 しかし、この世界に転生したレグルスのレベルはMAXのLv100。


 これは、例えどんな強敵を倒してもレグルスに入る経験値は0にしかならない。


 つまり、今目の前のオーディンを一撃でレグルスが倒したとしても、同行したアーデルハイトとギルベルトには一つも経験値が入らない仕組みなのだ。


 無論、レグルスもこの事はよく理解している。


 そして、今レグルスが発動しているのはスキルではなく自身の



 ―経験値二倍。



 これは特技を付与した仲間が敵を倒すと、その名の通り獲得経験値が二倍になる効果だ。


 レグルスはこの森へ転移した瞬間から、二人にこの特技を付与していた。

 倍以上のレベル差もあるオーディンを、二人が倒す事が出来れば貰える経験値は非常に多い。


 更にそこへ特技の経験値二倍が加算されれば、一気に二人のレベルを上げる事ができる。


 無論、それは二人が無事にオーディンを倒せればの話。

 なのでレグルスは、それらを確実に達成する為にある計画を立てていた。



 その名も『



 アーデルハイトとギルベルトは、オーディンと必死に死闘を繰り広げる。


 しかし、今の二人がまともにオーディンど戦えば間違いなく死ぬだけだろう。


 なので、二人のHPが瀕死状態になる度に、レグルスは回復魔法を即座に使用した。


 これを繰り返す事により、アーデルハイトとギルベルトはオーディンから瀕死の攻撃を例え何度も受けたとしても、レグルスの回復魔法により即HP満タンの状態へと戻る事が出来る。


 一方のオーディンは自身を回復する術を持っていないので、二人の少ないダメージでもその攻撃を受け続ける事により、HPは確実に減り続けていた。


 これぞまさに、のループ。そして無限の成長。


 必ずオーディンを二人が倒す事が出来る唯一の方法なのである。


 なので、レグルスが唯一気にしていたのはアーデルハイトとギルベルトとのであった。


 実際にオーディンと戦うのは二人だ。


 闘神と言う圧倒的強者を目の前にしても、怯む事無く立ち向かえる覚悟。


 そして、二人は今見事にその期待に応えオーディンとの死闘を繰り広げていた―。



「…アーデルハイト、ギルベルト。お前達は、ただのゲームのキャラなんかじゃない。この世界で生きるだ。だからこそ、人は死の間際で思いもよらない程の力を発揮するんだぜ……」



「はあぁぁぁぁぁ!!!」


「うおぉぉぉぉぉ!!!」



 アーデルハイトとギルベルトの顔に、もはや恐怖などなかった。


 そして、はじめてオーディンと対峙した時よりも格段に二人の動きが良くなっている。



 二人の今の攻撃力では、オーディンにとってはかすり傷程度だろう。


 しかし、その攻撃は徐々にオーディンのHPを削っていた。



 ―今ようやくまで削ったか。


 思った以上に二人の動きがよくなってるからな……この調子なら夜明けまでにはケリが着きそうだな。



 アーデルハイトとギルベルトは、オーディンと戦いながらある事を考えていた。



 ―まったく、とんでもない事考えてくれたわねレグルス!


 こんな事、常識外もいい所だわ。

 でも、これはきっと……いえ、間違いなくこの世でレグルスにしか出来ない


 だとしても、この戦いを制する事が出来れば、私達は間違いなく強くなれる!



 ―レグルスのやつめ。一体俺達の命をなんだと思っている!?


 だが、こんな事が出来るのは恐らくこの世でやつだけだろう。

 俺達が瀕死の攻撃を受ける度に、即座に回復魔法が飛んでくる。

 これなら、いくらオーディンの攻撃を受けようとも死への恐怖が無くなり、闘神相手でも躊躇なく攻撃が出来る。


 まったく……とは、皮肉なものだな―。



 そして、アーデルハイトとギルベルトの中ではある思考が一致しており、その思考が二人の今の力の源となっていた。



『この戦いが終わったら、レグルスのやつ絶対ぶっ飛ばす!』



 …あれ、あの二人なんか俺の事睨んでねー?




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】ついにオーディンとの決着が!?


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