蒼月の節「命懸けの修行」
―帝国に若葉の風が吹く。
森の妖精達は歌い
天空の女神は蒼空から
地上の生命に光を降ろすという
人々は夜空へと祈り
蒼き月は夜を照らした―。
★☆★
―蒼月の節。
この世界へ俺が転生して、一ヶ月が経った。
俺はラスボスであるアーデルハイトの指導者として、日々稽古をつけている。
さすがに帝国の皇女様の指導者ともなると、俺の城での待遇は申し分のないものだった。
アーデルハイトは俺に立派な個室を用意してくれたし、報酬もちゃんと渡してくれてる。
しかも、食事はアーデルハイトと共にするので実質飲食家賃共にタダだ。
帝国で無銭飲食をしているやつは、この俺ぐらいだろう。
それにギルベルトとの決闘の件から、帝国兵士達の俺への態度もガラリと変わったていた。
「レグルスさん! お疲れ様です!」
俺を見るなり、ほとんどの兵士達が頭を下げて挨拶して来る。
どうやら、俺がギルベルトに対して圧倒的な力の差を見せつけたのが原因だろう。
まぁ、俺も満更でもないので兵士達とはお喋りをしたりして友好な関係を築いている。
そして、ギルベルトとは決闘以来すっかりと打ち解けていた。
ギルベルトも他の兵士達と同じく、俺の強さに関心と興味を抱いており、アーデルハイトの稽古の時間外に隙あらば俺にもと稽古の相手を申し出てくる。
面倒くさがり屋な俺はいつも断るのだが、その度にギルベルトはしつこく頭を下げて頼んでくるし、時には強引に攻撃までして来やがる。
そこまでされてはさすがの俺も黙ってられず、結局今はアーデルハイトとギルベルトの二人の指導者になってしまった。
原作最強の主人公が、ラスボスとその右腕に稽古をつけるとは何ともおかしな話だよなぁ―。
「いやぁー!」
アーデルハイトは勢いよく、槍でレグルスに襲いかかる。
レグルスは木刀で、槍をいとも簡単に防いでいた。
「いちいち毎度の振りで力み過ぎだぞ。もっと自然に身を任せろ」
「は、はい!」
アーデルハイトは毎日必死に稽古に望んでいた。
そのおかげで、初期レベルはLv5からLv20くらいまでには上昇していた。
俺のスキルを使えば、何時でもアーデルハイトを
―だが、それはあくまでも俺が近くにいる時だけだ。
この先の将来の事を考えれば、やはりアーデルハイト自身のレベルを自力で上げる方が間違いない。
けど、やっぱりそろそろ稽古のみじゃあ
「スキありっ!」
アーデルハイトはレグルスに掌を向けた。
すると、アーデルハイトの掌から『雷』が放たれた。
バリバリと音を立てながら、鋭い稲妻がレグルスを襲った。
「…残念、隙なんてねーの!」
レグルスは
「―もうっ! なんなのよ、あなたのそのデタラメな強さは!?」
「それは仕方ないな。
アーデルハイトは頬を膨らませながらレグルスを見ていた―。
★☆★
「―ねぇ、レグルス。私、少しは強くなってるかしら?」
「んーまぁ初めの頃よりかはな! 上出来だと思うぜ?」
二人はテラスでお茶を飲んでいた。
だが、アーデルハイトはレグルスの言葉には納得していない表情だった。
「レグルス……私もっと強くなりたいの」
「今はまだ十分だろ。何焦ってんだよ?」
「べ、別に焦ってはいないけど……でも、もっと早く強くなりたいのよ……」
アーデルハイトのやつ、妙にレベルアップに拘ってるな。
まぁ、俺も前世では必死こいてレベル上げしてた身だから、気持ちは分からなくもないけどさ……。
「…じゃあよ、
「え?」
「だから死ぬ覚悟だよ。それくらいの覚悟がねぇと直ぐに強くなるなんて無理な話だからな」
「…死ぬ……覚悟……」
「はっきり言うが、ずっとこのまま城で稽古してもアーデルハイトの望む強さは手に入らねーぜ? 少なくとも俺の足元には一生及ばないな」
「わ、わかったわよ! 覚悟するわ」
「…二言はねぇな? これが最初で最後の問だぜ?」
「えぇ。例え、それで死んでも構わないわ!」
「…よし、じゃあ明日には出発するか!」
「出発って……何処へ行く気なのよ?」
レグルスはアーデルハイトの問に、ニヤニヤとした顔で答えた。
ちょっと命懸けの修行にな!
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】命懸けの修行とは!?
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