桜花の節「女帝の右腕」
「―おい、そこのお前。そんな所で何をしている?」
背の高い男が突如客間へと入って来た。
褐色の肌に銀髪の逞しい肉体の男前だった。
あれ……こいつどっかで見覚えがあるぞ……誰だったっけなぁ……あっ!
「お前……もしかして
「……何故お前が俺の名前を知っている?」
やっぱりギルベルトだったか!
ギルベルト=フォン=ヴォルフ。
通称『女帝の右腕』
原作でラスボスのアーデルハイトの忠実な一番の部下であり、帝国軍の次期将軍となる男だった。
「おい、質問にさっさと答えろ」
「あぁ……えーと、俺はアーデルハイトにここで待つ様に言われたんだよ!」
「アーデルハイト様がお前にか……?」
「あぁ。俺はアーデルハイトの友人なんだよ」
「とても信じられんな。お前の様な男の友人が居るなど、今まで一度も聞いた事がないぞ」
「そりゃ〜まぁ……アレだ。誰にも言えない関係? みたいな!」
するとその言葉に、ギルベルトの眼差しが強くなった。
「おいおい、そう怒るなよ! 別にやましい関係とかじゃないぜ?」
「当然だ。アーデルハイト様のような高貴なお方が、お前のような男にたぶらかされるはずが無いからな」
「言うねぇ? でも、俺がちょっと本気を出せば分からないかもだぜ?」
「ならば、害虫を今この場で
ピリついた空気が流れる。
笑みを浮かべるレグルスと、鋭い眼光で睨みつけるギルベルトの間で火花がちった―。
「…あら、ギルベルト。こんな所で何をしているの?」
「アーデルハイト様……」
紅茶を持ったアーデルハイトが客間へと戻って来た─。
★☆★
「…アーデルハイト様」
「ギルベルト、こんな所で何をしているの?いつもなら訓練場で稽古をしているのに」
「あ、いえ。実は門番から、妙な男が城へ入ったと聞いたので、ここへ来てみたのですが……」
「おい、もしかしてその妙な男ってのは俺の事か?」
ソファーで肘を着き、足を組みながらレグルスは何やら不機嫌そうな態度をとっていた。
「フフフ、多分あなた事ね。きっと門番がギルベルトに話したのよ」
「―ったく。俺をなんだと思ってんだよ!」
「…あの、アーデルハイト様。この男とは知り合いなのですか?」
「あぁ……そういえばギルベルトにはまだ紹介していなかったわね。私の友人のレグルスよ!」
「よっ! ギルベルトくん」
軽率な態度に、ギルベルトの額に血管が浮かんだ。
「レグルス、あまりギルベルトを挑発したらダメよ? 彼、とても真面目なんだから」
「真面目ねぇ? でも、そいつさっきから俺に喧嘩売って来てるんだぜアーデルハイト?」
「ギルベルトがあなたに? 本当なの?」
「あ、いえ。俺はその……この
「…レグルス、あなた何を話してたのよ?」
「な、何も言ってねえよ! こいつは、俺とアーデルハイトがよからぬ関係になるんじゃねぇかって心配してんだよ!」
「―ッ! な、何よそれ……」
アーデルハイトの顔が急に赤くなった。
その様子にギルベルトは、とても驚いた表情を見せた。
おやおや? これはもしかしてそう言う事なのか―?
★☆★
レグルス達は、何やら気まずい空気の中で紅茶を嗜んでいた。
そんな中、アーデルハイトはひとり優雅に紅茶を飲んでいた。
反対にギルベルトは、ティーカップを手に持ったままずっとレグルスを睨みつけていた。
おいおい、ギルベルトのやつ完全に俺に敵意丸出しじゃねぇか。
まあ元々は敵同士だし? 当たり前なんだけどさ……。
「どうしたのギルベルト? さっきから一口も飲まないで」
「す、すみません。いただきます……」
「そうそう。お茶はみんなで楽しく飲むもんだぜギルベルト
ギルベルトは力強くカップをテーブルに叩きつけた。
無言で立ち上がったギルベルトは完全にキレていた。
「…申し訳ございませんアーデルハイト様。俺はもう我慢の限界です……」
「ちょ、ちょっと! 落ち着いてよギルベルト!」
「そうだぜギルベルトちゃん? せっかくアーデルハイトが入れてくれたお茶がこぼれちゃったじゃねぇか……謝れよ」
「黙れ!!! 元はと言えば、全てお前のせいだ。それに、アーデルハイト様だ! 口を慎めこのよそ者が!」
「おい……その
「―なっ! そ、それは本当ですかアーデルハイト様!?」
「え、えぇ……本当よ? レグルスはこう見えてとても強いのよ……」
ギルベルトは落雷に撃たれたかの様に絶句した。
そしてそのまま床へと膝から崩れ落ちた。
「…こんなよそ者が……アーデルハイト様の指導者だと……?」
しばらく黙り込んでしまったギルベルト。
すると、何かを決心した様に立ち上がるとレグルスの目の前へと立った。
「おい、よそ者。今からこの俺と
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】決闘スタンバイ!!!
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