第9話
「蝶弔の拠点近くに移動出来るのですね」
俺は鍵を所持している。
この鍵は、俺は奈落迦で移動した場所を記録しており、鍵を使い扉を開けると、一度行った事のある場所ならば、何処にでも移動する事が出来る。
今回は、あの爺さんを相手にする可能性を考慮して、拠点から少し離れた場所に移動していた。
「あぁ、まあちょっとな…と言うかお前、知ってるんじゃないのか?」
俺が、蝶弔と一体どの様な関係性となっているのかを聞く。
影から顔を出している暦は悪びれもせずに答えてくれた。
「はい、かなり…三姉妹とは、そう言った関係なのですよね?」
三姉妹。
蝶弔のリーダーの孫の位置に当たる、三人の娘の事だ。
色々と仕事を熟していると、性的に熱を抱きたくなる事もある。
丁度、蝶弔の三姉妹と会う機会があった為に、程好い関係性になったものだ。
尤も、現在は俺も相手も忙しくて、なかなか会う事が無かった為に、今ではそう言った関係性は解消されている可能性もあった。
「まあ、敢えて言わずが吉だがな」
しかし、あの蝶弔が、と俺は内心にして思う。
蝶弔。
彼らは葬儀屋として活動している。
主に、人が死亡した場合、その亡骸が奈落迦に完全に吸収される前に葬送するのがこの奈落迦での役割である。
奈落迦は負の感情で禍遺物を作るが、人の死骸から魔物を作り出す傾向がある。
だから、出来るだけ奈落迦に吸収される前に死体を回収するのだと。
「斬啼道と紫褪雨の情報が足りない、教えてくれ」
俺がそう言うと、影の中から暦が出現する。
そして、暦は俺の知りたい情報を耳元で教えてくれた。
「斬啼道、創立は約六百年前、現時点の拠点は奈落迦下層部に位置しています、方針は『斬敵滅殺』、敵であれば如何なる相手でも斬り殺す事を目的としています」
そうか、奈落迦下層部に位置しているのか。
俺が知らないと言う事は、垰店主にとってはどうでもいい存在なのだろう。
様々な事を知っている垰店主でも、情報を教える際には人を選ぶ。
仕事を行う際に、危険性が孕んでいれば教わるので、それが無いと言う事は俺にはあまり縁の無い相手なんだろう。
「紫褪雨、数か月前に結成された『野良入』の寄せ集めです。構成員は約三十名程ですが、総長と副長が厄介なチームです」
基本的にどんな人間でも、禍遺物と契約をすれば、想像を絶する力を手に入れる事が出来る。
代価と代償が重いが、それを乗り越える事が出来れば、先ず、歴戦の入でも接戦する事は可能だ。
その総長と副長は、余程の禍遺物を所持しているのだろう。
「斬啼道、紫褪雨の追加情報を開示しますか?」
そう言われたが俺は首を左右に振った。
相手の情報を知り過ぎると、折角、戦闘に入った時に楽しみが半減してしまうからな。
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