ノエルさん

俺達は一度聖王国に戻りパーティーハウスからノエルさんの家に転移し ノエルさんの部屋から二人でノエルさんの父親の部屋に向かう 

ドアをノックし部屋に入るとノエルさんの父親は難しい顔をして書類を見ていたが顔を上げノエルさんを見ると優しく微笑み「おお!! ノエルじゃないか 久しいな

ノエラに似てまた美人になったな」ニコニコとノエルさんを見ている


「父上!! 今日はお話があって参りました」ノエルさんがキリッとした顔で父親の目を見て言う

「何だい? 何か困った事でもあるのかい?」愛情たっぷりに答えると

[私 伴侶を決めました!! このシリウスです]と俺を指さす

「「ええっ!!」」親父さんと俺が同時に驚く 聞いてませんけど

「今日 二人で赤竜を倒してきました 勇者の私の隣に立てるのはシリウスしかいません」ノエルさんは胸を張って 父親を見る

 どこの馬の骨とも知れない孤児院出の俺との結婚なんか許すわけないじゃないか

何を考えているんだノエルさんは

「むう そこの者がシリウスか?」俺を見ながらノエルさんに親父さんが聞いてくる

「は はい 私がシリウスです」 上ずった声で答える

「少し 二人で話がしたいんだが いいかね? ノエル?」親父さんが言うと

「分かりました では私は席を外しましょう」そう言ってノエルさんは部屋を出て行く


「さて シリウス君 驚いた様子を見るに君も言われてなかったんだね?」

「は はい 今初めて聞きました」素直に答える

「まったく あの娘は昔からああなんだよ 自分で決めた事を貫き通そうとする そして私はあの子に甘いから許してしまう という事で結婚は認めるよ」さらりと親父さんが言う

「エエーッ」俺は思わず声を上げてしまった

「あの~ どこの馬の骨とも分からない私でいいんですか?」


親父さんはニコリと笑って「先ずはあの子の母親であるノエラと私の事について聞いてくれるかい?」

そう言うとベルを鳴らしメイドさんにお茶を持って来るように頼む

お茶を飲みながら トツトツと話し始める

「あの子の母親ノエラは ある大貴族の娘でね 私の父はその屋敷の庭師をしていて 父への昼飯を届けに行った時 転んで泣いているノエラに初めて出会って手当をしたんだよ それ以来 妙に懐かれてしまってね 女の子ってのはませてるというか 私と結婚すると言い出して 焦ったよ もちろん私も彼女の事は愛していたけど 庭師の息子との結婚なんて親が許すはずもないから 私も貴族にならなければいけない そこで兵士になって武功を上げ成り上がっていくしかなかった 色んな戦場で武勲を上げて 貴族の端っこに名を連ねさててもらった ノエラを迎えに行き 無事結婚出来た 長男のノリスが生まれ 少し間をおいてノエルが生まれた」一息いれてお茶を飲み

「そして ここからが大事な事なんだが ノエルが一歳になったばかりの頃ノエラが病に倒れた 息を引き取る前にノエルには自由に生きて欲しい自分みたいに窮屈な思いはさせないで欲しいと言われた だからノエルの決めた事は尊重するのがノエラとの約束なのさ それで結婚する君には言っておかないといけない事ある あの子は半分妖精の魂が入っている 」

「えっ」意味が分からず 思わず声が出る

「自分で最後が近いと思ったのか 本当はノエラだけの秘密だったようだが ノエルが生まれてすぐに 精霊王が夢に現れて 本当は取り替え子になるはずだったがノエルの魂が強すぎて取り替え子になる予定だった妖精の魂を吸収したそうだ だからあの子の魂は人と妖精のハーフなんだ ビックリしたかい? それでもあの子を貰ってくれるかい?」 ちょっと厳しい目で俺を見る


「私にとってノエルさんはノエルさんなので そこは何も問題はありませんが なにしろ先程私と結婚すると聞いたばかりなので 少し時間が欲しいです」

そう言うと親父さんはニコリとして

「そうだろうね ゆっくり考えてくれたらいいよ」

そう言ってもらったが ノエルさんと結婚と考えると何か照れる

その後 ノエルさんを呼んで三人で夜更けまで話し 婚約という事で落ち着いた

兄のノリスさんは国境警備の任務で家を離れているらしい 親父さんはノエラさんだけを愛していたので 第二婦人とか側室とかもいないとの事

結婚はするけど少し時間が欲しいとノエルさんに伝えておく

今も 寝食を一緒にしているので別に構わない ただ親父さんを安心させるために結婚の報告をしたかったらしい 一言俺に相談があっても良かったのでは?

次の日の朝 挨拶をして聖王国に戻り クロノス王やハイジ達に婚約した事を伝える

ハイジ達はそんな事より赤竜の討伐に呼んでくれなかった事に不満顔だった

そんな事って酷くない? まあ これから何かが変わるという事でも無いし いいか

俺とノエルさんに竜殺しの称号が付いたのが羨ましいのかな?


その夜 いつものようにノエルさんがマッパで俺の尻尾に潜り込んできたが 何かいつもと様子が違う 婚約したと考えたら急に恥ずかしくなったと言うけど そう言われると 俺も何だか急に照れ臭くなる 俺はいろいろ考えてなかなか眠れなかったが ノエルさんは寝息を立てていつものように寝ている

そして 勇者ノエルが婚約したニュースは瞬く間に大陸中に伝わった




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