海服とサンセット

タルトスの街に入る前に俺も母ちゃんも人の姿になり 城門の入り口で検閲を受けて街中に入る


取り合えず ギルドに寄って情報を確認しようという事になり ゾロゾロと皆でギルドに向かう

「魔物討伐を依頼されたノエルだ 詳しい情報が欲しいんだが?」ノエルさんが言うと

「お待ちしておりました 勇者様!!」受付嬢が大声で言うと ギルド内にいた連中が珍し気に俺達を見てくる

その視線を受けて「大声で申し訳ございません!! 勇者様」頭を下げる受付嬢

「こちらへ どうぞ」慌てて俺達を二階の応接室に案内してくれた

出されたお茶を飲んでいると ドアがノックされて髭を生やした厳つい男が入ってきた

「やあやあ こんな辺鄙な所まで ご足労願って申し訳ない 私はここのギルド長のガンツだ」


「初めまして 私はノエルと言います 今はこのシリウス旅団の一員として冒険者活動をしています」

「ほう シリウス旅団ですか? まあ勇者様がいらっしゃるなら問題ありません」

俺を一瞥して ガンツが話始める

「この街の南の漁港で デカいイカの魔物が出て漁師や船を襲って難儀しております どうか勇者様 イカの化け物を退治して下さいませんか?」ガンツが頭を下げる


「分かりました ガンツさん 顔を上げて下さい 早速現地の様子を見に行きたいと思います」

「おお!!ありがとうございます 現場までの馬車を用意いたしますので 少しお待ちください」



幌がかけてあるとはいえ 暑い 馬車でガタゴトと揺られながら皆 暑さにまいっている つい前までは極寒の所にいたのに 今は服を脱いでも熱気が身体中に纏わりついてきて 気分的にも疲れてくる

ハイジとクラリスも「「あつい~」」とへばっている


 風魔法と氷魔法を組み合わせて 涼しい風が出るように試してみる

上手くいったみたいで 涼しい風を浴びて二人とも「気持ちいい~」 と幾分楽そうになったようだ


馬車酔いも併せてグッタリしていたノエルさんも魔法範囲に入ってきて直ぐに軽い寝息を立て始めた

暫くして「着きましたぜ」御者が声をかけてきた

「「すご~い!!」」 ハイジとクラリスが海を見て 声を上げる

「これが 海なの?一番向こうまで 水があるよ!!」ハイジが嬉しそうに水辺へと走って行き 膝ぐらいまで海に浸かると クラリスも恐る恐る波打ち際まで近づいて そっと足を入れている


「海風は気持ち良いな」ノエルさんが男前な顔をして呟く


浜辺で商売をしている男がやって来て

「お兄さん達 その服じゃ海は楽しめないぜ!! 大体濡れた服じゃ動き難いし 重いだろう

海で遊ぶなら この海服を着た方が自由に動けるぜ 大角青ガエルの皮を鞣して作った体にピッタリで撥水性のあるものだ」

丸首の半そでシャツっぽいのと膝上までのズボンみたいなのを見せてくる

「へ~ そうなのかい?」

周りを見ると ほぼ皆 同じ様な恰好をしている


 「私達のサイズはあるの?」海から上がってきたハイジが男に尋ねる

「もちろん!! 皆さん全員分のサイズがありますよ!!」

ゾロゾロと男に付いていき 彼の商店に入り 其々 気に入った海服を選び 着替え部屋に入り着替えるようだ

「お嬢さん方 海服を着る時には ちゃんと下着も脱いで 裸で着ないと ゴワゴワして動き難いし 気持ちわるいからね!!」

男の声に着替え部屋から 「「は~い」」と返事があり 少しして三人共出てきた

「サービスで名前もいれとたよ 皆 同じ海服だから 干してる時とか間違えないようにね」

母ちゃんは昔 海を渡ろうとして 途中で魔力が尽き海に落ちて以来 海が苦手だそうだ

今回も海に入らず 木陰でゆっくり 酒でも飲みながら三人を見守るそうだ


「「どうかな?」」子供二人が聞いてくる

「うん 似合ってるよ かわいい!」そう答えると二人共モジモジしながら 照れている


ノエルさんの場合 マッパの方を見慣れているので 海服が妙に色っぽい


それから 女性陣三人は海に入って水かけをしたり 砂で何か作ったりと遊んでいたが 暫くして

俺の所に来て「お腹減った~」と言ってきたので 皆で浜辺に出てる屋台をひやかしにいくことにした

いろいろな海産物の屋台があり 目ぼしい物を買って 食いながら散策する

貝を焼いたのが 特に美味く 冷えたエールに良くあった 

母ちゃんもこの組み合わせが気に入ったのか 片手でエールをがぶ飲みし 片手で貝を貪り食っていた


腹も膨れた所で

「「シリウス兄ちゃん 見て!! 太陽が海に沈んじゃう 」」

果ての見えない海の向こうに太陽が沈んでいく なかなか綺麗で荘厳な風景だ

ハイジとクラリスは目をキラキラさせながら「綺麗~」と見入っていた


宿屋で四人部屋を取り ノエルさん達は海水を流す為 風呂に行き屋台で珍しい食べ物を探して買ってきた

「ふ~ 暑い ん? この部屋は涼しいな」

彼女達が買い出しに行ってる間 部屋の中の空気を馬車でしたように風魔法と氷魔法で冷やしておいたのだ

海の幸を食べながら 明日からの行動予定を確認する

ここから 歩いて少しの場所に大きい港があるらしく

 「そこに出入りする船をイカが襲うらしいので 船を一艘貸してもらい沖に出て 誘い出し討伐しよう」俺が言うと

「そんなに 簡単に大事な船をかしてくれるの?」ノエルさんが口を挟む

「ギルドと辺境伯の署名を貰ってるから 大丈夫じゃないかな?」

「そうか シリウスが手筈を整えているなら 大丈夫だな」


「今日は三人共 遊んで疲れただろ? 早めに休むとしようか?」

俺 ハイジ クラリス ノエルさんはそれぞれのベッドに散っていく

母ちゃんは人型で寝ると窮屈らしく 寝る時はいつもフェンリルの姿に戻る


俺はどうせ言われると思って尻尾だけ出した状態でベッドに潜り込む

暫くすると尻尾の中に入り込んできたのは ハイジだった ノエルさんの言い付けを守ってるのかマッパだ

「シリウスお兄ちゃん 今日はありがとうね」ハイジが尻尾の中で囁く

「何がだい?」聞き返すと

「クラリスのあんな喜んだ顔って 初めて見たの このパーティーに入って良かったよ!!」


「そりゃ なによりだ 俺も君達が入ってくれて嬉しいよ  それとクラリスにも伝えて欲しいんだが 俺の尻尾に入る時は裸じゃ無くても良いからね 裸で入るのは ノエルさんの家の家訓じゃないかな?」

「うん わかった じゃあ おやすみなさい お兄ちゃん」

ハイジは尻尾から出て自分のベッドに戻って行った








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