山岳踏破と商人

 Aランクダンジョンの情報を集めようとギルドへやって来たが

カウンターの受付嬢がノエルを見るなり 全員が会議室へと連れ込まれた

 「フー フー」と荒い息をしながら ノエルを見つめる受付嬢

「どうしたんだ?」俺が訳も分からずに聞くと

「探していたんですよ ノエルさん 一体何処に行ってたんですか?」

顔を上気させながらノエルに詰め寄る

「ダンジョンに潜ったり 色々してたけど……」

気圧されながら モゴモゴと答えるノエル

「ノエルさんへの指名依頼がはいっています 私はこのギルドでノエルさん担当だから まだかまだかとせっつかれていたんですよ」

「そうだったのか? それは 悪い事をしたな それで指名依頼の内容は?」

「南の辺境拍領からの魔物退治の依頼です」

南の辺境と言えば海があるな 海鮮も美味いんだよな

「そんなに 困ってるなら是非受けよう」

俺がノエルさんに進言すると ニッコリ笑って

「シリウスがそう言うなら 行くか?」皆を見回して意見を聞く

「「いいんじゃない 行きましょう!!」」ハイジとクラリスが良い返事をする

「じゃが 途中険しい山脈を越えねばならんぞ」

母ちゃんが釘をさすと


「寒いのは苦手かな……」クラリスがが俯いて呟く

「まあ そこは私とシリウス(犬)がおれば大丈夫じゃろ」母ちゃんがフォローする

「どうだい? 俺たちがフォローするから 行ってみないか?」俺がそう言うと

クラリスがが小さく頷く


それから 俺たちは寒さ対策と暑さ対策で膨大な装備の山を作った

それらの荷物の山を母ちゃんの空間収納に放り込むと行程の確認をする

元ジョイ王国の南なので 道はあるらしいが かなり険しいそうだ 


「「うう! 寒い!!」」


麓は暖かだったが 山を登るにつれて 寒さが厳しくなってきた

ハイジとクラリスは辛そうに後ろをついてくる 先頭を母ちゃん 次に俺     ノエルさん ハイジ クラリスで歩いているが ハイジとクラリスは雪の山道に苦労しているようだ

俺と母ちゃんの風魔法で吹雪は相殺してはいるが 体の小さい二人にとっては かなり辛そうだ

「クラリスは母ちゃんに ハイジは俺に乗りな ノエルさんは大丈夫か?」

普段なら俺の毛の中に飛び込んでくるが 子供二人に威厳を見せたいのか

「いや 私は大丈夫だ」キリッと音が聞こえそうな感じで答える

ーが ハイジをジト目で見るなら素直に乗ればいいんじゃないか?

[ギルドで貰った地図によると そろそろ商人達が使う休憩所があるようだから もう少し頑張ってくれ]

暫く進むと山肌に出来た洞窟を見つけた 多分 これが休憩所なんだろう

母ちゃんを先頭に洞窟に入ると 先に休憩していた商人が三人いて 

母ちゃんと俺を見てパニックになっている

「あっち行け!!」「殺される!!」「神様 お助け下さい」などと叫びながら 後ずさっている


「これは 失礼 この二頭は私のペットですので ご安心下さい」

ノエルさんが前に出て商人達を落ち着かせる


「襲って来ないのか?」小太りの商人が恐る恐る尋ねてくる

「私達に危害を加えない限り 襲っては来ません」

ノエルさんが言うと やっと商人達も落ち着いたようだ

「あんた達は 何処の国の商人だい?」痩せた背の高いのが聞いてくる


「ああ 私達は商人ではなくて 冒険者なんだ」ノエルさんが言うと

「冒険者だって!?」三人が驚いた様子でこちらを見てくる

商人達が何かひそひそと話してる間に 母ちゃんの空間収納からパンとスープを出して 腹ごしらえをする


腹も膨れたので 今日はここで泊まることにして 俺と母ちゃんが背中合わせで横になり その隙間にノエルさんとハイジ クラリスが潜り込む

 一日中風魔法を使っていたのもあって疲れて俺はすぐに眠り込んでしまった

朝 目を覚ますと俺と母ちゃんの間で何かゴソゴソと動いてる 目を向けると 

ハイジとクラリスが服を着ている最中だった

「何をしてるんだ?」まだ覚醒してない頭で考えても分からないので素直にきいてみる


「ノエルお姉ちゃんが シリウスお兄ちゃんの中で眠る時は 裸がマナーって教えてくれたの だから 起きたから服を着ているの」


「ノエルさん……」

当の本人は 俺の背中に埋もれて未だ夢の中だ


顔を舐めてノエルさんを起こして 朝食を食べる 商人達がヒソヒソ話をしているが フェンリル状態の俺の耳には筒抜けだ

「君達は まだ出ないのかい?」太った商人が聞いてくる

「もう少ししたら 出ようと思ってます」ノエルさんがパンを飲み込んで答える


商人達こそ 身支度もすんでいるのに 何故出発しないんだろう?

まあ 理由は知ってるけど


「ハイジは母ちゃんに クラリスとノエルさんは俺に乗ってくれ 今日中には山を下りたいから 少し強行軍で行くぞ」念話で皆に伝え洞窟を出る

 直ぐに商人達も慌てて出てきた 人の歩く速さで進みながら次第に速度を上げていく 商人達も最初は付いて来れていたが 次第に俺達と離されていく


昨日のコソコソ話によると この辺りは雪狼や雪熊 雪男が出るらしい

だから 俺達を露払いにして山を下りた所で 俺を殺し ノエルさん ハイジ クラリスを奴隷として売り払う計画を立てていた


彼らとは だいぶ距離があいた 母ちゃんと俺の気配で出て来なかった雪狼や雪熊は 憂さ晴らしとばかりに商人達を襲うだろう


そんな奴らどうなろうが知った事ではない


結局 雪男にも会わず 山裾まで駆け抜けてきた 

俺と母ちゃんは人の姿になり 山裾の宿場町に入り宿を取る

大人数用の部屋が空いていたので そこに決める


「なんか 久々のベッドだ~」ハイジがベッドにダイブし クラリスはベッドに腰掛てホッとしたようにお茶を飲んでいる


夕食後 皆疲れていたのか 早々に眠りに就く


それでも やはり俺のベッドにいるんですね ノエルさん


久々にベッドで眠れたからなのか すっきりと目が覚めた

他の皆もスッキリした顔をしている

朝食後に宿を出て 目的地の海辺の街タルトスを目指す


あの商人達は無事に下山出来たのだろうか? この宿場町で姿も見てないし匂いもしない まあ どうでもいいか

そんな事を考えながら ハイジとノエルさんを乗せて人通りの無い道を選んで進む



 

















 






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