第4話

「まず、ここはシュビラト・デッセルという大国です。貴女方が住んでいた国とは全く違います」

男ははっきりと言った。

「は....?」

私はまだ理解出来ないでいた。

「やっぱりそうですよね!!異世界転生ってやつだ!!」

妹はなぜだか喜んでいるようだった。

元々異世界転生などの本が好きな子だ。

憧れがあったのだろう。

「でもそんなことが現実で有り得るの....?」

「でもお姉ちゃん、実際ここは全くの別の場所だよ。」

「まぁ.....そうね。」

「ご理解が早くて助かります。続いて私たちの現状をお話します。」

彼の話によると、ここシュビラト・デッセルには元々聖女という存在がいたらしい。その彼女が消えて早50年。

国民が苦しい思いをしているという。

作物が育つのが遅くなったばかりか、かれることも増え、木々が育つのが遅くなり、家畜の概念すらあまり発達していなかったこの国は飢餓に直面しているそうだ。

「なぜ家畜を育てなかったのですか?」

「我々は生き物を殺すことを好まない国です。それは平和では無い。生き物の命に優劣を付けてはいけないとそう考えていたのです」

結果、家畜を育てるのが遅くなり、飢餓が始まり、家畜に与える餌の余裕すら無くなった。

家畜の数は減り、市民たちは今は作物のみで生活しているそうだ。それも少ない作物で。

「そこで新たなる聖女をよぶことが決定された」

聖女の儀式には古代の遺跡が有り、それに沿って半信半疑でやったのだと言う。

「それで....」

「はい。あなた方が召喚されました」

「帰れるんですか!?」

「.......そのような事は遺跡には書かれていません」

「そんな....」

父のことを考える。父は私たちを愛してくれていた。

そんな父を1人にして、私たちはこんな所に来てしまった。

それも勝手な事情でだ。ありえない。

私は立ち上がって大声で言った。

「私たちを今すぐ帰して!!!」

「落ち着いてください。研究は全力で進めております!!今は民の命を守りたいのです!!」

「そんなの私たちに関係ないじゃない....」

絶望だった。座り込み、頭を抱える。

「お姉ちゃん。聞いてあげようよ。」

「帰れないかもしれないのよ?あなた分かってるの?」

「でも困ってる。」

妹は優しい子だった。

困ってる人を見捨てられない。

でも、それでも、私は帰りたい。

「3年です。3年以内に見つけてください。帰る方法を。」

「努力します...。」

「なら、協力します。」

「本当ですか!?」

「3年の間に必ず戻る方法を見つけてください。」

「必ず探し出してみせます。」

「ねぇ、」

妹がふと気づいたように言った。

「聖女はどっちなのかわかるの?」

「確かにそうね、1人だけなんじゃなかったかしら?」

「それが我々にも分からないのです。遺跡には1人の聖女が召喚されると描かれていましたから。」

「じゃあどちらかも分からないってことね。」

「違った方はどうなるの?」

「消して粗末にはしません。あなた方は姉妹でお互いを大切にしている。お2人にはこの王城で暮らして頂きます」

「王城で....?」

こんな豪華なところで暮らしていく....?

でも、妹も私も無事でいられるならそれでいい。

「分かりました。決して妹を粗末にしないで。」

「神に誓います。」

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