第8話 愛情

かおるはまだフラッシュバックを克服出来ていなかった。

私には分からない感覚だが、目の前にトラウマである母親が見え、痛みさえ感じるらしい。

本人がそう語っていた。

あたしにはフラバというものがわからない。

そもそも、主人格があたしを生み出したのは「殴られているのは自分では無い」と思い込んだからだ。

結果、痛み、苦しみ等に周りの人格より耐えることが出来るあたしが生まれた。

人格の出来上がりはよく分からない。

最初は見てるだけだった。

でも、強くこいつを、主人格を守りたいと思った。

守ってやらなければという意思に駆られた。

それが人格としての出来上がりだったのだとあたしは思っている。

愛しているのだ。誰よりも主人格を。

これは決して叶わない恋だ。

主人格に触れることも、話すこともあたしには出来ない。

でも、あの笑顔をあたしは美しいと思った。

命が尽きるまで守りたいと思った。

ただその一心だったのだ。

決して叶わない不毛な恋愛をしているとあたしは自覚している。

でも、ただただあの子を愛し続けるのだ。

この体が生命活動を続ける限り。

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