〜6章〜【アーク&シラヌイVSアレン】
(アイツ…無事なんだろうな?)
シラヌイがアジトに潜入してから随分と経つ、ヘマしてなければ良いが…と言う俺の心配は杞憂に終わった。
(戻ったぞ)
(ウォッ!ビビったァ!)
ホント、気配薄いにも限度があるぞ…。
(で、何か情報は得られたか?)
(マスターの名前と隊長一人の名前、そして理屈は分からぬが、両名の魔法と思われる物を
目撃した、曖昧な結果ですまない…。)
せいぜいが構成員の人数程度の収穫だと思っていたが…やっぱり大した奴だよシラヌイは。
(バカ言え、そんだけの情報があればお釣りが来るってもんだぜ!よし、早速ギルドに戻って報告だ!)
《パリンッ!》
俺とシラヌイがその場から離れようとした時、突然アジト2階の窓が割れた、そして俺達の行く先にある男が現れる!
(フッヒャヒャ!ネズミちゃぁん!どーこいーくのぉぉ?)
何だコイツは!?
(クッ…、やはりバレていたのか!)
(おい!何だよコイツ!?)
俺の問いにシラヌイは答える。
(コイツは構成員達からはアレンと呼ばれていた、恐らく隊長の一人だ。)
おいおい、いきなり隊長のお出ましかよ…、
しかもアジトの中にはマスターもいるって話じゃねぇか…。
(フッヒャヒャヒャ!アジトの見学ツアーは楽しめたかぁい?じゃあ手土産も用意しなくちゃなぁ!)
その瞬間シラヌイが叫ぶ!
(アーク!気を付けろ!奴は妙な爆破魔法を使用する!)
(爆破魔法だと?)
身構えたが遅かった。
(バン!)
奴の言葉と共に俺は爆風で吹き飛ばされる。
(グアッ!なんだぁ!?)
どう言う事だ!奴が何かを言い合えると同時に何もない空間が突然爆発しやがった!
こんな魔法見た事ねぇ!
(バン!バン!バァン!)
(グァァァ!)
(ムゥゥウ!)
やべぇ、このまま喰らい続けてたら俺もシラヌイも、すぐにくたばっちまう!
(痛ぇんだよ!コラァ!《龍装『アーム』!)
(ほぉう?“装幻魔法,,を使える奴なんざぁまだこの世にいたんだなぁ!面白いぃ!)
(吹き飛べ!《龍装拳》!)
完全に当たったと思ったが、奴は上に飛び、
俺の攻撃を軽々と躱しやがった!
魔法だけじゃなく、身体能力も折り紙付きかっ
(フッヒャヒャ!大した威力じゃんかぁ!ま、当たらなければ意味なぁいなぁい!)
しかし、飛び上がった奴の背後には既に絶影で気配を隠していたシラヌイがいた。
(余の事を忘れて貰っては困るな…!)
(ありゃ?)
(《斬影「月夜斬り」》!)
(ウワァ!)
シラヌイの月夜斬りは完全に決まった、どんな猛者でも意識外からの攻撃なんて対処できる訳がない。
《ドサッ!》
奴はシラヌイに斬られた事により、体制を崩して落下した。
(イテテッ…おい、大丈夫か?)
(心配無用、大したダメージは負っていない)
(妙な魔法を使う奴だったが、噂程強くはなかったな…、まぁ何にせよ隊長を一人始末できたのはラッキーだ、騒ぎになる前に行くぞ!)
俺たちがその場を立ち去ろうとすると、後ろから甲高い笑い声が聞こえた。
(フッヒャヒャヒャヒャ!なるほどなぁ、その魔法で潜伏してたって訳だぁ!にしても、それに気付いたニグラス様はさすがだなぁぁ!)
立ち上がりやがった!シラヌイの月夜斬りで奴の背骨は完全に断たれた筈だぞ!一体どうなってやがる…!?
(不死身かコイツはっ…?)
(笑いながら立ち上がれる程、余の剣は優しい物ではない筈なのだがな…。)
(フッヒャヒャ!当たってねぇんだから!ダメージなんてある訳ねぇだろぉ!?バァカ!)
当たっていないだと?あり得ない!確かにシラヌイの刃は奴を完全に捉えていた。
(俺が奴を引き付ける…その隙にお前はもう一度、奴をぶった斬れ!)
(相い分かった!)
今度こそ奴を仕留める!
(かかってこいよ、イカレ野郎!ネジの飛んだその頭殴って腐った性根矯正してやっから!)
(はぁぁん!?俺の性格の良さは国宝きゅぅう!全人類が見習うもんだろぉうがぁ!)
頭のイカレ具合はさておき、冷静さなど微塵もない性格で助かるよホント。
(バババァン!)
(グウッ!)
奴の爆破魔法はどうあっても躱せねぇ…、
それなら、いっその事受け切ってやる!
(ウォラァァァ!)
(フッヒャ!龍の鱗はさすがにかてぇな!)
しかし、そう何度も喰らってられるモンじゃねぇ…、一気に奴との距離を詰めようとするが、奴がニヤリと笑ったと同時に俺の足元の地面が爆発した。
(クソッ!)
(距離を詰めて接近戦に持ち込もぉとしたらしぃが、そう簡単にゃいかねぇぇよ!)
地雷でも仕掛けてたのか…、それともこれも奴の魔法だってのか?分かんねぇ事ばかりだよ、それでも諦める訳にはいかねぇ!
(地雷でも何でも来い!今度こそテメェをブッ飛ばしてやる!)
(さっさとくたばれぇ!ババァン!バン!)
(ウォォォオ!)
身体が弾け飛んじまいそうだ…!
よくよく考えてみれば、数万ポッチの盗賊討伐のクエストを受けただけだってのに…ハハッ、それがこんな大凶引いちまうなんてな、
けど!ここで俺たちがヤラれたら折角得られた情報も無駄になっちまう…、俺たちが戻る事で少しでもギルドの為になるんなら!
(死んでも勝ぁつ!《龍装拳》!)
(フギャァ!)
やっと奴に一撃お見舞いする事ができたぜ…、
こっちはこんなにボロボロだってのにたった一撃…フェアじゃねぇな!
(次はコッチの番だ!《龍装拳『乱舞』》!)
(ハァァ…フッヒャ!接近戦なら勝てるとでもぉ?甘ぇなぁ!《爆拳》!)
奴の拳が当たった場所が爆発した、しかもさっきまでの爆発とは威力が段違いだ!…けど、ここまで来たら俺も止まれねぇ!
(ウォォォオ!)
(フヒャャャ!)
十発…二十発…、奴との殴り合いにお互い息も絶え絶えだ、生身で龍の拳に耐え続けるとは、何てタフネスだよ、コイツっ!
一心不乱に殴り合いを続けていると、奴の背後に微かな気配が感じ取れた。
(ご苦労だったアーク、これにて終幕…!
《斬影「月夜斬り」!》)
俺との攻防で完全に隙を突かれたのだろう、
シラヌイの見事な一太刀が奴を切り裂いた。
(フギャァァア!)
奴の背から鮮血が吹き出した。
(ハァ…ハァ…遅ぇよ、バカ…。)
(すまぬ、だが今度こそ此奴の中枢は完全に断ち切った、もう動く事すら儘ならぬとて。)
俺たちが勝利を確信するが、何と奴は、血が滴り落ちボロボロの状態でなお、立ち上がって見せた!
(てめぇら…!もう容赦しねぇ…!ぶっ殺してやるよぉぉぉ!…ゲフッ!)
だが、奴はもう満身創痍だ、俺もだがな…!
(ま、まだ立てんのかよ…!)
(何と言う執念…敵ながら天晴れだ!)
奴がコチラに向かってこようとした時、奴と俺たちの間に謎の女が割って入ってきた。
(そこまでよアレン。)
このタイミングで新手か…!しかもアレンと同等の覇気…コイツも隊長の一人だとしたらマズイ!
俺たち二人も万全とは程遠いコンディションだ、そんな状況で全開の隊長格を相手に…!
俺とシラヌイが構えると、その女は口を開いた
(安心しなさい、アナタ達をここで殺すつもりはないわ、にしても…アレンをここまで追い込むだなんて…大したモノねっ。)
何と奴は撤退の意を示した、しかしアレンは納得が行くはずも無く
(ザケんなぁ!コイツらはここでブチ殺ぉす!)
(マスターがお呼びよ、それでも続ける気なら止めないけど…どうする?)
(クゥ…クソガァァ!テメェら!用が済んだら速攻で殺してやっから、そこから動かず待ってろやぁぁ!)
そう言い残すとアレンと女はアジトへ戻って行った、ひとまず助かった、あのまま奴も戦闘に加われば命はなかっただろう。
そして俺はその場に倒れた。
(酷い傷だ…待っておれアーク、今すぐギルドに戻って治療してやる!)
俺はシラヌイに担がれギルドへと戻る
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