〜5章〜【ヘルメウスの王】

(はぁ、分かったよ…ただこの件に関してはジジィから箝口令が敷かれてる、だから他言無用だぞ?)


こうなっては話す以外手立てがない、それにシラヌイなら言いふらす様な事はないだろう。


(承知した。)


そして俺は事の経緯をシラヌイに話した。


(討伐依頼を受けた対象の盗賊がヘルメウスと言うギルドの魔導士だったと言う事か…、ふむふむ。)


(だから報復として奴らが襲って来るかもしれねぇんだ、そうなりゃ戦争になる、だから今の内に俺とエレナとシルバーの3人で情報収集に勤しんでるって訳だ。)


本来、ギルドとギルドでの抗争は法律によって禁止されている。しかしこれは正規ギルドでの話に限られ、盗賊ギルドや暗殺ギルドの様な「犯罪ギルド」には関係のない話だ。


しかし犯罪ギルドと言っても、ウチに報復を企ててるかも知れない~ヘルメウス~の様に正規ギルドと、何ら遜色のない戦力を持つ大型ギルドも多数存在している。


それ故に、もし戦争となれば互いに甚大な被害が出る事は避けられないんだ、それに最悪、奴らが俺たちのギルドを襲ってきた場合、カルヴェルが戦地となり関係のない大勢の一般市民にも被害が及ぶだろう、それだけは絶対に阻止しなければならない。


(聞いた以上、お前にも協力して貰うからな、シラヌイ!これからエレナやシルバーやジジィとコイツらをから得た情報を共有する。お前も来い。)


しかし、シラヌイは首を横に振る。


(いや、余は少し心当たりがある故、独自に調査を致す、おヌシは二人とマスターに先程得た情報を教えてやってくれ。)


(おい!待て!!)


だが奴は、俺が言い終える前に目の前からスッと姿を消した、隠密行動が得意なアイツでも一人で調査をするなんて、いくら何でも無謀すぎる…ックソ!仕方ねぇな!


          ・

          ・


《ザザザザッ》


(ヘルメウス…余が聞いた話によるとっ!見つけた、ここだな…。)


シラヌイはどこから得た情報なのか、何とヘルメウスのアジトの場所を知ってやがった。


(ほぇ〜、デケェ城だなこりゃ。)


当然、一人でなんて行かせられない、俺はコッソリと奴の後を付けてきた。


(!?おヌシ!なぜここに!)


(俺の龍装はどんな奴の気配でも捉える事ができるんだ、忘れちゃいねぇだろ?フハハッ)


(なるほど…)


(けどお前なんでヘルメウスのアジトの場所を知ってたんだ?)


そう言うと奴は難しい顔をして答える。


(ふむ…実は余の仲間がスパイとして暗殺ギルドに潜入しておってな、其奴から得た情報でヘルメウスと言う盗賊ギルドのアジトがここら辺りにある事を知ったのだ。)


コイツは星の魔導士以外にも様々な顔がある、そう言う事なら深く詮索はしないでおこう。


(分かったよ、とにかくお前に打ち明けたのは正解だったって訳だ。)


まさか、ヘルメウスのアジトを突き止める事ができるなんて思いもしなかったからな、こりゃとんだ収穫だ。


(一旦ギルドに戻ってこの事を話そう。)


俺がそう言うと、またしても奴は首を横に振る。


(余には潜伏スキルがある、それを駆使し、

これからアジトに侵入して可能な限りの情報を

集めて参る)


本当はそんな事を許可する訳にはいかないが、

思い立ったら先に行動に移しちまう奴だ、止めても無駄だな。


(分かった、だが良いか?これだけは守れよ、何があってもテメェの命を優先しろ、危険だと思ったらすぐに潜入は諦めて俺とギルドに帰る、いいな?)


念押ししておかないと、コイツはどこまでも突っ走っちまうからな。


(フッ…心配には及ばぬ、生憎この様な場所で散らす命など持ち合わせてはない故、では行って参る、《絶影》…。)


潜伏魔法絶影は己の気配を可能な限り薄くする、まさに潜伏に特化した特殊魔法だ。


(スゲェな…龍装を持ってしても目の前にいるお前を今にも見失っちまいそうだ。)


そして奴は音もなく消えた。



~シラヌイサイド~


(何とか侵入は成功だな、さて構成員や隊長達そしてギルドマスターが皆揃っておれば良いが…。)


シラヌイは一階の大広間の天井裏に身を隠していた、そして暫く待っていると


(フッヒャヒャ!これよりぃ!コイツのぉ!処刑をぉぉ!執り行うぅ〜!)


大広間のステージに突如現れた男の側には、グッタリとした様子の男が固定されている十字型の固定器具が現れた。


(処刑…?まぁ良い、何か情報が得られるやも知れぬ、このまま様子を見ておこう。)


用意が整ったと同時に、男が話し出す。


(コイツはぁぁ!俺の隊からの脱走をぉ!試みたぁぁぁぁあ!よって処刑ぃ!フッヒャ!)


その声に続き広間から歓声が上がり始めた。


(アレン様の隊を脱走するなんてバカな奴!)

(死んじまえ!クソ野郎!)

(こーろーせ!こーろーせ!)

(アレン様のショーが観られるぜ!)


(俺の隊…アレン…では奴が隊長の一人か!

早速隊長を確認できるとはな。)


そして奴は唐突に喋り出す。


(バン!)


奴が言葉を放った瞬間、十字架に固定されていた男の左腕が急に爆発した!


(ギャァァァァア!)


(!…何が起こった?)


余りにも急な事態にシラヌイは状況を読み込めずにいた、しかしそんなシラヌイを置いて奴は続ける。


(バン!バァン!)


次は右足と左足が爆発する。


(言葉に反応して爆発する爆弾でも仕掛けているのか、それとも奴の魔法なのか…?どちらにしても胸糞が悪い。)


(フッヒャヒャヒャ!天罰だぁ!天罰ぅ!俺らを裏切ろうしたんだろぉ?そりゃダメだなぁ!)


十字架の男の四肢は最早3つ無くなっており、右腕を残すのみとなっている、いくら何でも惨過ぎる…!男は消え入りそうな声で話し出した。


(もっ、もう…ごろぢてくれぇ…!) 


その声に一瞬の静寂が辺りを包んだ、しかし


(アーッハッハッハッハ!)

(殺してくれだとよ!もっと苦しめてやれ!)


とてもこの世の物とは思えない、下卑た歓声が広間を埋め尽くした。


(お前にはぁ〜簡単にぃ死ぬ権利もありませぇん!フッヒャヒャヒャヒャ!)


シラヌイは今にも噴火しそうな怒りを何とか抑え込みその場に止まっていた。


(落ち着け…ヤケになるな…!何が大事か?余は何の為にここにいる?…情報を集めるのが先決だ…!)


憤りを噛み殺しその場を眺めていると、広間正面にある扉が開き出す、そしてその場の皆が声を揃えて頭を下げた。


(おかえりなさいませ!マスター!)


(マスター!?あれがそうなのか…。)


そこへ現れたのはヘルメウスのギルドマスターである。


(アレン、貴様の悪趣味なショーはそこまでにしろ、これより幹部会を開く。)


(ですが【ニグラス】様ぁ!こいつは俺達を裏切ったんですぜぇ!落とし前ぇ付けねぇとぉ!)


その瞬間、十字架の男は急に悶え出したかと思えば、赤黒い泡を吐き絶命した。


(これで良いだろう、さっさと来い。)


(ヒュー!さすがはニグラス様だぁ!裏切り者にも寛容だぁ!)


(なんだ!?何をしたのだあの者は!固有魔法か?…とにかくこれから幹部会と言っておったな…よし!)


奴等の後を尾ける為、シラヌイがその場から移動しようとするとニグラスと呼ばれる男は、何かに気付いたかの様にシラヌイの方へ視線を向けた。


(バッ…バレたのか!?いや、そんな筈はない!天井裏にましてや絶影で気配を限りなく薄くしてる余に気付くなどあり得ない!)


シラヌイは動けないでいた、あの圧倒的な眼力、それに奴から発せられる異様なまでに禍々しい魔力に当てられてるのだ、無理もない。


(ニグラス様ぁ?どうされましたぁ?)


(万事休すか…!)


だが、ニグラスと呼ばれる男は視線を切った。


(いや、気のせいだ…行くぞ。)


ニグラスと呼ばれは男とアレンは共に、奥の

部屋へと消えていった。


(これ以上の潜入は危険だ、一旦アークの所へ戻るとしよう…あれが、ヘルメウスのギルドマスター“ニグラス,,…か…。)

























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