〜4章〜【シラヌイ】
俺とシルバーはあの日以来盗賊討伐の依頼を
片っ端から受けまくっていた。
(じゃあ行って来るぜ!)
この日も盗賊討伐のクエストに向かおうすると後ろから俺を呼び止める声がした。
(待てアーク)
(何だよ?シラヌイ、何か用か?)
俺を呼び止めたのは【シラヌイ・タケル】
シラヌイは《大八島》と言う「和」の文化を重んじるって島から星にやって来た魔導士だ。
(おヌシもシルバーも以前から盗賊討伐の依頼しか受けておらぬ様だが…何を企んでおる?)
(べっ…別に何も企んでねーよ!ただその〜…正義感って奴に目覚めただけだ!)
シラヌイはその性格も相まって非常に猜疑心が強くそして勘も鋭い、だがこの件はジジィからも箝口令が敷かれてるから話す訳には行かない…メンドクセェなぁ。
(そうか…ではそのクエストには余も同行しよう。なに、報酬金の分け前は取らぬよ。)
(良いって!こんなの俺一人で充分だし!お前も金稼がねぇとだろ!?)
(心配無用、貯蓄は充分だ。)
どれだけ疑り深いんだよコイツは…駄目だ、断る理由がねぇ。
(そ、そうかぁ〜、ならまぁ宜しく頼むよ…)
マズイぞ、何とかして誤魔化さねぇと…、もしバレちまったらまたジジィから大目玉喰らっちまう…。
《盗賊団のアジト》
(御用だ御用だぁ!盗賊共ぉ!ワハハハッ!)
(テ、テメェらが最近、盗賊を狩りまくってるって噂の魔導士か!)
(そうだよ!大人しくお縄に付きやがれ!)
(おヌシが悪役みたくなっておるぞ…)
しかし…だ、シラヌイに黙ってコイツらを尋問するにはどうしたもんかなぁ。
14人の盗賊共を討伐して終わるって訳にも行かねぇし…。
(魔導士だろうが二人ぽっちで何ができる!
ぶっ殺せぇ!野郎共!)
何にせよひとまず片付けるか、と構えた途端
シラヌイが前に出た。
(ここは余が引き受けよう、同行しておきながら役に立たぬとなれば恥になる故。)
…大丈夫だとは思うが一応念押ししておこう。
(殺すなよ?)
(分かっておる。)
(《斬影「五月雨」》!)
シラヌイの固有魔法は《斬影》、繰り出した斬撃を任意の場所に飛ばす事ができる特殊な固有魔法だ。本人の剣の技も相まって非常に相性が良い固有魔法だが、斬撃が故に相手に致命傷を与える事も多い。
(グワァァァア!)
前後左右から音もなく飛んでくる斬撃に切り刻まれる盗賊に多少同情しちまうな…。
(何だよアレ!一気に5人もやられちまったじゃねーか!クッ…クソがぁ!全員で畳んぢまえ!!)
(愚かな…まだ力の差が分からぬとは…。)
おっと、これ以上切らせる訳にゃいかねぇ!
(後は俺に任せな!《龍装「テイル」》!)
俺の姿を見てシラヌイはソッと剣を収めた。
(尻尾が生えた!?何だあれ!)
(バ、バケモンだぁぁ!)
(逃げろぉ!)
盗賊共は叫びながら踵を返し逃走を図ろうとするが、そうはいかねぇ!
(逃すかよ!《龍槌》【ドラゴハンマー】!)
《ドドォォン!》
(ギャァァァァア!)
(ただ尻尾を叩き付けるだけでこの威力とは…。)
盗賊共は残り全員力尽きた。とりあえずはクエスト完了だな、後はどうやって情報を聞き出すかだが…。
(ご苦労だったな、ではこの者らを駐屯地へ運ぶとしよう)
こうなったら…もうこれしかねぇ!
(ありがとよ!シラヌイ!後は俺がやるからお前は先に帰れ、盗賊討伐の同行って言うお前の目的は達成されたんだろ?だったらまだ俺に付き合う必要ねぇじゃん。)
・
・
(むぅ、確かにおヌシの言う通りだな…疑って済まなかった、実はおヌシとシルバーはギルド内で少し噂になっておったものでな、どうしても確認したかったのだ。)
(噂?一体どんな噂なんだ?)
(うむ…おヌシらがまた情に流されて盗賊を逃しておるのではと…な。)
まぁ盗賊討伐の依頼を受けまくってたら、何かしら良からぬ噂話の一つや二つは出ても仕方ねぇけどよ…。
(流石に心外だぜそりゃ…。)
(すまぬ…だがこれで、その疑いも完全に晴れたのだ、許してくれ。)
しかし、こっちにも隠してる事はある、あんまり強くは言えねぇな。
(気にすんな!それより帰り道中は気付けてな!)
(あぁ、おヌシもな)
兎にも角にもこれでやっと尋問ができる、龍槌の威力も収めておいたから盗賊も完全に気を失ってる訳でもなさそうだ。
(おい、起きろ!)
俺の声に盗賊達は目を覚ました。
(お前達に聞きたい事がある、盗賊ギルド
ヘルメウスについて何か知らないか?)
俺の問いに一人の盗賊が口を開く。
(俺たちは腐っても盗賊だ!お前らに話す事なんて何もねぇよ!)
今までの盗賊共とは随分違う反応を見せたな、何か知ってるのか?…にしても腐っても盗賊か、笑わせてくれるぜ全く。
(ほぅ…もっと痛い目にあいてぇ様だな?言っとくがお前ら盗賊なんぞに人権なんてモンはねぇぞ?つまり俺がお前らをどうしよが罪に問われる事はねぇんだ、この意味、分かるよな?)
俺が喋り終えると皆がビクビクと震え出した。
そしてさっきとは別の一人が話し出す。
(しゃ、喋る…喋るから!ヘルメウスだろ!?知ってるよ!)
これまで大量の盗賊共を退治してきたが、やっと情報を持ってる奴に出会えた。
(ヘルメウスっていやぁ、構成員が50を超える大型の盗賊ギルドだ!しかもそこの魔導士はどいつもコイツも粒揃いで、正規ギルドや騎士団にも引けを取らない戦力があるって話だ…。)
構成員が50人以上か、しかも一ギルドや騎士団にも劣らぬ戦力がある…もし討伐するならグレード4に相当するな、何がグレード2の討伐依頼だよ、嘘っぱちも良い所だぜ。
(他に何を知ってる?)
どっちにせよ聞き出せる事は全て聞き出そう、
するとまた別の盗賊が話し出した。
(ヘルメウスには組織図の様な物があるんだ、
当然マスターがトップなんだが、その直属の部下である’’3人の隊長,,達が各隊を指揮している。)
なるほど…隊を分担して統率を執っているのか、ただの無法集団って言う訳でも無さそうだな。
(ギルドマスターや隊長達の名前や、どう言った魔法を使うのかなど知ってる事は洗いざらい吐け。)
(名前や魔法は知らねぇ…俺らの様な盗賊団が知ってるのは、流れてくる噂による物だ、だがその噂によると…。)
(何だ?)
(3人の隊長達はそれぞれが個人の力のみでギルドや騎士団の一小隊を壊滅させられるって話だ、飽くまで噂だがな…。)
個人で一小隊を壊滅だぁ?そんなのが3人もいるってのかよ…、ただの犯罪ギルドと思っていたがとんでもねぇギルドじゃねぇかヘルメウスって奴らは!
(俺たちが知ってるのはこれで全てだ!頼むから殺さなねぇでくれよ!なぁ!?)
別に始めから殺すつもりなんてねぇっての…。
(殺さなねぇよ、お前らは騎士団に連行する。そこで然るべき裁きを受けろ、なぁに安心しろ司法の裁きとありゃ殺される事はないからよ。)
(ありがてぇ…ありがてぇ…)
泣くほどだったら初めから盗賊なんてすんなってんだ…、とりあえずコイツらを連行してジジィやエレナやシルバーと一度情報を共有するか。
そうして盗賊共を連行しようとした時、
(やはり何か企んでおったな…アーク。)
(シッ…シラヌイ!?何でお前がここに!帰ったんじゃねぇのかよ!)
しまった!コイツの疑り深さを忘れてた…。
(話は全て聞いたぞアーク、おヌシ…何故盗賊ギルドの情報など集めておるのだ?)
全部聞かれてたのか、こりゃ言い逃れができる雰囲気じゃないな…ん〜どうしよっかなぁ、これ、、。
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