〜2章〜【盗賊ギルド~ヘルメウス~】
《カルヴェル付近の街道》
(しかしよ…こんっなに見晴らしの良い場所で盗賊行為たぁ、その盗賊団は捕まりたいのか盗みたいのかわかんねぇな)
シルバーが呆れるのも無理はない、見晴らしの良いそれも街付近で盗賊行為をするなんて余程自信があるか無知なバカかってもんだからな。
(言っとくけど!依頼の報酬の取り分はキッチリ分けて貰うからね!)
(チッ…分かってるっての、だから俺1人で良いっつったんだ、グレード2の盗賊討伐の報酬なんて2人で分けたら雀の涙程しかねぇってのに)
グレード2の盗賊討伐の依頼報酬はギルドの仲介分を差し引いて実際に貰える金額は※60,000Ri
「リベル」程度、一月の家賃が45,000Riと考えるとそう高額でも無い。
※Ri「リベル」とはこの世界での通貨単位。
(おいこらアーク!誰が無償で手伝ってやるなんて言ったよ!)
金にうるさいエレナに反りが合わないシルバー…しかも3人で報酬を分けるならハッキリ
言って依頼を受けない方が良いくらいだ。
俺たちがグチグチと言い合ってると遠くの方から商業馬車がやって来た。
そして…その馬車の向こうに複数の馬に乗った人影が見える。
(来たな…エレナ、奴等の人数を確認しろ)
(分かってるわよ!《千里の瞳》「ディスタス・アイ」!)
《千里の瞳》は視力を爆発的に上げ、更に障害物を透かして視る事が可能なエレナの固有魔法
索敵能力においてエレナの右に出る物は星にはいないと言えるだろう。
(弓を持った奴が2人と剣を持った奴が4人よ!
あと一番後ろの奴は…何も持ってないわね。)
(何も持ってないって事は魔導士か?しかし普通小規模な盗賊団に魔導士なんていねぇはずだぞ?)
そう、魔導士が居る盗賊団は総じて盗賊ギルドである事が殆どだ、しかし盗賊ギルドとなればグレードが2なんてありえない。
(何にせよ馬車を襲わせる訳にはいかねぇ!
行くぞシルバー!エレナ!)
(命令すんな!ったく…考えてる暇もねぇか!
《風魔『ウィンドスペル』「風車」!》)
シルバーの固有魔法は、
《風魔『ウィンドスペル』
まぁ…ただの風魔法だ。
(おい!雑に解説すんじゃねぇ!!それに
ただの風魔法と一緒にすんなっ!)
何で聞こえるんだよ…。
(うるさい!さっさと行くわよ!)
俺たち3人はシルバーの風車に運ばれ盗賊団の前に降り立った。
(何だお前達は!?)
(俺たち?俺たちは世界一のギルド《星》の魔導士だ!)
・
・
・
(ギャッハッハッハッハ!誰かと思えば落下星の魔導士かよ!しかも3人って…なんだ?俺らを退治しに来たのか?お前らのギルドはろくに
依頼もこなせないって有名だぜ?その上頭も
悪いなんてなぁ!てめぇらも笑ってやれ!)
(ダーッハッハッハッハッハッ!!)
・
・
こいつらぁ…絶対ゆるさねぇ…、俺たちのギルドを…侮辱しやがって!!特に奥のあのタマゴ頭め!
(あの奥のヤロウは俺1人でやる…雑魚はお前らに任せる!)
(ギルドに一番思い入れがあるのはお前だ…、
今回は譲ってやるよアーク。)
(そうね…あいつらは私達に任せなさい、
地獄を見せたげる)
(ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ!てめぇら!さっさとこんなゴミ共片付けて馬車を襲え!)
盗賊達は奥の奴に奮起され一斉にこちらに襲いかかって来た。
(毒の矢でも喰らえ!)
(骨ごと溶かしちまう毒だ!死ねぇ!)
弓を持った2人の盗賊から毒付きの矢が飛んでくる。しかし、
(毒付きの矢か、なるほど…テメェら、うす汚ねぇ盗賊団の考えそうな事だな、だが甘めぇよ《風魔「風障壁」》)
《キンッ!キキン!》
飛んできた矢はシルバーの風障壁で全て弾かれた。
(風で弾かれただと!?なんだその魔法は!)
(足元にも気を付けな!そこはもう暴風域だぜ!《風魔「風鳴り」》!)
(足元?)
すると弓盗賊2人の頭上から風の槍が降り注ぐ、
その威力は地面を抉る程。
(下じゃ…なくてっ…)
(上じゃ…ねぇか!)
(グアァァア!)
《ドズゥゥン!》
(あ、わりぃ足元じゃ無くて頭上だった。)
シルバーにとって盗賊の1人や2人なんて朝飯前だな、気に食わない野郎だが…。
~エレナサイド~
(良く良く見ると上玉じゃねぇか、この女!)
(コイツは殺さず待って帰ろうぜ!)
よりによってエレナに下心を向けるとはな…、
(女1人に4人がかりで恥ずかしく無いの?あんたら)
(カンケーねぇな!まぁ安心しろよ、お前は俺たちが可愛がってやるからよぉぉ!)
そう言うと馬に乗った盗賊がドタドタとエレナに走り出した。…もう少し慎重になるべきだったな、ご愁傷様。
(無粋な男は嫌いなのよ!乙女心を学んで出直して来なさいっ《千里の瞳》…見つけたっ!
そこよ!)
エレナが地面に手を翳すと盗賊の足元から熱湯が噴き出て来た。
(アッヅゥゥゥ!)
(どっから湧き出たんだこんな物ぉ!)
(あら、間欠泉も知らないの?無料で浴びれる温泉よっ感謝しなさい。)
《千里の瞳》で見つけた地下空洞に溜まった水を熱魔法で沸騰させたって訳だ、毎度の事ながらあいつには驚かされるな、本来戦闘向きじゃない魔法をこうまで使いこなすなんて。
(クソッ!2人やられた!一旦退くぞ!)
(何なんだよ!落下星は雑魚の集まりじゃねぇのかよ!?)
残りの盗賊2人は間欠泉を避け逃走の姿勢を見せ始める…しかしそう上手くは行かない。
(おいおい…俺たちのギルドをここまで侮辱
したんだ、まさか逃げられるなんて思っちゃいねぇよな?)
(ヒ、ヒィ!)
(《風魔「玉風」》!)
《ドンッ!ドンッ!》
そう言うとシルバーが作り出した風の弾丸の様な物で盗賊2人は射抜かれた。微風野郎と馬鹿にはしたが、風の威力ってのも侮れねぇ。
(グァッ!)
(グエッ!)
向こうは片付いた様だな。
(怪我はねぇか?エレナ)
(平気よ、それよりあんたそこにいたら…)
(そこ?)
その瞬間シルバーの足元から間欠泉が噴き出した。
(アッツゥゥゥウ!!)
全く、なにやってんだあいつらは…さて、次は俺の番だな。
(雑魚は全員くたばっちまったな?次はお前の番だ、覚悟はいいな?タマゴ頭!)
(タマッ!テメェ…調子に乗るんじゃねぇぞ!
雑兵が何人やられてもカンケーねぇ!テメェら弱小ギルド如きが俺らのギルド【ヘルメウス】に楯突いた事後悔させてヤラァ!)
シルバーの懸念してた通りだな、やっぱり盗賊ギルドか、しかし…なら何故この依頼はグレード2に設定されてんだ?最低でもグレード3、最悪グレード4もあり得るぞ?…だが、考えるのは
後だ!先ずはコイツを倒す!
(しかし…だ、お前の仲間はさっきから固有魔法ばかりに頼っていたが、ギャハハ…分かっちゃいねぇ〜な?魔導士って奴を!)
(ハッ、盗賊に身を堕としたタマゴ風情が一丁前に魔導士を語るんじゃねぇよ。)
(テ、テメェ…!良いぜ!見せてやるよ!
ホントの魔導士の戦い方って奴を!)
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