龍の落とし子

ヨネ

〜1章〜【その者の名は“アーク,,】

        ~おとぎ話~

   数千万年に1人この世には龍より

    産み落とされし人が現れる。

    その者は世界中の人々を導き

   争いは消え、大地は芽吹き世界に

    平和をもたらす大王となる。

          ・

          ・

          ・

(アーク!いつまで寝てんのよあんた!!)


耳に響くその声で俺はハッ!と目が覚めた。


(クゥ〜良く寝た〜…何だエレナか、こんな所で何してんだお前?)


(な・に・し・て・ん・だ…じゃなぁぁい!

クエストに行って1週間経っても戻って来ない

から見に来てみれば…)


(何で討伐依頼のモンスターの上で寝てんのよ!)


俺は【グレイモンキー】と言うモンスターの討伐依頼を受けてたんだが、なぜか物凄く懐かれちまって一緒になって昼寝をしてたんだ。


(ワハハ!こいつとは友達になったんだ、もう悪さもしねーし討伐しなくても大丈夫だぜ)


勿論『討伐任務』故に討伐しなくては依頼達成にはならない。けどここ1週間寝食を共にしたコイツを倒すのも気が引ける。


(今回もクエスト失敗かぁ〜ワハハハハ!)


(ワハハって…あんた達がそうやってクエスト失敗ばかりするせいで私達のギルド《星》

“ステーラ,,は今や《落下星》なんて言われてるのよ!もっとギルドの一員として自覚を持ちなさい!もう私は帰るからね!)


ギルドの評判が落ちるのは確かに考え物だが、もう悪さもしない友達を倒すってのは無理な話ってもんだ。


(いつもプンスカと飽きないもんなのかねぇ…なぁ?“グレゴリ,,)


「ウホッ」


さてと、1週間ぶりに帰るとするか

しかし帰ったらまた…いや、やめとこう。


(じゃあな!グレゴリ!もう悪さすんじゃねーぞ!)


「ウ…ウホッ…」


    《星》のある街 ~カルヴェル~


俺たちのギルドがある街カルヴェルは、

《ドメイン王国》と言う人口5000万人を超える大国の中にある街で都市ほどでは無いが

それなりに栄えてる街だ。


『バンッ!』


(アーク・ウリアただいま帰還しましたー!)


1週間ぶりのギルドはやっぱり良いもんだなぁ〜

…ん?


『ドンッ!ドンッ!』


(このっ!バカもんがぁー!)


怒声と共に途轍もないパンチが飛んで来て俺はブッ飛ばされた。

それは見事な軌道を描いて…。


《ガッシャァーン!》


(イテテッ…このぉ!いくら何でもいきなり殴り飛ばすこたぁねぇだろ!ジジィのパンチは生死に関わるんだよ!)


(誰がジジィじゃあ!マスターと呼べと言っとるじゃろうが!)


この加減の知らないジジィは《星》のギルド

マスター「バンテック・ドルス」齢150を超えながらも未だに最強と名高い格闘魔導士だ。


(エレナから聞いたぞ!全く…毎度毎度クエストに私情を挟みおって!こうまで依頼をこなせんギルドは他に無い程じゃ!)


(ワハハハハ!つまり俺たちのギルドがNo. 1って事だな!)


(ワースト1じゃ!バカもんがぁ!)


『ドゴンッ!』


ちなみにかなり短気である…。

ボカスカ殴りやがって…毎度毎度は俺のセリフだっつうんだ…ったくよ〜。


(はぁ〜…よいか?ギルドとは困った人々が

ギルドに依頼を出し、ワシらがそれを解決

する事によって得られる報酬金で運営されとるんじゃ!

故に!人々の為にもギルドの為にも受けた依頼は達成せねばならぬのじゃぞ!)


流石は150歳を超えるジジィ説得力があるな…

年の功ってやつか。


(けどよジジィ、どんな形でも依頼主の希望に添えられりゃ依頼達成でも良いんじゃねーのか?今回俺が受けたグレゴリ討伐だって討伐こそしてねーけどもう悪さはしねぇんだから。)


(マスターと呼ばんかマスターと…って何じゃそのグレゴリと言うのは?まぁよい…では聞くが、万が一にもそのグレイモンキーが民家などを襲ったらお前は責任を取れるのか?皆が皆お前の様に特別モンスターや動物に好かれやすいと言う訳では無いんじゃぞ)


確かに俺には懐いて来たが他の者にも同じ様に懐けばそもそも討伐依頼など出されない。


寝食を共にしたとは言っても誰かを襲えばその責任は討伐依頼を受けた俺が取らなくちゃならないんだ…。


(そうだった…すまねぇ…。)


俺にはこの言葉しか出てこなかった。


(少しは反省したか、じゃがまぁ安心せい!

お前が帰った後エレナがそのグレイモンキーを捕獲し【闘獣】として飼ってくれと剣闘場の

マスターと話を付けて来てくれた!

まっ、クエスト失敗に代わりは無いがな!

グハハハッ!)


(あんたが友達だって言うから倒さないでおいてあげたのよっ感謝しなさい)


そう言い片手に持った酒入りのグラスを一気に飲み干したエレナが初めてカッコよく見えた。

何だかんだ言っていつも俺らの不始末の尻拭いをしてくれるのはエレナだもんな…

よしっ!今度飯でも奢ってやるか!

あ、俺金ねーんだった…


(ありがとエレナ!この借りはいつか返す!)


(あんたのお返しはロクな物じゃ無いから別にいいわよ)


フッ、さすがっ良く分かってるじゃんか…

俺の頬に冷たい物が流れた気がするが気のせいだ…。


とりあえず腹ごしらえして家に帰ろう、

1週間帰ってないとギルドと同じくらいに家も恋しいからな、

けど何故か俺はジジィに呼び止められた。


(お〜アークちょっと待て)


(何だよジジィ?)


ジジィが呼び止めて来るなんて珍しいな、

説教は良く聞くがそれ以外でジジィから何か話を持ち掛けられる事なんて滅多に無いってのに。


(マスターじゃ!全く…いやな、ちとお前に

受けて欲しいクエストがあるんじゃが)


おいおい…珍しい所か初めてだぞ!ジジィが直接依頼を持ってくんのなんて…これは名誉挽回のチャンス!


(おぅ!任せろ!ジ…マスターの為ならどんな依頼でも受けてやるよ!で、どんな依頼内容なんだ?)


そう聞くとジジィは少し険しい顔で依頼書に目を向ける。


(何でも街道の馬車が度々盗賊に襲われるらしくての、しかし騎士団は長期遠征で不在らしいわい、そこでこのギルドに盗賊の討伐依頼が来たって訳じゃ、まぁ盗賊ならお前も情が移ったりはせんじゃろうて)


(ちぇっ…ネチネチしつけーっての…にしても盗賊討伐か、グレードは?)


(2じゃ)


クエストには《グレード》と言われるランク制の様な物が設けられている。

グレードは下から1から5まであり、そのクエストの難易度を示している。

ちなみにグレード別の基準はこんな感じだ。


《グレード1 》

ギルド魔導士・騎士が単体で対処できるレベル


《グレード2》

ギルド魔導士・騎士が複数で対処できるレベル


《グレード3》

ギルドの魔導士隊・騎士隊で対処できるレベル

※1つの隊の人数は30人程度


《グレード4》

ギルドの全戦力・騎士団の全戦力で対処できるレベル


《グレード5》

国家武力でも対処できるか不明なレベル


盗賊の討伐依頼は1か2が平均3まで行くと大規模な盗賊団になって来る。

まぁグレード2の盗賊なら大した事ないな。


(分かったよ、んじゃパパッと片付けて来るぜ)


だが、クエストに向かおうとする俺をジジィは制止した。


(待て!この依頼何か少し引っ掛かってのぉ…悪いがエレナ!そしてシルバ!お前らも一緒に行ってくれ!)


(え…私…?)


いきなりの指名で唖然とするエレナ、

そして…、


(ちょっ!マスター!何で俺がアークなんかと一緒に行かなくちゃいけねぇんだよ!)


(それは俺のセリフだ!お前とクエストだぁ?ふざけんじゃねぇ!ジジィ!こんな任務俺1人で充分だ!)


コイツの名は【シルバ・レンジ】俺とコイツは犬猿の仲でいつも喧嘩してる。

第一こんな奴とクエストに行った所で余計に手間が増えるだけだ。


(良いから早よ行かんかい!バカどもぉ!)


ジジィの叫びで俺とシルバの喧嘩はピタリと収まった。


(ちっ!足引っ張りやがったら承知しねぇぞクソ蜥蜴!)


相変わらず嫌味な奴だ!


(うるせぇ!テメェこそ邪魔したらぶっ飛ばすぞ微風ヤロウ!)


そして俺たちは盗賊討伐のクエストに出発した



(あの…私は?)



































































 


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