最終章 物語が始まる。

公明 正大――――。


三週間後。

 あれから、高野と安中の起こした事件の数々、は出尽くして、その他の重大なニュースとかもあって、マスコミは完全に学校から居なくなった。

 そんな平日の朝。

「ルルシーちゃん、夕子、蓮君、アイシャさんのマンション行こう」

 夕子以外の二人が嫌そうな顔をする。

「公明君、もうアイシャさんも一人で学校行けると思うんですよね」

「いやぁでも毎日迎えに行くって宣言した以上約束は守らないと……人としてダメでしょ?」

「大ちゃんは約束を守る男だからね~、しょうがないしょうがない、中学のときもこんなのしょっちゅうだったし!」

「な、なぁ大、その役目は俺が代わってもいいと思うんだ、漫研部員だし」

「蓮君、そうして欲しいならアイシャさんから言うでしょ」

「うぐっ……、まぁ、そうだよな……、ハァ」

「蓮君、ヘタレを改善するには自分からグイグイ行ってもいいと思うんですよ、だから蓮君からアイシャさんに送り迎えをさせてくれと申し込んでみましょう!」

「いやルルシーちゃん、ハードル高い」

アイシャさんの家に着くと蓮君が即行でアイシャさんに漫画のネームを見せる。

だがアイシャさん、少し困り顔。

 俺は文芸部と漫画研究部が合体してラノベも漫画も読めるようになった中、文芸部員にああでもないこうでもないと言い合いながら文章の書き方や小説の書き方を教わり、小説が出来てはルルシーちゃんに読んでもらって、

「…………つまらないです」

 と言われがっくりと肩を落とす。を繰り返している。

 夕子は学習系の漫画をルルシーちゃんの隣で読んでる。

 なんでもルルシーちゃんは一度読みだすと止まらないので、脳波的に集中力を分けてもらえると言っている。

 俺は小説と言うか、ラノベにハマっていた。

 当分飽きない玩具を見つけた気分だ。



神宮司 蓮――――。


 アイシャさんから言われた最低限やるべきこと、『漫画を一週間で10冊読む』のは簡単だしむしろ楽しいのだが、『ネーム100ページ』を下書きのクオリティで……という条件は正直漫画描くことなどしてこなかった者には厳しい。

具体的にはペン入れ前の下書きのクオリティで、と言うのがかなりきつい、ただのネームなら楽なのだが、ペン入れ前の下書きのクオリティで……となると、まず絵が描けない!   

なので人体の骨格について詳しくなったりするのだが、アイシャさん曰く最初の内はそんなの最低限の知識で、とにかく背景と一緒に一コマに絵を描いてパースなどを覚えていき、自分だけの画面を作れるようになって個性を出せるようになるのが重要らしい。

 そうなって来るとキャラクターが描けるようになるんだと……プロの言う事だ、信じよう。

 漫画は分からないことだらけだが、アイシャさんがちゃんとネーム100ページ読んでくれるのがかなり嬉しい。

 あとどんなに絵下手でもバカにしないのが至福、ただし手抜きにかんしてはかなり厳しく、手を抜いたネームは例え数ページか褒めてもらえるようなコマがあってもシカトされる。

 俺はこのまま飽きずに書き続けることができるのだろうか?

 そして俺は童貞を卒業することができるのだろうか?



 高木明人――――。


 DTMをやり始めてから結構時間が経った。

 最初は洋楽の曲を作ると言いと先輩に言われ洋楽を聞いたりしたりしてついにJpopの作曲をすることになったのだが……、自由過ぎて困る。田淵智也さんマジすげぇ。敬服しました。

 俺は気づいたらちんこヘアーメガネを止めていた。

 なんかバンドマンとしてちんこヘアーメガネは無いな……と思いだしたのだ。

 そして一人称もボクから俺になっていた。

 教室でも首にヘッドホンかけて、バンドマンアピール。

 皆からの視線が痛い。

「た、高木っで軽音楽部だったの?」

 俺の事を、俺がちんこヘアーメガネだった時、俺の事を罵って来ていた女子が軽々しく馴れ馴れしく親し気に話しかけて来る。

 ちんこヘアーメガネの時は床に落ちてる消しゴム拾っても、

「触らないでよ、キモイ……」と口汚く罵って来たくせにイケメンになった途端にこれですよ。態度180度転換。

 男なんて竿のついた、もっとわかりやすく言えばディルドのついたアクセサリーくらいにしか思ってないんだろ?

 とりあえず見た目良かったらキープしとく為に挨拶する。みたいな……。そんなのクラスのリア充とやってろよ。

 罵ってくれないと思ったらこれだよ……いいことマジ何もねえ。

 分かっていたことだ。こういう見た目が変わっただけで態度も変えるクズなんて腐るほどいるって……、ちんこヘアーメガネ罵ってくれないの辛い。

 その時になってようやく気付いた。俺はただ罵って欲しいんじゃない、ちんこヘアーメガネの俺を罵って欲しかったんだ。

 でもそういうプレイは彼女が出来ればいくらでも出来る事に気づいた。というか教室内の男女を見てて、閃いた!

「ちょ、ちょっと俺今からちんこヘアーメガネになるから罵ってもらっていいか?」

 うん、変態だな。教室ではそんな事ばかり、理想のプレイばかり考えていた。

 女子がアクセサリーを望むならベッドの上では俺はちんこヘアーメガネで罵ってもらうという契約を結べばいいのだ。

 と、そんなことを部活が終了してひまわり荘に帰宅して、ヘッドホンを装備して自室の104号室でDTMを無心で弄り回し、真夜中に起きて冷蔵庫からゼリー飲料を仁科プロに感謝して頂いてるときに思った。

 仁科プロというのは、仁科桃さんの所属するeスポーツ部の部室での呼び名で、軽音楽部の隣のeスポーツ部が今年度に入ってからうるせえ! と文句を言う先輩バンドマンが漏らしていた。

「仁科プロって誰だよ!? オタク調子乗んなよ? 音楽に集中できねえんだよ、ちょっと文句言ってくる」

 先輩はeスポーツ部に単身乗り込んだが、帰ってくると、

「仁科プロやべぇ、アイツら全国行くわ、マジやべぇ」

 震えながら戦慄する始末。

 俺はゼリー飲料を飲んでいると、実は美少女だった九条アリサがサメの着ぐるみパジャマを着て同じく俺と一緒にカロリーメイトで休憩しに来て、

「ようちんこ!」

 見下すように、生物としてニュータイプには劣る量産型に話しかけるように話しかけてきた。端的に言うと、俺を「ちんこ」と罵ってきた。

 俺はビクンビクンと悶絶した。膝ががくがくと喜んでいた

「あ、ご、ごめん、もう一回言ってもらっていい?」

「はぁ? きめぇんだよ、ちんこ!」

 この隠されていた美少女フェイスに罵られるという至福。

 俺は思いもよらずに勃起してしまった。

 俺のヒロインの攻略ルートはコイツだったのかもしれない。

 九条 アリサ、覚えておけよ!

 しかしその美少女様と俺との中に割って入ってきたのが仁科プロ。

「あ、仁科プロゼリー飲料頂いてます」

「カロリーメイトもらってる、ありがと」

 俺が感謝の意を心の底から発してるのと対照的に、九条 アリサは事務的連絡のように、言葉だけの感謝を示し、カロリーメイトを咀嚼(そしゃく)する。

「アッキーは音楽出来た?」

「もう少しでできそう、流石に一ヶ月も殆どの時間機材にいじってたら閃くよ」

「できたら一番に聴かせて、よくできてたら私が下着姿でアッキーのちんこヘアーメガネを罵ってあげる」

「え! ま、マジですか!」

「曲の出来次第のご褒美」

「お、俺頑張るよ!」

 直ぐに部屋に戻りヘッドホンを装備して、曲の完成を目指す。

 なんだこれご褒美かよ!

 俺の高校生活は始まったばかりだ!

 


 赤枝 静――――。


 俺は現在、普通の高校生活を送っていた。

 いじめられたり、太ってたことで絡まれた小・中学生とは違い、eスポーツ部とは適切な距離を保ち、オフ会で知り合いを増やし、ゲーム実況チャンネルにご招待しつつ、ゲームで金を稼いでいく。

 プレイ時間も実況前にかなりやり込む、しょぼいプレイは見せられないのだ。

「一応プロゲーマーのゆるゆる賞金獲得者、こんにゃくプレイヤーの赤チンだよ~、今日はこの対戦ゲームで無敗の百連勝を目指すよ? って言ってもNPC相手だけどね! それじゃあ行ってみようか!」

 その後、俺は一人楽しくゲームをした。

 最近、高校に入ってからクラスの奴と良く喋るようになり、オフ会に参加することが減って行った。

 しかし主な収入源のゲーム実況はコツを掴んできたのか、人気チャンネルになっていた。

「これは……かなり人気のチャンネルなのではないだろうか?」

 そこで俺は考えた。

世界(ワールド)クラスにゲームが上手いプロゲーマーの仁科プロと一緒に配信してもらったらさらに視聴人数増えるんじゃ……、どうやって納得させよう?

とりあえず話しかけるだけ話しかけてみるか。

俺は寮で仁科プロとすれ違いになった時、呼び止めて提案しようとする。

「仁科プロ、実況配信……」

「やらない」

 即拒否られた。

「そこをなんとか……やってみない?」

 しつこく頼むと呆れられ、

「桃は遊びでゲームしてるんじゃない……金のためだ!」

「ま、待ってって、それなら俺だってゲームは金の為なんだって!」

 仁科プロは俺をシカトして消えて行く。

「ハァ……わかったよ」

 俺は諦めるが、いつか実現させたいと思う。

「赤枝~、また入学式の時みたいに女子とも遊ぼうぜ~」

「いや、俺は金稼ぎで忙しい」

「バイトか? カラオケボックスなら俺も紹介してくれ~」

「いや、ちょっと違う」

「なんだ、じゃあゲーセンの店員か?」

「いや、ちょっと城攻めをだな?」

「城攻めって……セックスの隠喩のことなんじゃあ!?」

「流石赤枝だぜ!」

「だから違うって!」

いや、待てよ?

「女子ってセックスしたらそのままずるずる一緒にいるようになるのかな?」

「いや童貞の俺が知る訳ないじゃないすか!」

「とりあえずモテてる奴って誰だ?」

「男子なら神宮司でしょ? あ、あと最近アッキーもモテてるよ」

 でもアイツら童貞だから参考にならねえんだよなぁ。

「クラスのヤリチンは?」

「そ、そそそんなの皆隠すって!」

「そうだぞ? 俺達高校一年生になったばかりでしょ?」

「参考になんねえな」

 俺は椅子に座って嘆息した。

あ、公明君に聴けばいいんじゃん、仁科プロと幼馴染だし! とりあえず当面の目標は仁科プロと交流を深めることだな。

そして俺は仁科プロと……、プロと……何がしたいんだ?

どうしても実況配信にプロ呼びたいんならオフ会に足繫(あししげ)く通えば動画に出てくれるプロなんか見つかるだろうし、俺は仁科プロと何がしたいんだ? 自分の事がよく分からなかった。



アイシャ・グローリー――――。


 学校に復帰してから、漫研は本格的に始動した。公明君が学校への通学路(といっても五分もかからない)を毎日送ってくれているので、とても助かってる。そんな公明君は、先輩へのカッターナイフ事件や私とルルシーちゃん、瀬田さんともよく絡むので、『キレたらやべぇヤリチン』として学校に定着しつつある。オナニー毎日しても性欲は止まらないのか、授業中よく眠っては、「っく……ぁ、う」とたまに呻いて教室の皆に、「え? ちょ、何の夢みとん!?」という恥ずかしい思いをさせている。

男子からは、「あの野郎……ルルシーさんとアイシャさんに瀬田さんまで……なんて羨ましいやつなんだ! しかもなんか痩せてイケメンになってるし!」などのテンプレ的な恨みまで買っている。ちなみに授業中見ている夢の内容を公明君に尋ねるも、「言ったら引くよ……絶対」という聞いてみたくなる言葉を発するのだが、流石にオナニー大好きを私達に公言してる公明君が、言ったら引くほどの夢の内容なので、どんなドスケベな夢なのだろうかと思いつつも、引いたら傷つけるよなと思い気軽に聞けないでいる。

文芸部と合併したことで文芸部員の公明君も漫研部員にコピー用紙をよく貰いに来る。 何をするのかと聞いたら、どうやらキャラクターを作るみたいだ。

コピー用紙にキャラクターの特徴を書けるだけ書いて、なんだったら時には絵でも描いてみたりして、キャラクターの制作を行ってから執筆に入るようだ。

ここら辺は漫画にも通じるものがある。

実は漫画もキャラが命だったりする。ラノベと漫画は切っても切り離せないようだ。

 そんな公明君は、ルルシーちゃんに毎日しごかれている。

 一応言っておくがチンコはしごかれていない。公明君の名誉の為に言うが……。そっちのしごくじゃない。

 幽霊部員はいなくなった。

 岸谷先輩と同学年の堂本先輩は日々部室で漫画を描いてるし、神宮司君も今は頑張っているが、いつまでそれが続くことやら。

 大体早くて三ヶ月、長くて半年経った所で、一週間に下書き100ページなど続けていたら漫画など描きたくなくなるのが普通だ。

 しかも漫画とは実は資料集めがかなり重要なので、それに気づいた漫画家志望者は集めなければいけない資料の多さに疲れて、筆を折る。

 九条さんは岸谷先輩の命令通り、水着姿にスカートという変態の恰好で、部員皆のポーズモデルになっていた。

 あと九条さんの水着姿目当てに部員が急増しそうになったが、入部試験で『ネーム100ページを期日内に描くこと』が出来ず、漫研部員は只今、私と先輩二人、そしてその先輩の弟と九条さんの五人に、神宮司君を合わせた六人の漫画描きが部室に集まっていた。

 あとはルルシーちゃんと瀬田さんと、公明君の取り合いかな? 今のところは。季節は6月に突入しようとしていた。



 ルルシー・ヴァイオレット


 入学してから色々あって、もうすぐ6月を迎える、春の終わりを告げるような季節。

 そんな新しい出会いの季節が終わる頃、なんか公明君がモテすぎてヤバいことになっていた。

 なんと公明君、美少年の、モデルのようなお姿になっていた。本人曰く、体重が10キロ、入学してから痩せたようだ。

「公明君カッコいいよねぇ!」

「ね! 王子様系だよね!」

何も知らない凡俗共が見た目だけで話す。

大体こういう見た目だけの話はふとしたきっかけでマイナス要素になる。

見た目が優れているがゆえに、凡人と絡まなかったら、「アイツ他人見下してる」など、何もしてないのに憧れて、何もしてないのに失望していく。迷惑な奴等だ。

貴様らは公明君がオナニストと知ったうえでも同じ憧れの言葉をかけれるかな?

 しかも公明君は決してヒョロガリになるのではなく、テニスプレイヤーのような筋肉が、何もしなくてもついてるらしい。天性の才能という奴だ。

 夕子と話してる時、夕子は自分の事を自慢するように、

「大ちゃんは凄いんだからね! 中一で全国大会に行ったことがあるんだから」

 と声だかに言う。だが夕子は何故そのテニスを辞めたのか聞いても、

「そ、それは大ちゃんとの約束だから言わない」

 決して口を割らないのだった。

 仁科プロに聞いても(何故か仁科プロで呼び方が定着した)、その時のことは教えてくれない。まだまだオナニー大好きなだけじゃなく秘密がありそうな公明君だった。

 そんな公明君を狙う金髪ボン・キュッ・ボンのアイシャ・グローリーと普通に可愛い瀬田 夕子。

 なんだよ~モテモテかよ~。

 私は公明君同様、ろくにまともな食事による栄養を摂っていないため、体重が五キロ減った……。自慢の乳(ちち)もそのなりを潜めた。

 まずい、このままではアイシャ・グローリーに負けてしまう。

 と思い管理人の青海先生に深刻な意見として話すと、

「牛乳を飲め、牛乳は高カロリー高たんぱく、カゼインがどうたら言う本もあるが、成長期なら気にしなくていい、そもそも問題だったら学校の給食にも病院食にも出ないだろう? 牛乳のおかげで私はムチムチボディだ」

 神の知識、まさしく天啓に聞こえた。

 その身体を使って坂下先生には迫らなかったのか? とは言いたくても言えない。

 ともあれ、牛乳のおかげで私は再び自慢のスタイルを維持できている。

季節は六月に向かおうとしていた。


 

瀬田 夕子――――。


 どうしよう……大ちゃんがワールドクラスの美少女から好かれている。

まぁ中学の頃から大ちゃんはそこそこモテてはいたが、高校に入ってからのモテっぷりはちょっと計算外だぞ? これなら変にカッコつけて入学式で告白しようとしないで中学の卒業式の時に告白しておけば良かった。

 はぁ~、とため息を吐きつつ、勉強していた合間に、仁科 プロ、プレゼンツのゼリー飲料を飲んで休憩を図る。

「あ」

「あ、おっす」

 またコイツだ……。

 最近よく休憩時間が被る深夜二時に現れる住人104号室の、アッキーこと高木 明人。

 ミュージシャン志望らしく、一日中DTMとやらをやっている。

 先日、チンコヘアーメガネを辞めたことで、普通にイケメンになっていた。

「アッキー休憩?」

「うん、音聴き過ぎて頭ぶっ飛んできたから15分休憩、瀬田さんは? オナニー……はルルシーさんじゃないからしないか……、勉強?」

「え? あ、まぁ、うん」

 ごめんなさい、オナニーしてる時もあります。ルルシーや大ちゃんほどはしないけど結構オナニーしてます。

「東大とか目指してんの?」

「そりゃあ……、まぁ……、一応」

「ふーん、あ、そうそう、俺曲できたら仁科 プロに下着姿でちんこヘアーメガネを罵ってもらえることになったんだ!」

「…………へ?」

 ちょっといきなりの事過ぎて思考が正常に働かない。

 勉強し過ぎの脳の影響もあるのだろう。

「何言ってんだこいつ」

 思わず考えが口から出た。

「あ、せ、瀬田さんは大ちゃんに犯されるっていうレイプ願望だもんね……、そりゃあ逆レイプは分からないよね、ごめん、忘れて」

「いやそうじゃねえよ」

なんだ? なんかむかむかしてきたぞ……、なんでそんなに嬉しそうなんだよアッキーは? 逆レイプってなんだよ!?

きっと逆レイプっていう、知らないワードが出てきたことに混乱してるのと、解けない問題に遭遇したみたいな感覚が重なって混乱してるんだ。もう簡単な問題解いて寝よ。

ワールドクラスのおっぱいとお尻には負けないぞ!



仁科 桃

勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利勝利。


『常勝』


いつからかそれが当たり前になった。もちろん負けることはある、新作ゲームをプレイしたりしてる場合や、相手ゲーマーの観察がプレイ中に追いつかなかった場合など。

でもそれも沢山プレイすることでだんだんとそのゲームの特徴を掴み、相手をカテゴライズしていくことができるようになる。

そうなればあとは後出しじゃんけんだ。

どんなゲームでもゲーム内において相性(あいしょう)というものはある。どんなプレイヤーにもキャラクターにおいても、苦手なプレイという以前に、絶対に勝てないキャラクターとプレイの組み合わせが存在するのだ。例えば相手がじゃんけんでグーとなるような選択をしたなら、こちらはパーを出せば負けない。

人生かけて真剣に大会で優勝するためにゲームをやる奴など早々いないだろう。

だが桃は絶対に世界大会で優勝してやる。

そんな桃が嫌いな人種が、動画配信で小銭を稼ぐなんちゃって自称プロゲーマー。

勝てないからそんなものに逃げる。

勝てない言い訳にお笑いで笑い取って稼ぐ

笑い取ったり人気とりてえんなら最初から芸人になったりアイドルにでもなってろよ、ゲームで勝つことに命かけてるこっちの仕事(プレイ)を、軽々しく安い金でてめーらカスの実況に使える、とでも思ってんじゃねーぞ?

この笑いにもビジュアルにも走り切れない中途半端人間共が!

しかしここまでイラついた事はここ最近は無いな。高校に入学してから色んな関係が出来てイライラすることが増えた。

特に赤枝とかいう半端野郎が最近ゲーム実況に誘って来やがった。でねえよばあああか。

まだ中学生の時の方が落ち着いていたかもしれない。

大がオナニー毎日するようになったのは当然理由がある。

桃もゲームで勝利を渇望するようになったのも理由がある。

夕子が大と桃と遊ぶようになったのも理由がある。

高校で全部清算(せいさん)したいと思って夕子と大と同じ高校を受験した。

でもそれができるようになるには、まだまだ時間がかかるかもしれない。



九条 アリサ――――。


男はどいつもドスケベだ。

これは例外なく当てはまる宇宙の法則のようだと最近気づいた。

「ねぇ瀬田さん、オナニーの盟約ってなんなの?」

瀬田さんは微笑を浮かべて、見下したように言う。

「ふっ、貴様如きには分かるまい……、ルルシーや私、それと大ちゃんのようなオナニストになってからこそ、その盟約の入り口に立てるのさ」

 ……なにいってんだこいつ?

 勉強のし過ぎで頭おかしくなったんじゃないだろうか?

 それにしても部室で水着姿(ビキニ)で毎日過ごさねばならないの地味にキツイ。水着は何故か岸谷先輩が毎日色んなタイプの水着(主にビキニ)を持ってくる。

 男達のスケベな視線や、あと最近知ったが、男はチワワのような外見の奴でもオスはオス。ということらしい。

 チワワこと岸谷(きしたに) 守(まもる)一年生は、良く私に部室内でポーズモデルを依頼する。

 しかもそのポーズが、…………エロ漫画のポーズなのだ。

「九条さんいいよ! そのまま乳持ち上げて! そうそう! あ、あとだいしゅきホールドって言うんだけど、この抱き枕にこんな感じで抱き着いてもらっていい? そうそう! いやぁ、やっぱりモデルがいると捗るなぁ~!」

 あんのエロチワワ~、……あ、ダメだ、思いだしたらなんか濡れて……、————!?

 なんだ濡れてって……!? これが……瀬田夕子の言っていた、オナニストへの、オナニーの盟約への入り口?

 で、でもでも、これで公明君と同じオナニーの盟約への入り口に私も立てるってことなんじゃ?

 その数か月後、私は大雨の中、傘を差した瀬田夕子の前で、静かにオナニーの盟約を結び、オナニストになることになることを、この時の私はまだ知らない。


終わりに――――。


それぞれのひまわり荘の住人が行動を開始し、物語が始まりを告げた激動の四月と五月、ようやく落ち着いたと思ったところで、これから色んなイベントが起こる、それぞれの男女は今誰が好きなのか?、疑問を抱えたまま物語は進んで行く。季節は日照時間が長くなり雨がよく降る六月に突入しようとしていた。                   

                                     (終)

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