第3話 少年と苦な時間

私は部屋に直行して、椅子に座ると...

コンコンっカチャっ

「ヴァローナお嬢様、失礼いたします。お嬢様に会いたいとヴィルト殿下がお呼びです。どうされますか?」

とキュラソー。

ヴィルト殿下って誰?てか、殿下って偉い人??ドドドどうしよう!!!

「あっ!!失礼いたしましたっ。ヴィルト殿下と言われてもよくわかりませんでしたよね。ええっと...。」

戸惑うキュラソーに私は

「返事遅くなってごめんなさい、キュラソー。ヴィルト殿下がなんでお呼びになっているのかが分からなくて...。」

「それがよくわからないのですが...とにかく会いたいとのことです。」

うーん、ヴァイオリンの件かな?それとも何か私したっけ??

「では、お会いしましょう。青いバラの園庭でお茶を用意して。あと、ヴィルト殿下をそこへお招きしてくれると嬉しいんだけどいいかしら...。」

キュラソーは、にっこりと笑って「かしこまりました」と言った。

*****

僕は執事のサリミーに頼んで今すぐ会えないか、聞いてもらった。

「大丈夫だそうです。青いバラの園庭でお茶をするようですので、そちらに今からそちらに向かいましょう。」

僕は、静かに

「ああ、分かった。そうしよう。」

あの転生者のヴァイオリン、どこか悲しくてどこか寂しいという音色。

もしかしたら、僕の気持ちをヴァイオリンを理解してくれるかもしれない。

青いバラの園庭につくと、きれいな白い髪の彼女は静かに紅茶を飲みながら座っていた。

(ちょっと冷ややかな目が怖いけど、話してみたら僕が少し変われるかもしれない。今このチャンスを逃せばまた僕が変われないだけだ。しっかりしなければ...)

僕は茂みに身を潜めて、自分に言い聞かせた。

サリミーは僕の顔色を伺うように言った。

「坊っちゃん落ち着いてください。失敗したとしても貴方の人生が終わるわけでも、この国が終わるわけでもありません。そんなに緊張されなくても...」

すると、僕たちの声が聞こえたのか彼女はティーカップを置いて口を開いた。

*****

「ねえキュラソー、私って何かしたかしら?殿下から話がしたいってことは、私なにかしたって事よね!?お願いキュラソー、私なにしたのー!!」

あまりの緊張でキュラソーの肩を掴んで思いっきり揺らしてしまった。

「お嬢様、ダダダ大丈夫だととっ思いっますよよよー。っっトトととりあえず、一回やめてくださいましー!!!!!!」

はっと思い手を離した。

「ごっごめん、キュラソー。キッ緊張しちゃって...。」

キュラソーはニッコリ笑いかけた

「大丈夫ですよ、お嬢様。緊張をすることは、大切な経験の一つでなんです。むしろ大人になる前に、経験しておいたほうがいいものですよ。」

私は、少し嬉しかった。

学生の世界のとき、緊張しすぎて自己紹介が早口になって、一軍女子に馬鹿にされてしまい少し落ち込んだ。でも、今の言葉で少し開けたかも。

「キュラソーありがとう。私頑張るね。」

「お嬢様、その息です!!」

ガサガサ

んん??もう来たのかな、よし紅茶を一口飲んで落ち着こう。

ふうー、よし!

「ご機嫌よう、ヴィルト殿下。私、ヴァローナ・エルラットです。急なお茶会で申し訳ありません。」

私は丁寧に挨拶すると、殿下はぎこちなく口をパクパクさせていた。

「ここここちらこそそっ、急に伺って申し訳ない、ヴァローナ。」

二人がとりあえず座ると...。

クスクスっ

背後から声が聞こえた。でも誰だかすぐわかるし、確認する必要がない。その声が聞こえてから殿下はどこか自身がなくて、オロオロしている。

「エミリア、隠れていても構わないけど笑うのはやめたほうがいいんじゃない?そういうことをすると、いつかあなたに帰ってくるわよ。」

隠れていた影は出てきて、私の前までたちはかだった。しかもどこか肝が座っていて見ているだけでめんどくさい。心底吐き気がする。

「あら、ヴァローナ様ご機嫌よう。」

両脇の二人はクスっと笑った。

ああもう無理、我慢できない!!何なのかな?エミリアは自分より上の立場の人を笑っていることを自覚しているのかな。てかしてないでしょ。エミリアがやっていることを見ていると私には、Gにしか見えないんだけど。

てか、それ以下よ!!

「ねえヴァローナ様。さっきおっしゃったことは、どういう意味かしら?」

私は、笑顔だけど重圧をかけるように言った。

「あら、そのままの意味よ?もしかして、あなた言語のお勉強ができないのかしら?そういうことをしていると、いつか貴方が痛い目に遭うって言っているのよ。」

するとエミリアは、ふんっと言って

「そんなこと言われなくても意味はわかるわよ!!!だからなんで私が痛い目に遭うのよ。今までそんなことなかったし。しかも、私に忠告する気?!!」

心底ため息だが。

「ええ。むしろ私が忠告してあげたのよ。あと、今は貴方と話すため時間ではなくてヴィルト殿下と話すための時間なの。殿下の時間もあるだろうし、あまり貴方に時間を裂きたくないの。」

と冷めた顔で凍りつく空気と重圧をエミリアを中心に加える。

「っく!!!!」

エミリアは悔しそうに私を睨みながら重圧に耐えている。

「わっっっ、わかったわよ。今回は退散するわ。それでいいでしょ?」

ようやく退散してくれるらしい。私は少し圧力を軽くした。すると、そそくさと逃げて行ってしまった。

「ヴィルト殿下、お騒がせしてしまい申し訳ありません。」

殿下は、どこか言い捨てた感じで

「いいや、大丈夫だ。いつものことだから。」

と言った。

「ええと、では本題に入りましょう。」

殿下はビクゥーとして、真っ青な顔でこちらを見た。様子からして、少し言いづらいことのようだ。

「私は、私の納得の行かない悪事を働く人に対してはあの態度ですが、きちんとしている人にはそんなことはしないので安心いてください。」

すると、殿下は落ち着いたようにため息をついた。

「ごめんね。僕、人と接するのはとても苦手なんだ。」

私は驚いた。すぐに会いたいというから、急用かと思ったのに...。でも良かった怒られる感じではなさそう。

「いいえ、私こそ本当はもっと弱いのよ。前までの私は、トラブルを起こさないために気をたくさん効いてきたけど、でも違うなと思ったの。」

殿下は前を向いた。

「嫌なことは、嫌だと言わないといつまで立ってもそのままだし。嫌なことをしてくるなら、対策をたくさん立てていくんです。自分ができないことは、どうしたら自分がコツをつかめるか、どういうルートならできる可能性が上がるか。私はいつも考えていますよ。」

殿下は目を大きく見開いて

「ねえ!!ぼ、僕にもできるかな?!!」

ハッとして、殿下は少し引っ込んだ。

「僕ね、ヴァイオリンが上手く弾けなくて。お兄様は上手いのになんで上手く引けないのかって、お父様とお母様に言われるんだ。でも何度練習しても、うまく弾けないんだ。」

少し涙が出ていた。うん、わかる。私も経験した。私の場合、妹は優秀な人間だった。だから、殿下みたいな状態になったんだけど、苦しいというかなんとも言えない複雑な気持ちになったのを思い出す。

だから私は、笑顔で

「うん、大丈夫です。殿下ならできます。だって、今まで言われるのに耐えてこられたんですもの。一緒に頑張りましょう。」

殿下はパアァーと明るい表情になった。

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