非常識な私
おもながゆりこ
第1話
私の勤める会社は健康食品や化粧品、飲料水、サプリメントを扱っています。
月に一度、お客さんを集めて社長が自らセミナーを行ないます。
毎回満席になる程、好調でなかなか評判の良いセミナーです。
先月、セミナーを行なった時の事。
お客さんのひとりの携帯電話が鳴り、その人は携帯を持ったままフロア後方にあるトイレに入って行きました。
そして中で延々と話をしているのですが、その声がフロアまで丸聞こえなのです。
社長が大事なセミナーをしているというのに…。
他のお客さんも迷惑そうにトイレを振り返ったり、呆れたように首を横に振ったりしています。
電話しているお客さんというのは、長らく歌手をしている女性なのですが、
プロはプロでも売れないプロで(そんな事言っては失礼なのですが)、ヒットも何もまったくありません。
私もしばらく我慢していましたが、一向に電話が終わる気配はありません。
そこでトイレに入り、まだベラベラ話している彼女に
こんな行動は非常識である事、ずっと声が丸聞こえである事、みんなトイレを使えないので困る事、
社長が講義中なのに失礼である事、電話をするなら非常階段の所でして欲しい事を告げました。
彼女は私のこめかみに走るアオスジに恐れをなしたのか、素直に言う事を聞いて電話をやめてくれました。
私はこう思いました。
歌手だから、芸能人だから、まして売れない方だし、多少非常識でも仕方ないのかな、と。
そして自分の定位置に戻ろうとした際、流しに汚れたコーヒーカップがいくつかあるのを見つけ、
さっと洗いました。
水の音が気になったけど、まあいいか、なんて。
するともうひとりの社員の男性がやってきて私にこう言ったのです。
「何も社長の講義中に洗う事ないでしょう」
ガーーーン。
そう!非常識は、私だったのです!
チャンチャン!
非常識な私 おもながゆりこ @omonaga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます