第4話 発見
「今日のお茶菓子は麩饅頭にしようと思う。」
「じゃあ煎茶が良いね。」
麻と善くんは毎晩短いティータイムの時間を取っている。
「ねえ、善くん、今日また新人さんがやらかしてね。本当に〜」
2年前のティータイムの時間は、通勤で見た綺麗な花や、旅行で行きたい場所など、穏やかな話題で持ちきりだったが、ここ最近は木下の愚痴大会になっている。
「もう、本当に嫌になる、仕事辞めたいよ。」
「ねぇ、麻ちゃん。ちょっとこれ見てくれる?」
麻の目の前にあったのは近くの公民館のホールで行われる講演会のチラシだった。
「なにこれ、大人の発達障害?」
仕事柄、麻の耳にも発達障害について入って来ていたが、実際のところどんなものかよく知らないのである。
「麻ちゃんの話を聞いていると、どうもその新人さんって発達障害じゃないかと思うんだよ。」
「あぁ、流行りのね。でも、本人の努力次第って所が多いにあるのよ?なんか自分に向き合わずに人のせいにして…あぁムカついて来た。」
「一緒に行ってみない?実は僕の職場に発達障害の人がいて、あっ!良い人なんだよ。僕、仲良しだし。ちょっとその人のこともっと知りたいなと思ってね。」
麻は善の話を思い出した。
あれは付き合い初めの頃だった。
善は介護士をしていて職場の同僚の話や、利用者さんとの会話などたまに教えてくれた。
介護の現場はストレスが多いというが、不思議と善の口からは、職場の楽しい話しか出て来ず、この人は聖人だと麻は思っていた。
その善が、職場でも一番仲良くしているのが
トムさんだ。確か障害者手帳があるから一緒に遊ぶと得するんだって、自慢げに言ってたな。
きっとトムさんのことなんだと麻は思った。
「分かった、善くんが行くなら私も行くよ。」
善はどこかホッとしたかのように笑った。
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