第3話 記憶違い



「〜ということです。木下さんも追い詰められたからあんな事を言ったんでしょうが、言われた野島さんはたまったもんじゃないと思います。」

「いやぁ、君にも悪かったね。本来は野島くんが対応すべきだが、木下くんはいつもこんな調子だからね。野島くんも参っていてね。木下くんの指導は全員で対応すべきと判断したんだ。

実際、私もどうしたら良いかわからない。」


課長は悪い人では無いが、ここぞという時に頼りにならない人だ。


「まずは事実をみんなで共有すべきかなと思うんです。でもそれを受け入れるか…木下さん自分の否を認めない所がありますからね。」

「申し訳ないね。僕からもお願いします。まぁ認めなくてもやった事はやったこととして、僕たちは認識しましょう。それと、今後どうしていくかは伝えたという事実が無いと、問題が解決したとはならないから、よろしくね。」


やはり頼りにならない課長との話を終えて、麻はまたあの2人を会議室に呼んだ。


「大西さんに確認しましたが、木下さんに野島さんが声をかけている所は見なかったということでした。」

野島はホッと息を静かに吐いた。

木下は腑に落ちない様な顔をしている。


「今後のことを考えていきましょう。電話を取ったらメモをと

「ちょっと待って下さい。野島さんと大西さんが一緒になって私に嫌がらせをしているんだと思います。」


「へっ?」

「へっ?」

麻と野島は同時にへんな声を出した。


「それは事実ですか?」

もう麻は呆れていた。


「はい、絶対そうです!調べて下さい。嫌がらせされてたんです。」

「何かその事実がわかるものはありますか?」

「いや、無いですけど…」


もう勘弁してくれ、

「今は電話を受け取った時に、どう対応すべきだったか考えましょう。まず〜」


話し合いは本来20分を考えていたが、大西への事実確認も含めて3時間にもなっていた。

当初、あれだけ時間を気にしていた木下は、自分の意見を言いたいと、どんどん自分の理論を言って時間を引き延ばし、その度に話し合いができなくなる。

しかも、言いたいことだけ言い、自分の都合の悪い事は聞かず、結局反省せずにいつもあやふやに話し合いは終わってしまう。


あぁ、理不尽だ。

だから木下と関わるのは嫌なんだ。

麻はとにかく早く家に帰りたかった。

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