第31話

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 俺が出張でアミの元を離れた期間に

 アイツが絡む

 ちょっとRISKYな

 アクシデントはあったけど



 社長からも"娘をよろしく!"と

 同棲の許可も得た


 出張から戻ったら

 俺たちは 一緒に暮らす



 早く…

 俺の帰りを待つ アミに会いたい…



 残りの1週間も、頑張ったのに…



 それなのに…

 どうして…まだ


 俺たちにイジワルをする?




 ── いつまでも

 …覚悟を決めなかったからですか?



 ── 子どもっぽい

 …嫉妬ばかりするからですか?





 待ちに待った再会は


 事実を改ざんしたくなるような・・・


 上手く呼吸が出来なくなるような・・・




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「予定通り、2週間で

 終わらせることが出来たな!

 2人とも、お疲れ様!」


「今回の出張で

 たくさん収穫するものがあって

 とても勉強になりました!」


「ホント、マサは真面目だなぁ〜アハハ!

 さっ、アミが待ってる…帰ろうか!」



 帰る準備に取り掛かっていると

 社長の電話が鳴った



「えっ・・・」



 ── アミが事故に遭って病院に… ──



 社長は、放心状態…

 途中、のぞむさんに電話を代わって

 状況を確認していた




『・・・何 言ってんだ?・・・嘘だよな?』



 昨日の夜

 元気な声を聞いたばかり


 …部屋で待ってるって

 言ってただろ?



 あぁ…そっかぁ…



 俺が今まで

 アミのことを散々

 振り回してきたから…



 これ…仕返しだよな?



 帰ったら

 悪い冗談は やめろって…

 大笑いして…それから……




 …それから…っ……




「マサ、しっかりしろっ!

 まっすぐ病院に向かうぞ!」



 望さんの気を張った声に

 我に返った…



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 病院に到着すると

 涙目のお義母さんが 駆け寄ってきて

 吸い込まれるように

 社長の胸に顔をうずめた



「アミがぁ!!!…どうしてぇ…っ…!!!」


「大丈夫だ…泣くな…っ…」


「あの子まで…っ…

 アミまで いなくなったら…私っ!!!…」


「アミの生命力を信じよう…っ…」



 お義母さんの慟哭どうこくが響く



 ・・・・・・アミが いなくなる?



 恐怖で 体が震えた



『そんなこと・・・させてたまるかよ・・・』



「マサ、ちょっといいか?」


「はい…」



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 のぞむさんに声をかけられ

 アミの両親から、少し離れると

 静かに口を開いた



「アミには、1つ年上のフミヤという

 兄貴が居たんだ」


「お兄さんが…?」


「フミヤとアミは、すごく仲が良くてさ〜

 従兄いとこの俺も一緒になって

 3兄妹のように育ったんだよ…」



 昔を懐かしみながら

 少し笑みを浮かべて話す望さん



「フミヤは、小さい頃から体が弱くて…

 体育も制限があったりして…

 アミが…いつもフミヤの傍に居て

 身の回りの世話をしていたんだ」


「・・・・・・」


「この前も話したけど、

 アミがフミヤと同じ高校に

 通いたいっていうから

 受験勉強は 俺が見てやって…

 成績イマイチだったのに

 負けん気が強いんだよな〜

 合格しやがった…

 まぁ〜、教え方が良かったんだな(´∀`*)」



 アミの面倒見が良いところは

 お兄さんのこともあったからなのか…

 妙に納得できた



「入学してからは

 フミヤと一緒に登校してたんだけど

 ある朝、珍しく2人が喧嘩をして…

 …フミヤが先に家を出たんだ」



 ・・・フミヤさんは

 横断歩道を渡っている途中で

 発作が起きてうずくまり…

 歩行者側の信号は、既に赤…

 動けないフミヤさんに気づくことなく

 先を急いだトラックが…



「・・・・・・」



「アミは、喧嘩したことを悔いて

 フミヤの傍にいなかった自分を

 ものすごく責めたんだ…

 俺にも、手が付けられない程だったよ…

 その後は すっかり荒れちゃって…

 アミを怒らせたことない?

 言葉遣いとか、凄いんだよ…

 "てめぇ、ゴルァ!"とか…」



 確かに、怒ると容赦ない…



「…そうだったんですね」


「今回の事故は…

 走って横断歩道を渡ってた学生さんが

 道路の真ん中で盛大に転んで…

 その彼をアミが支えて渡らせて

 散らばったカバンの中身を拾いに

 横断歩道に戻ったところに、

 前方不注意の車が突っ込んだって」



 〖あの子まで……いなくなったら…〗

 ・・・お義母さんが泣きわめいた理由



「その学生さんと、フミヤが

 重なったのかなぁ…

 小さい頃から周りを気にせず

 突進していくんだよ…っ…

 ホント参るよ…

 心配ばかり…かけさせやがって…っ…

 フミぃ…アミを…助けてくれ…ぅっ…」




 そう言って 天井を仰ぎ

 両手で顔を覆った 望さん…



 胸が苦しくなった…



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 執刀した主治医の説明

 左腕と肋骨の骨折、

 軽く頭を打っているが検査の結果は

 異常無しと言っていた

 あとは、意識が戻るのを待つだけ…



 *・゚・*:.。.*.。.:



 ICUに入る許可が出たので

 社長、お義母さん、望さんが

 先に入っていった


 廊下で待つ間

 震える手に

 グッと力を入れて握りしめ

 不安を拭い去る



「マサ…」



 望さんに呼ばれて病室に入った



 顔には、たくさんの擦り傷、

 腕には包帯が巻かれていた


 たくさんの管に繋がられ

 酸素マスクが白く曇る…



 ── 生きてる ──



「アミ…ただいま…」


「…………」


「ほら、帰るぞ!

 早く起きろよ…っ…」


 横たわるアミの手を握り

 力ない声で、話しかけた



 だけど、アミは…

 ずっと眠ったまま…



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 それからは ほぼ毎日

 仕事が終わるとアミに逢いに行く

 時間の許す限り、手を握って

 話しかける


「アミ…

 俺の声 聞こえる?…

 …声、聞かせてよ…っ…」

 


「明日もいい天気だって…

 手を繋いで散歩も良いな…」



「アミぃ…目を開けろよ…

 俺から…離れないで…」



 ── もし…このまま 起きなかったら…



 何度も不安に押し潰されそうになる



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 もう、何日も

 ここに帰っている


 アミの部屋…


 ここにいると、少しだけ

 気をゆるめることが出来た



 ・・・・・・"まさくん、おかえり!"

 元気な声が聞こえてきそうで…



 ベッドに横たわり

 アミの柔らかな香りに包まれても

 なかなか眠れない




 目を閉じると



 映画のハイライトシーンのように



 大きな口開けて笑っている顔や…

 睨みつけて怒る顔…

 俺を呼ぶ 柔らかい声…その響きも

 華奢きゃしゃな指も…

 触れる体温も…何気ない仕草も…



 どれも鮮明に浮かび上がる…


 俺の記憶を埋め尽くす…


 そばに居るみたいで

 手を伸ばしてみる


 隣にも…


 腕の中にも…


 愛しい人は いない



「抱きしめたいよ…」


 弱々しく声に出してみる




 全てが…恋しい…

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