第7話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 TS商事との商談が終わり

 酔いと眠気でフワフワしている私は

 タクシーに揺られていた



「アミ?家どこ?」


「ん〜( ¯꒳​¯ )ᐝ」


「1年前と、変わってない?」


「ん〜( ¯꒳​¯ )ᐝ」


「それとも、このまま…俺ん家に行く?」



「ん〜( ¯꒳​¯ )ᐝ……( ⊙ω⊙ )ん?」


 ……あれ?部長は?…え?タクシー?…



「て、てっちゃん?……私…えっと…」


「どうした、アミ…」


 少しずつ理解し始める

 今置かれている自分の状況…

 ……やってしまった


「………ぉりる」


「え?何?」


「…降りる!降ろして!

 てっちゃん!!!…お願いっ!!!!」



 バタン…Boooon!!

 哲を乗せたタクシーが走り去った…

 勢いよく 正気を取り戻した私…


 ………。


「ここ、どこ?」



 半分酔っ払い、半分寝ぼけて

 てっちゃんを困らせた挙句…



「迷子だって…(´▽`*)アハハハハハハハハハハハ

(;´∀`)…ァハハハ…ハハ…ハ…」



 ──どうしよう…



「何やってんだろ…私…ε-( - - `)ハァ…」



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 柾國まさくには ひとり

 自宅に向かうタクシーの中…

 イライラしていた…


「あんなヘロヘロになるまで

 飲むことないだろ…」


「やっぱりアイツと何かあると思ったら…

 元カレかよっ…(`-´)」


「ヨリを戻すだと?!…(`Д´)……チッ!!!!」


「しかもTSの優にまで……(。´-д-)ハァ-」


「…普通、俺と一緒に帰るんじゃないのか?

 …クソッ…( ノД`)」


 ブツブツと独り言…



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 〜まさくにの恋愛事情〜


 この容姿のおかげで

 今まで付き合った女は何人もいた

 女の方から声を掛けてくることが

 ほとんどで…


 でもフラれるのは、いつも俺のほう…


 ••┈┈┈┈••

 フラれる理由


 その①

 自分だけ忙しいと勘違いしてる人に

 いつまでも合わせられない…

 別れてください!


 その②

 え?これも買ってくれないの?

 本当ケチよね!…もう別れる!


 その③

 淡白なうえに、果てるのが早い!

 全っ然、満たされない!気持ちくない!

 別れてよッ!!!!

 ••┈┈┈┈••



 ざっと、まぁこんな感じ…



 どいつもこいつも、自己中…

 俺のことは、外見だけだ…


 オンナは、もう信用ならない…


 そう思っていた


 ・・・・・


 社長から声をかけてもらい

 転職した今の会社



 事務所の雰囲気が良い…


 場の空気を和ませる人物オンナがひとり…

 俺の目に留まる



 仕事で失敗した社員と、一緒に悩み

 元気になる言葉を掛けてやるアミ


 失恋した女性社員の話を聞いて

 共に涙するアミ


 先輩 後輩…分け隔てなく

 会話を盛り上げるアミ



 こんな女性なら

 本当の俺を見てくれそうだな…


 心の片隅に淡い気持ちを灯しながら

 実は、そんな俺を悟られたくなくて

 ワンマンな上司としてやり過ごす日々…



「…鬼がっ!ヽ(`Д´)ノ」


 怒っている顔も悪くない…

 …いや…そうじゃなくて…



 ・・・・・



 親に、会わせたい人がいるから…と

 呼び出されたベローホテル



 目の前にいるアミを見て

 驚きを隠せなかった


 どういうことだ?

 は?…見合い?…許嫁?

 耳を疑うような言葉に混乱しつつも


 アミには

 相当 嫌われてることもわかって

 ショックだった


 まぁ、当たり前だよな…



 だけど、その日を境に

 アミを意識し始めて…


 "お見合いは無かったことに…"

 お互いに同意した…はずだった…



 どうしたんだろう…俺……

 こんなはずじゃ……



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 もう、家に着いたか?

 アイツに何か、されてないか?



 接待の後、自宅に向かうタクシーの中で

 アミのことを…気にしていた

 …その時


 スマホが震えた



「えっ…」


 冷静に…

 通話ボタンをスライドさせた

「もしもし?…」



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「あ、…アミです……

 迷子になっちゃってぇ…

 …っ……ここ、どこだろう…」


 今にも消えそうな声…


「見渡して…何か建物ある?

 目印になりそうなものとか…

 そこから動くなよ!!!!」



 運転手さん……急いでくれ…

 早く、アミの元へ…



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 バタンっ…


 慌ただしくタクシーを降りると

 1人待つ…アミを見つけた…


「アミっ!!!!」


 振り向いたアミが とても綺麗で…


「あ、部長…ごめんなさい、私っ…」


 俺は 足早に駆け寄って

 少し冷たくなった体を

 ギュッと抱きしめていた



「帰るぞ…」


「うん…」


 待たせてあるタクシーに乗り込んだ



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 お互いに無言で

 窓を流れる景色を見つめていた


 まだ少し酔っているのか

 暗い車内でも

 アミの頬が少し

 赤く染っているのがわかる



 もうすぐ…着くのか?

 ガラスに映るアミの顔を見て

 …繋いでいる手にチカラを込めた



「今日の打ち合わせ内容…

 文字に起こしたいんだ…

 部屋に…パソコンある?」



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 〜アミside〜


 迎えに来てくれた まさくん

 "何やってるんだ!"って怒られると

 思ってたのに

 私を見つけ、ギュッと抱きしめてくれた


 タクシーに乗り込み

 窓をぼんやり眺めていた


 あぁ…もうすぐ着いちゃうなぁ…って

 少し寂しい気持ちになったら

 繋いでいた彼の手にチカラが入った


 同時に、私も…

 手を握り返していた



「部屋に…パソコンある?」



 わかっていた…そんなに急いで

 文字起こしなんかする必要が無いことも…



「うん、あるよ…」



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 タクシーを降りて

 一緒に部屋に入る


 昨日片付けしておいて良かった…



「今、お茶淹れるね…

 パソコン、先に持ってこようか…っ…」


 カバンを置いてキッチンに向かおうと

 彼に背を向けた



 ギュッ…

 後ろから彼に抱きしめられ…



「あのさ…」


「…うん」


「俺…アミに嫌われてるのは

 わかっているんだ…」


「………」



「…でも…もしも俺が…

 アミのことを好きだと言ったら

 …どうする?」




 ドクンと…全身が心臓になったみたい

 酔いも一気に醒める…



 素直になるのが一番…だよね…

 抱き締められている腕を解いて

 向かい合った…



「嬉しいよ…とっても(*´꒳`*)」

 と、笑顔を見せた



 一瞬だけ柔らかい笑顔を放った彼が

 今度は 正面から

 ふわっと優しく抱きしめてくれた



「やばいな…俺、

 告白するの初めてなんだ…」



「嘘ついてませんか?あ…

 そっか!部長は告白される方ですね?」



「敬語…それに、名前…」



「あ、ごめん…(ノ∀≦。)ノ」



 落ち着いた声で、まさくんが言った


「返事、聞かせてくれないか?…」


 私も…この人と一緒に居たい…

 返事、しなきゃ…



「俺と……付き合って…」



 近づいてきた彼の唇を受け入れ

 深くて長い…無言の返事をした


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