第32話032「オスカー氏、新商品と魔道具と設計書に度肝抜かれたようです」
「では、早速⋯⋯」
そう言って、オスカーがメイドが運んできたサラダにマヨネーズを適量かけ口にした。すると、
「っ!!!!」
オスカーは口に入れた瞬間、一度大きく目を見開くと、すぐにまた二口・三口とマヨネーズがかかったサラダを口に放り込んでいく。それはもう、見事な食べっぷりだった。
「こ、これが『まよねーず』っ!! 美味いっ!! な、なんですか、この後引く味はっ!! 素晴らしいっ!!!!」
大絶賛である。
「気に入っていただいてよかったです」
「気に入ったも何も⋯⋯これ凄過ぎるよ、リオ君。し、信じられない⋯⋯こんな商品を10日ほどで生み出すなんて⋯⋯」
オスカーはリオの生み出した新商品マヨネーズを体験して、改めてリオの異常性を再認識した。
「リオ君、たしかにこの『マヨネーズ』がすごい商品だということはわかった。ただ、私はこれだけじゃなく、
そう言って、オスカーは後ろに控えている『魔道具』に目をやった。
「説明してもらえるかな?」
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「生卵を食べるとお腹を壊すので誰も生では食べないのですが⋯⋯大丈夫なのですか?」
「はい。これは、そのお腹を壊す原因である『菌』を殺すための魔道具ですので」
「菌を殺す⋯⋯?!」
「はい。生卵の中にはそのお腹を壊す原因となる『菌』がたくさん入っているので、それを殺すための魔道具ですね」
「な、なるほど。正直私はその『菌』というものがどういうものかはよく知りませんが、ただ、話は聞いたことがあります。人間の目には見えないほどの小さい生き物で、動物や植物の中にいっぱいいるというやつですよね?」
「はい、そうです」
あれ? もしかして『菌』ってまだ一般には馴染みがない⋯⋯のか?
「⋯⋯まーとりあえず、その菌を殺せば卵は生でも利用できるのでこうして加工できるようになるんです」
ということで、俺もそこまで詳しいわけではないので全力でごまかした。
「わかりました。では別に問題ないということですね。それにしてもリオ君は『菌』のことについても面識があるとは⋯⋯すごい博学ですね。一体、その知識はどこから⋯⋯?」
「っ!?」
ここで、まさかのオスカーから不意打ちのような質問が飛んできた。いや、まーさすがに一般的に知られていない『菌』の話やそれを殺す魔道具を作ったのであれば当然⋯⋯か。
「孤児院には多くの本があるので⋯⋯そこから得ました」
とりあえず『孤児院には本がいっぱいあるので万能説』で返事をしたが、その時俺はこの場にシスター・マリーがいることをすっかり忘れていた。
(あっ! そういえば⋯⋯シスター・マリーが⋯⋯)
やばい!? シスター・マリーは孤児院にどういう本があるかを把握しているはず⋯⋯。当然、孤児院の蔵書に『菌』に関する本などはない。前世の日本にいるときの知識だ。
そう思った俺は、シスター・マリーが俺の発言に対して不審に思っているだろうと顔色を伺った。すると、
「ええ、リオはこの歳で孤児院の蔵書を全部読んでいますから。リオは賢いのよ」
「シ、シスター・マリー⋯⋯!」
そう言って、シスター・マリーは俺のほうを見て
「なるほど、そうなんですね。孤児院の蔵書をすべて⋯⋯ですか。さすがですね、リオ君」
「あ、ありがとうございます⋯⋯」
オスカーは俺の言葉やシスター・マリーの言葉に特に疑うような素振りはなかったので、何とかうまくごまかせたようでよかった。
だがしかし⋯⋯どうして、シスター・マリーは俺の『嘘』をフォローしてくれたんだろう?
フォローしてくれたということはシスター・マリーは俺が『嘘』をついていることを知っているということだが、でも、どうして俺の嘘に加担するような行動を⋯⋯?
シスター・マリーは俺のスキルのことは知っているが前世の記憶があることは知らない⋯⋯はず。
あれ? 知らないよね?
それとも知っているけど隠しているとか?
まーいろいろ気になることはあったが、しかし、こればっかりはシスター・マリーに聞かないとわからないことなので、俺はすぐにその思考を手放し、再びオスカーとの話に意識を向けた。
********************
その後、オスカーに『卵殺菌用魔道具』を稼働させ、卵の殺菌までの一部始終を披露した。
「す、すごい⋯⋯。こんな魔道具を10日ほどの短期間で作り上げるなんて⋯⋯。マヨネーズも大概ですが、どちらかというと、この卵殺菌用魔道具の発明が凄過ぎます⋯⋯」
デスヨネー。
この世界の『魔道具』がどういうものなのかよくわからないが、ただそれでも、この『卵殺菌用魔道具』が普通じゃないのは明らかだろう。オーパーツみたいなもんだろうなぁ〜。
「それに、このマヨネーズと魔道具で目立たないですが、この『設計書』が個人的には素晴らしいです。マヨネーズの作り方はもちろん、この魔道具の作り方も詳細に書いていますし⋯⋯。リオ君はこういった丁寧でわかりやすい設計書も書けるんですね。これが一番驚きましたよ!」
と、無条件に褒めまくるオスカー。
まー実際、8歳に子供が書けるような設計書ではないのはもちろん、この世界のそれなりに教養を持つ大人でもここまでの完成された設計書は書けないだろう。
ていうか、この設計書って、ぶっちゃけ俺が書いたんじゃなくて、俺のスキルが生み出した物なんだけどね。⋯⋯『書いたのではなく生まれた』ね。
なので、俺個人にここまで丁寧でわかりやすい設計書を書ける能力はない。
ということで、オスカーにはフッと「皆まで言うなスマイル」を前面に出して、なるべくボロが出ないよう努めたのは言うまでもない。
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【毎日12時更新】
明日もまたお楽しみください。
あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
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