第33話033「問題が発生したようです」



「これ⋯⋯魔道具ってことは魔力が動力源ということですよね⋯⋯。この魔力はどこから供給しているのですか?」

「あ、私がこの魔石に魔力を入れて、この魔石をセットするとそこから魔道具に魔力が供給されています」


 そう言って、2つの魔石を取り出して見せる。


「あ、淡い虹色⋯⋯! ま、まさか、無属性魔力ですかっ!?」


 オスカーの反応を見て俺は「あ!」となった。というのも、オスカーに無属性魔力であることは言っていなかったからだ。


(ど、どうしよう⋯⋯)


 俺は心でそう呟きながら、シスター・マリーとウラノスに目を向けると、二人は頭を抱えていた。しかし、


「はぁぁぁ〜〜。まー遅かれ早かれ、そうなるとは思っていた。想定内だ、リオ」

「ウ、ウラノス⋯⋯!」

「でも、もう少し頑張れると思ったんだけどなぁ⋯⋯。リオ、もう少し警戒することを覚えなさい!」

「は、はい⋯⋯シスター・マリー」


 何か二人とも注意はしたが、特にそこまで怒っているようではなかった。すると、


「まーでも気にするな。オスカーこいつは俺たちの仲間だ。な、オスカー?」

「——ったく! そんなすぐにバラすなよ、ウラノス。もう少し、リオ君をドキドキさせてやりたかったのに⋯⋯」

「え? え? え?」


 いきなり、オスカーとウラノスが旧知の間柄のようなフランクな態度で言葉をかわす。さらには、


「相変わらず性格が歪んでるわね、オスカー? これだからボッチは⋯⋯」

「おい、マリー! お前、もう少し言葉選べ!」


 シスター・マリーもオスカーとフランクな感じで話している。


「えっと⋯⋯どゆこと?」


 すると、オスカーが淡々と答える。



********************



「学生時代の友人?」

「はい。ウラノスとマリーとは『ノルンシュタイン貴族学院生時代』の同級生です」

「ノルンシュタイン貴族学院?」

「ええ。王族や領主貴族含めたすべての貴族の子供達が通う学院です」


 オスカーの話によると、ノルンシュタイン大陸中の子供達が通う教育機関らしい。入学は13歳からで15歳までの3年間を通うとのこと。


「我々貴族の子供たちは、その貴族学院で貴族としての礼節から領主経営、その他様々な教養をこの貴族学院の3年間で学ぶんだよ」

「へぇ〜そうなんですね」


 うわぁ、すげえ大変そう。まー俺は貴族じゃないから全くの他人事であるけどね。


「もしかして、興味あるのか⋯⋯」

「滅相もありません」


 被せ気味に否定した。秒で否定した。


「⋯⋯そうか。リオ君が入学したら面白いことになりそうだから、ぜひ貴族学院に通って欲しいんだけどね。何だったら私の伝手で『底位貴族ボトムノーブル』の身分で入学させることも可能だが⋯⋯」

「全力で拒否します!」


 おい、やめろ! あ、ニヤニヤしてる!⋯⋯オスカーさん、本気っぽい?!


 マジでオスカーさんのこのやんちゃ具合は大概にして欲しい⋯⋯。


「わかった、わかった。そうムキにならないでよ。冗談だから」

「冗談に聞こえないのですから全力で否定するんですよ?」

「あははは」


 大人が笑ってごまかす。これほど信用ないものはない。


 とりあえず、「この話はこれで終わりそうだな」と俺がホッとしていたところに、


「オスカー、そしてリオ⋯⋯。正直、今の話まんざら冗談ではないわよ?」

「「え⋯⋯?」」


 シスター・マリーがそんなことを言い出した。そして、それを聞いた俺とオスカーさんは「どゆこと?」とポカーン顔となる。さらには、


「わからないか? 正直、商談が今のままなら・・・・・・⋯⋯の話だがな?」


 ウラノスまでもそんな不穏なことを言ってきた。すると、ここでオスカーさんが二人の話を聞いて何かに気づいたようで、


「⋯⋯なるほど、そうですね。確かにこのままだと、リオ君が『貴族になる話』はまんざら冗談じゃ済まされない話かもしれないですね」


 と、神妙な面持ちで呟く。


「え? え?」


 そんな3人の話を聞いて、一人⋯⋯オロオロとしたのは言うまでもない。



********************



「ねぇ、ペトラ⋯⋯シスター・マリーとリオたちはどんな話をしてるの?」

「さぁ、何だろう? 何か貴族がどうとか言ってたみたいだけど⋯⋯ケビンはわかる?」

「⋯⋯さあな」


 今、俺たちは商業ギルド長の部屋の前にある椅子に座ってリオたちの話が終わるまで待機していた。しかし、俺は中の話が聞きたかったのでドアの近くに腰掛け、リオたちの話を少しでも聞こうとずっと耳を澄ましていた。


 はっきりとは聞こえず、ところどころしか聞こえなかったが、だが、オスカーさんの話やシスター・マリーが話している内容はおおかた聞き取ることはできた。ただ、その内容は俺の想像以上に大きい話・・・・になっていることに俺は一人ドキドキしていた。


 そんなときに、ペトラやミトリから横でいろいろと中の様子について質問されたが、とりあえず、まだよくわかっていないこともあるので、二人には「⋯⋯さあな」とはぐらかした。


 それにしても、今オスカーさんが冗談まじりに言っていた『リオが貴族になるという話』が本当にそうなる可能性があるということを言っていた。


 詳しくはわからないが、しかし、さっきオスカーさんが「無属性魔力ですか?!」と驚いていたからもしかしたら、それが関係しているのかもしれないと俺は当たりをつけていた。


 とはいえ、まだ具体的な話はこれからのようだ。


 やべえ、すっげードキドキしてきたっ!?



 そうして、俺はペトラとミトリの時折聞いてくる質問をはぐらかしながら、部屋で交わされている言葉を一言一句漏らさぬよう、さらに耳を澄ますべく神経を集中させた。





********************


【毎日12時更新】

 明日もまたお楽しみください。

 あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。


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https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


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