第27話027「殺菌の検証のようです」
「よし、じゃあやってみろ!」
「ん⋯⋯!」
俺はウラノスが言った通りに、魔石を持つ右手に体内にある魔力を流していく。
「お、おおお⋯⋯何か、体に中にある
さっきウラノスが言った通り、体内にある魔力を右手に流そうと意識した瞬間、どんどんその右手に魔力っぽいのが流れていくのを感じた。すると、
「あ! 今度は魔石のほうに魔力が⋯⋯吸われて⋯⋯いく⋯⋯!」
すると、これもウラノスの言った通り、右手に流れていた魔力が今度はどんどん魔石に吸われていく⋯⋯。そして、
「あ! 魔石がうっすら⋯⋯何だろう⋯⋯淡い虹色?」
そう、魔石に魔力が流れていくと、その魔力の色なのか淡い虹色に染まっていく。
「この『淡い虹色』が無属性の魔力の色だ。ちなみに俺も実はこれまで数回しか見たことないけどな」
「え? そうなの?」
「ああ。なんせ無属性魔力を持った奴なんてかなり稀だからな」
「へぇ〜」
そんなこんなで、2つの魔石に魔力が十分貯まったのでそれを『卵殺菌用魔道具』の魔石をセットするところに置く。
「よし、これでおそらく動くだろう。じゃあマリー、卵を魔道具の中に⋯⋯」
「準備オッケー!」
ウラノスが指示する前にシスター・マリーはすでに魔道具の中に持ってきた10個の卵を並び終わっていた。
「抜かりはないわ」
「どんだけ、生卵に興味あんだよ!」
「⋯⋯」
正直、俺もウラノスと同じ思いでシスター・マリーに心の中でツッコんでいた。
いつもは優しくてお淑やかな感じだが、こと自身の趣味趣向となると一気に『ポンコツ化』するシスター・マリーがそこにいた。
その後、俺は設計書を見ながら卵殺菌用魔道具を稼働させる。
「じゃあ、あとはレバーを下にすれば魔道具が密閉されると同時に魔石から魔力が流れて動くみたいだから⋯⋯早速やってみるよ」
「うむ、慎重にな」
俺は勢いよくレバーを下に降ろした。すると、
ガコン。ウィンウィンウィンウィンウィン⋯⋯!
「「「おお、動いた!」」」
卵殺菌用魔道具が動き出すと3人ともがちょっとした感動の声を上げた。
ちなみに、設計書によるとこの卵殺菌用魔道具は「卵を高速振動させることで完全殺菌をさせている」という説明書があった。ただ、「どうして振動で殺菌ができるの?」という仕組みについての説明などは特に書いていなかった。
「こまけぇこたぁいいんだよ!!」というスタンスのようだ。素晴らしい。
ウィンウィンウィンウィンウィン⋯⋯⋯⋯プシュー、ガコン!
それから10分くらいしたところで魔道具が停止した。
「お、終わったようだ」
俺は魔道具が完全に停止しているのを確認してから蓋を開けた。
「見た感じ、特に変わったところはない⋯⋯かな」
中にある卵は入れる前と後とで特に変わった様子はないようだった。
「殺菌⋯⋯できているのか?」
「さ、さあ⋯⋯。俺だって初めてのことだから殺菌できているかどうかはわから⋯⋯」
コンコンコン⋯⋯パク⋯⋯ゴクン!
「「っ!!!!」」
俺とウラノスで卵の殺菌ができているかどうかの話をしている横で、シスター・マリーが卵に手を伸ばすや否や、パクリと生卵を口の中に入れた⋯⋯口の中に入れたぁぁぁぁ!!!!
「う〜ん、そのままだとドロっとしているだけ特に味はないのね」
「なっ⋯⋯ななな、何やってんすか、シスター・マリーっ!!!!」
「お、おい、マリー! 何をやってる!! まだ、この卵が殺菌できたかどうかわからないんだぞっ?! それをいきなり口に入れるなんて何考えてんだっ!!!!」
俺とウラノスがシスター・マリーの軽はずみな行動にツッコミを入れると、
「どうせ、殺菌したかどうかなんて食べてみないとわからないでしょ? だから、試しただけじゃない。何か問題でも?」
「そ、そりゃそうですけど⋯⋯そんなことして、もしお腹壊したりでもしたらどうするんですか!」
「そん時はそん時よ。それに個人的に私はリオの発明を心の底から信頼しているんだから大丈夫よ」
「え⋯⋯?」
シスター・マリーからの思わぬベタ褒めという『不意打ち』に、クリティカルヒットして顔を赤くしながら固まる俺(※童貞乙)。
「はぁぁぁぁぁぁぁ⋯⋯本っ当に相変わらずだな、マリーは」
「お褒めの言葉ありがとう、ウラノス」
ウラノスの皮肉にもどこ吹く風のシスター・マリー。何か『肝っ玉かーちゃん』という頼りがいしかなかった。男前である。女だけど。
しかし、そんな女性一人に『実験』をさせるわけにはいかない。ということで、
コンコンコン⋯⋯パク⋯⋯ゴクン!
コンコンコン⋯⋯パク⋯⋯ゴクン!
俺とウラノスも一緒に生卵を中身を丸呑みした。
ていうか、日本にいた時でも生卵を飲むなんてことしなかったのだが⋯⋯。ちなみに、生卵の丸呑みなんて想像通り、美味しいということもなく、むしろ「うぇ〜、ドロリという
「とりあえず、1日様子を見て皆の体調に特に異常がなければ殺菌はうまくいったと判断しましょう」
とシスター・マリーの言葉に俺とウラノスも同意し、この日は帰った。
そして、それから2日後——、
「どうやら問題ないようね! それじゃあ、今日はいよいよリオの『マヨネーズ』⋯⋯だっけ? それの試食会をしましょう!!」
2日前、シスター・マリーはウラノスに「今度は孤児院に来なさい」と指示していたので、今、ウラノスは孤児院の院長室に来ていた。
「⋯⋯なるほど。マリーは殺菌は問題ないと始めから自信を持っていたから、今日はその『マヨネーズ』という商品の試食会を計画していたわけか」
「そうよ。だって、リオの発明品に私は絶大の信頼を置いているもの。リオはすごいのよ!」
と、シスター・マリーが「ふんす!」とドヤ顔で胸を張った(無い胸とは言ってはいけない、いいね?)。
ちなみに、俺はそんなシスター・マリーの不意打ちに、またもや顔を赤くしながら横で硬直していた(※童貞乙)。
「それじゃ、今日は『マヨネーズ試食会』という名のパーティーをみんなで楽しみましょ!」
シスター・マリーの満面の笑顔がキラキラ光っていた。
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【毎日12時更新】
明日もまたお楽しみください。
あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
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