第25話025「魔道具職人は度肝を抜かれたようです」



「おい、まだ着かねーのか! 子供のくせにこんな森の奥まで入って⋯⋯森の入口付近ならまだしも、こんな奥まで行けば魔物がいることもあるんだぞ! 死にてーのか!!」


 と、ウラノスが喧嘩腰に声をかけてくる。


「⋯⋯もうすぐそこですから、大人しく着いてきてください。全く⋯⋯これだから老害は」

「ああっ!? 今、お前老害っつったか! 俺はマリーと同じ33だぞ!」


 ゴン!


「あだっ!?」

「マリーと同じ⋯⋯は余計よ?」

「ひぇ!? わ、悪ぃ⋯⋯」


 ウラノスがシスター・マリーの地雷を踏んで見事玉砕した。いい気味である。


「ていうか、リオ! あんたもいい加減ウラノスに煽るようなことを言うのはやめなさい。一応・・年上なんですからね!」

「! ご、ごめんなさい⋯⋯」


 何か、ウラノスのとばっちりを受けた。⋯⋯解せぬ。


「いや一応って⋯⋯」

「ウラノスもおだまり! いちいち、私にもリオにもつっかかってくんじゃないわよ! もうちょっと大人なんだからシャンとしなさいよ!」

「⋯⋯わ、わかったよ」


 とまあ、こんな感じで険悪ピクニックを各々が楽しんでいた。



********************



「ここです」


 それから、しばらくして『卵殺菌用魔道具』を隠した場所へとやってきた。


「こ、これは⋯⋯っ!?」


 ウラノスが『卵殺菌用魔道具』を見るや否や、魔道具へと駆け出す。


「な、なんじゃ、こりゃ? ほほぉ〜⋯⋯なるほど。鍋の蓋を開けるとこうなっているのか。で、ここに何かを入れる⋯⋯置くのか?」


 ウラノスは俺らのことをすっかり忘れて魔道具に夢中になっていた。


「お、おい、小僧!」

「リオ」

「リオ! こりゃ、何だ!」

「えっと⋯⋯卵の菌を殺菌する魔道具かな」

「卵の⋯⋯殺菌? ま、まさか、卵を焼かずにそのままの状態で殺菌すると言っているのか?」

「さすが! 察しがいいね」

「バ、バカな⋯⋯そんなことが可能なわけ⋯⋯」

「あ、でも、今のままだと動かないよ。魔石が無いからね」

「魔石なら問題ない。俺が持ってる」


 そう言って、ウラノスが魔石を見せた。


「それにしても、この魔道具⋯⋯本当にお前が作ったのか?」

「ああ、そうだ」

「むぅ、にわかには信じられんが⋯⋯。これがマリーが言ってた魔道具だな?」

「ええ、そうよ」

「⋯⋯そうか」


 そう言うと、ウラノスが俺のほうへと歩み寄ってきた。そして、


 スッ。


「これまでの発言⋯⋯申し訳なかった」

「え?!」

「ウラノス!」


 ウラノスが深々と頭を下げる。


「正直、この魔道具を見るまでは信じられなかったが、しかし、目の前でその魔道具を見て考えを改めたよ。本当に申し訳なかった」

「い、いや、別に⋯⋯わかってくれたのなら俺も⋯⋯特には⋯⋯」

「そうか。じゃあ、許しくれるか?」

「あ、ああ」

「ありがとう!」


 そう言って、ウラノスが握手を求めてきたので俺もそれに応じる。


「よし! それじゃあ、早速この魔道具についていろいろと教えてくれ!!(ニッ)」

「あ! ウラノス⋯⋯お前、それが聞きたくてあれだけしおらしい態度を⋯⋯」

「いやいや、そんなことないぞ! ちゃんとお前に対して悪いと思って謝ったのは本当だ!⋯⋯まぁ、魔道具のことをさっさと教えて欲しかったというのが本音だが(ボソ)」

「⋯⋯おい、聞こえてるぞ?」

「まあまあ、いいじゃねーか、リオ!」


 まったく調子のいいおっさんである。


 とはいえ、ウラノスは気楽に話せるし、話してて楽しいので俺もそれで問題ないんだけどね。



********************



 その後、魔道具の説明をしたあと「じゃあ、実際に稼働させよう」ということとなり、シスター・マリーに卵を10個ほど持ってきてもらい、あとは魔石へ魔力を込める話となった。


「リオ、この魔道具は何属性で動くんだ?」

「えーと、無属性かな。あ、そういえば、これ見せるの忘れてたよ」


 そう言って、リオのスキルで出てきた設計書をウラノスに渡す。


「こ、これはっ?!」

「うん。この『卵殺菌用魔道具』の設計書だよ。その中に魔力の属性とか、あと、マヨネーズの調合の仕方とか、マヨネーズ作りに必要なことが全部載っているんだ」

「いや、これを先に見せろよ!! それにしても、このこれから作ろうとしているマヨネーズというのは面白いな。どんな味なのか楽しみだ⋯⋯」

「ここにあるよ」

「うぉ?! なんだ、これは!!」


 俺はオリジナルのマヨネーズ⋯⋯プラスチックのチューブに入った日本製のマヨネーズを見せる。


「な、何の素材だ、こりゃ⋯⋯?」

「あー、えっと⋯⋯うーん⋯⋯」


 俺は、今さらだがオリジナルを見せてちょっと後悔した。というのも、オリジナルを見せるということは「これ何?」と言われるのは関の山だからだ。


「つい⋯⋯油断してしまったな」


 そう言って、俺はシスター・マリーに「どうしよう?」という目線を向ける。


「いいわよ、話しても。ウラノスは大丈夫だから」


 シスター・マリーが俺の視線に対して即答した。どうやらウラノスはよっぽどシスター・マリーからの信用が厚いようだ。




 というわけで、俺はウラノスにスキルの話をした。





********************


【毎日12時更新】

 明日もまたお楽しみください。

 あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330655156379837

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