第23話023「神殿のもう1つの顔と魔石の話のようです」



「スキル持ちの⋯⋯収集?」

「そう」


 シスター・マリーの口から『神殿のもう1つの顔』ということで『スキル持ちの収集』という不穏ワードが飛び出した。⋯⋯何、それ怖い。


「そのままの意味よ。スキル持ちの人を見つけたら片っ端から神殿に連れて行って監禁させるの」

「⋯⋯Oh」


 思わず、英語が出るほど引いた。


「だから、神殿にバレないようにって何度も言ってたのよ」

「はい、その節は本当にありがとうございました」


 俺は心の底からシスター・マリーに感謝の意を伝える。


「心配しないで。リオのことは私が絶対に守るから!」


 そして、この男前である。


「ちなみに、リオのような無属性の⋯⋯しかも生産スキルは『金のなる木』のようなスキルだから、神殿は喉から手が出るほど欲しいスキルであることは間違いないわ」

「あ、あの⋯⋯そんな怖いこと言うのは⋯⋯やめて⋯⋯」

「あ、ごめん、リオ! そんな怖がらせるつもりで言ったんじゃないのよ!」


 シスター・マリーのこの上げて落とすは彼女のお家芸なんだけど、さすがに今回ばかりは精神的にかなりしんどかった。ライフはゼロよ⋯⋯。


「と、とにかくっ!? あまり、リオのスキルこのことは私以外には誰にも言っちゃダメよ。あと、人に見られるのも絶対にダメ。⋯⋯まーでも、リオはその危険性はちゃんとわかっているようだからこれ以上は説明は不要のようね」

「はい。十分心得ております」



 それは、もう心の底から。



********************



「さて、それじゃあ話を戻すけど⋯⋯リオはスキルで出現した『卵殺菌用魔道具』ってものを稼働させるために魔石が欲しいのよね?」

「は、はい。ただ、魔石のことがよくわからなくて⋯⋯」

「なるほど。ちなみにリオは魔石のことはどのくらい知ってるの?」

「えーと⋯⋯魔石は魔力を貯める入れ物・容器のようなイメージ⋯⋯ですかね」

「うんうん、だいたいは合ってるわ。あとは構成元素エレメントごとに使い分けるとか⋯⋯そういうところかしらね」

構成元素エレメントごとに使い分け⋯⋯?」

「そう。魔石はリオが言った通り、魔力を入れて使用するものだけど、魔石に入れる魔力は構成元素エレメント⋯⋯いわゆる『属性』は1種類しか入れることができないの」

「⋯⋯つまり、魔石に入れる魔力の属性は統一しないといけないということですか」

「そうよ。ただし、魔石自体に種類とかはないから、どの属性魔力でも魔石に入れることは可能よ」

「なるほど。魔石は属性ごとに分かれているわけではないんですね。それはありがたい」


 魔石も属性ごとに異なるとかだったら、いちいち属性にあった魔石を探すのは相当面倒だっただろうな。


「そこまでわかっていれば問題ないわ。じゃあ、魔石への魔力注入だけど⋯⋯やったことないわよね?」

「はい」

「では、私が教えましょう。ちょっとそこで待っててください」


 そう言って、シスター・マリーが院長室へ入っていった。


——3分後


「おまたせ。これが⋯⋯魔石よ」

「おお⋯⋯!」


 どうやら、シスター・マリーは院長室から魔石を持ってきてくれたようだ。そのシスター・マリーの手元にある魔石の色は⋯⋯透明だった。


「魔石って、透明なんですね」

「そうよ。魔力を込めれば魔石はその属性の色に染まるわ」

「へぇ〜!」


 何だか面白そう! 早く見てみたい。


「ここじゃ、まずいわね。どこか、子供達に見られないところがないかしら⋯⋯」

「ああ、それなら⋯⋯」


 と、俺はいつもの森の中を案内した。



********************



「これが⋯⋯リオのスキルで出現した、例の『卵殺菌用魔道具』ね⋯⋯」


 いつもの森へと移動した俺とシスター・マリー。すると、シスター・マリーがすぐに魔道具へと足を向けていろいろ触っていた。


「何かわかりますか?」

「そうねぇ〜、私も魔道具にはそこまで詳しくないからあまりわからないけど⋯⋯でも、この魔道具がかなり精巧に作られていることだけはわかるわ。正直、これだけでも・・・・・・すごい価値があるんじゃないかしら」

「え?」

「いや、だから⋯⋯この『卵殺菌用魔道具』って、これ単体だけでもすごい魔道具よ? だって、世の中に『卵殺菌用魔道具』なんてないんだから」

「⋯⋯あ!」


 たしかに! 今までずっと『マヨネーズの商品化』ばかり考えていたから、そんなこと思いもしなかったが、よくよく考えたら⋯⋯この魔道具すごいじゃないか?!⋯⋯『盲点』だった。


「そっか⋯⋯そうだよ⋯⋯。この世界では卵を生で食べるなんてことしないじゃんか。殺菌されていない生卵なんて食べたら『食中毒待ったなし!』だもんな」

「そうよ。だから、その『まよねぇず』⋯⋯というものを作るのも良いけど、それとは別にこの魔道具を売るのもアリだと思うわ。この魔道具はリオのスキルで量産はできるの?」

「⋯⋯いや、それはできないんだ、シスター・マリー。ちゃんとこの魔道具に使われている素材を使って作る必要がある」

「そう⋯⋯つまり、魔道具の職人さんが必要ってことね?」

「うん」

「それなら、紹介できる人がいるわ」

「えっ?! 魔道具の職人さんを?」

「ええ。でも、ちょっと小難しい人だから断られるかもだけど⋯⋯。でも、話だけなら聞いてもらえるかもだけど⋯⋯どう?」


 そんなの断ることができるだろうか。いやできない。


「ぜひ! 紹介してください、シスター・マリーっ!!」





********************


【毎日12時更新】

 明日もまたお楽しみください。

 あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330655156379837

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