第22話022「神殿の話のようです」



「私は、元々は神殿の総本部にいました」

「えっ!? し、神殿⋯⋯総本部っ!!」

「ええ。まー驚くのも無理はないわよね」

「そ、そりゃあ⋯⋯」


 この世界には『神殿』というこの世界の創造主の教えを説いている組織がある。いわゆる『宗教組織』だ。


 そして、その神殿の拠点は世界各地にあるが、その中でも王都にある『神殿総本部』は、その名の通り神殿の総本部であり、そこには神殿関係者のトップである『教皇』やその他の側近がいるなど⋯⋯いわゆる『神殿の中の神殿』という場所なのである。


 なので、シスター・マリーの「神殿総本部にいた」という発言は、少なくとも『タダ者ではない』ということを意味しているのは明らかなのだ。


「私は、総本部ではかなり疎まれていてね、それで色々あって、教皇様自らが私をこのタスク地区への左遷を指示したの」

「教皇自ら⋯⋯それって、普通じゃないの?」

「そうね。本来私のような神殿関係者で一番下のステージ・・・・である『シスター』であればその上の神官様が⋯⋯あ、『ステージ』っていうのは神殿の『位』のことね。貴族でいう上位貴族ハイノーブルとか中位貴族ミドルノーブルみたいなのと一緒」

「⋯⋯なるほどです」


 要するに、神殿関係者内でも『身分』が存在すると。


 ていうか、『ステージ』ってネッ○ワークビジネスかよ。


「元々、神殿は古代の神々⋯⋯この世界を作った創造神『万象一系神バンショウイッケイノカミ』様と、その下で創造神様を支える七柱神ナナハシラノカミ様たちが残したとされる『カタカムナ聖典』を教義としている組織よ」

「⋯⋯うん」


 今、シスター・マリーから出た神様の名前⋯⋯、もちろん俺も神殿については勉強していたので知っていたが、それにしても、こうして改めて神様の名前や聖典の名前を聞くといろいろと思うところというか⋯⋯『ツッコミどころ』が満載なのだが、ここではあえてスルーさせていただく。


「でも、現在の神殿は教皇始め、その下の筆頭枢機卿や枢機卿、司祭⋯⋯また、一部の王族や貴族らも含めて、神殿の教えである『カタカムナ聖典』の教義を⋯⋯⋯⋯『自分たちに都合の良い解釈』をして広めているのが現状なの」

「⋯⋯うん」


 知ってた。


 この世界の歴史の本や政治の本を読めば、すぐにそのことは理解できた。そのくらい⋯⋯いわゆる『神殿の私物化』は浸透しているようだった。


 つまり、この世界の『クソったれ事案』の1つである。


 それにしても、前世の地球もそうだったが、権力持った人間はどうしてこう、ろくでもないことしか考えないのか⋯⋯まるで理解できん。


「ちなみに、私が左遷となった原因は、そんな私物化している神殿の現体制を大っぴらに批判していたからなの」

「ええっ?! 神殿の総本部で⋯⋯ですか?」

「ええ」

「よ、よく、破門になりませんでしたね?」

「まーそう思うわよね。でも、私が破門にならなかったのは、私の⋯⋯亡くなった『父』の存在があったからなんだけどね」

「シスター・マリーの⋯⋯お父さん?」

「ええ。私の父は、生前は⋯⋯『首席枢機卿』だったの」

「しゅっ!? 首席枢機卿⋯⋯っ!!!!」


 おいおいおい⋯⋯『首席枢機卿』って、確か神殿内のナンバー1である教皇の次に偉い人じゃなかったっけ?!


「そ、それって、神殿のナンバー2ってことですよね?」

「あら? よく知ってるわね。その通りよ」

「いやいやいや⋯⋯さすがに、それくらい誰でも知っていますよ。あ⋯⋯! だから、シスター・マリーは神殿総本部でも大っぴらに批判できていたってこと?」

「すごい! 今の話だけですぐにそこまで気づくなんて⋯⋯さすがね」

「い、いや、別にそれくらいは誰でも気づけると思うけど⋯⋯」

「ふふ⋯⋯謙遜しちゃって」

「いや、そんな⋯⋯本当に俺は⋯⋯」

「あーいいの、いいの。気にしないで」

「は、はぁ⋯⋯」


 何というか、シスター・マリーは俺をどう評価しているのだろう? 何やら評価が高そうな感じを受けるが⋯⋯。嬉しいけど、過度の期待はただのプレッシャーにしかならないので勘弁してほしい。



********************



「で、私は司祭はおろか、枢機卿から果ては首席枢機卿にまで批判をしていたから、結局、最後は教皇様が出てきて、直接左遷を言い渡されたってわけなの」


 と、あっけらかんと説明するシスター・マリーであったが、話の内容はだいぶぶっ飛んだ内容である。これ、神殿関係者が聞いたら卒倒するだろうな。


「だ、だいぶ、やんちゃしたんですね」

「まーね。でも、実際マジメな話をすると、権力者たちの『神殿の私物化』はかなり深刻な状態なの。これが原因で王族やその関係者の貴族が有利になる法律ができたりしたの。あの『奴隷制度』もこの『神殿の私物化』がもたらした制度だからね」

「⋯⋯はい。そうですね」


 そう、この世界には『生活奴隷』や『犯罪奴隷』といった『奴隷制度』が存在する。それらは貧民よりも扱いは厳しい。なんせ『奴隷』なので自分で判断して動く自由が圧倒的に少ないのだ。


 ちなみに、『生活奴隷』とは『借金が払えなかった人などが対象となる奴隷』であり、『犯罪奴隷』は読んで字の如く『犯罪を犯した奴隷』のことであり、生活奴隷よりもより自由が制限されるらしい。


「そして、神殿には『もう1つの顔』があるの。それが、今回のメインとなるお話⋯⋯『スキル持ちの収集』よ」

「スキル持ちの⋯⋯収集?」




 メインの話はだいぶ穏やかではないようだ。





********************


【毎日12時更新】

 明日もまたお楽しみください。

 あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330655156379837

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