第15話015「領都の商業ギルドへ行くようです」
——次の日
「うぉぉ〜! すげえぇぇ! ここが領都かぁぁぁ!!!!」
「人がいっぱいいるね! こんなに人がいるの初めて見た!」
「おいおいお前ら、ちょっとはしゃぎ過ぎだぞ。そんなキョロキョロすんなよ、恥ずかしい!」
「⋯⋯」
俺たちは今、セイントファイン小領の領都にいた。ここに来たのは昨日ケビンが言っていた偽造品の話から始まり、商業ギルドへ商品登録の話を聞きに行こうということになり今に至る。
この領都の名は『領都セイファン』といい、これは領地を治めるセイントファイン家の家名をもじった名前らしく、聞くと、どの領地の領都もこういった家名をもじったものが多いらしい。
おそらく、覚えられやすいとか、領主の家名があることで権威みたいなものもあるのかもしれない。いずれにしても覚えやすいので助かる。
さて、そんな領都セイファンに足を運んでいるのは、俺以外にペトラ、ミトリ、そして、この商業ギルドに行くきっかけとなった偽造品の話を持ってきたケビンだ。
ちなみに、ケビンの歳は俺とペトラの1つ下にあたるミトリと同い年である。⋯⋯が、性格は少し『おすましさん』というか、妙に大人ぶっている感じなので1こ上の俺やペトラとも同い年のように接する。
とはいえ、俺からすれば『背伸び』をしているように見えるので、そんなケビンは『背伸びインテリ』って感じの可愛い弟分である。
元々、領都へは一人で行く予定だったが、このパクリ商品の話を持ってきたケビンが「俺も行きたい!」と言い、その話をペトラとミトリの自慢のように話したことで「俺も行きたい!」「私も行くぅぅ!」となって今に至る。
そして、領都セイファンについた今、3人は各々で領都の街並みに感動していた。ちなみに、冷静に振る舞うケビンもそれは所詮『背伸びした振る舞い』であり、ペトラとミトリに気づかれないところで「ふわぁ〜! ふわぁ〜! 領都すげぇぇぇ!!」と年相応の反応を見せていた。
そんな、領都セイファンの中に入ると煉瓦造りの家だったり木造の家が多く見られた。おそらく、平民の家だろう。地面は石畳で作られているっぽい。なので、タスク地区のような地面が土とかではないので割と清潔感がある。
また、子供達が騒いでいたように街はたくさんの人々が埋め尽くしていたので馬車などは見かけない。たぶん、馬車は通れないのか、どこか別の馬車用の道があるのかもしれない。
街の雰囲気は『市場』のような感じで、人が通る道の周囲にはたくさんの屋台が並んでいる。その屋台には果物や野菜、肉といった食料品から、日用品で使う金物、あと指輪やネックレスといったアクセサリーのようなものも売っている。とにかく、いろんな店が並んでいた。
領都に入ったばかりではあるが、その時点で俺たちの住むタスク村と大きく違うのがすぐに分かる。タスク地区しか知らない3人からすれば驚きの連続なのは当然であり、あれだけテンションが上がるのも無理ないのである。
もちろん俺も。
とはいえ、精神年齢は25歳の俺(山田三郎)だし、前世の日本の街を知っているので物珍しさの感動はあっても街の規模だったり人の多さなどには特に反応するほどではなかった。
おかげで、3人には「意外と落ち着いているな、リオの奴。すげぇ⋯⋯」とちょっと尊敬の眼差しっぽいものを向けられていた。別にそのつもりはなかったのだが、それはそれで俺の孤児院の子供内での
そんなこんなで、領都を歩いているといよいよ目的地に着いた。
「ここが⋯⋯商業ギルドか」
********************
「すみません、商品登録について聞きたいことがあって来たのですが⋯⋯」
商業ギルドの中に入ると、すぐに受付っぽいところへ足を運んで声をかけた。ちなみに、建物の中に入るとすぐに受付っぽいものが5〜6個設けられているが、それらは全部埋まっていた。
それだけ、この商業ギルドを利用する人が多いのだろうということがわかる。
「えっと⋯⋯大人の人はいるかな?」
10代っぽい若い受付嬢が少し困った顔をしながら聞いてくる。
「いえ、僕たちだけです。ダメでしょうか?」
「う〜ん、ダメってことはないけど⋯⋯でも、子供ではちょっと難しい話だし、ちゃんと理解できる大人の人とかがいないと話ができないっていうか⋯⋯」
さもありなん。
しかし、ここにはシスター・マリーは来ていないので、どうにかして商品登録の担当者に取り次いでもらわないと来た意味がなくなる。ということで、
「大丈夫です。私は8歳ですが今日こちらに伺ったのは私が開発した商品の商品登録とその製造方法の技術登録の件なので、当事者である私が対応させていただきたいのですがいかがでしょう?」
「(ポカーン)」
と、平民の大人でもなかなか扱えない言葉を並べて『子供らしくないムーブ』をかましたった。すると、
「そ、そうですか。わかりました。それでは担当者をお呼びいたしますので少々お待ちください」
「わかりました」
そう言うと、受付嬢が慌てて奥へと走っていった。とりあえず、担当者を呼んでもらえるようなのでホッとする。
「な、なんだ、今の喋り方⋯⋯まるで、大人の貴族みたいだったぞ、リオ!」
「うんうん、何かすごかったよ、リオ!」
「⋯⋯やるじゃん、リオ兄」
どうやら、受付嬢への『子供らしくないムーブ』は3人にも伝播していたようだ。
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【毎日12時更新】
明日もまたお楽しみください。
あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。
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