第13話013「販路拡大を目指すようです」
——1ヶ月後
何と『ヘチウマたわし』が予想以上に売れまくって、結果的に初月の売上が『金貨20枚(大金貨2枚)』となった。孤児院の運営費として毎月金貨10枚(大金貨1枚)が必要だが、それを初月でクリアした。しかも倍近い稼ぎだった。
ちなみに、この売上は『何でも屋の仕事依頼の利益』が3割で、『ヘチウマたわしの販売利益』が7割だった。つまり、『ヘチウマたわし』が予想以上に売れたのが大きかった。
この結果に皆が喜んだ。しかし、俺はすでに危機感を募らせていた。
「う〜む、ヘチウマたわしがこんなすぐに売れたのは嬉しい誤算だ。しかし、このままずっと同じように売れるのは難しいだろうな⋯⋯」
理由は、簡単に作れるから。つまり『自作しやすい』ということ。
「正直、森に行ってヘチウマ刈ってきて乾燥させればいいだけの簡単なお仕事だからな〜」
もちろん、すぐに売れなくなるということはないだろう。少なくともあと半年くらいは大丈夫だと思う。⋯⋯が、逆を言えば『いずれ売れなくなるのは確実』ということである。
「まー、あくまで、
そう、今の話はあくまでこの『村』だけでの販売なら、である。
「よし、この勢いそのまま販路を広げるか。となれば、次に狙うのは⋯⋯タスク中央街!」
いわゆる『販路拡大』である。ちなみに『タスク中央街』ってのは、地区の中で一番栄えている場所のことで『〜中央街』と呼ばれる。つまり、このタスク地区の中で一番人が集まる中心地ということだ。
「まータスク中央街といっても、しょせん小規模の集落⋯⋯村みたいなもんだからな〜。できれば、『領都』までは進出したいよな〜」
『領都』——タスク地区を治めている『セイントファイン小領』の首都のことで、およそ1万人の人口を誇るセイントファイン小領最大の都市だ。日本でいうところの地方都市といったところだ。
「よし、じゃあ、早速明日から行動開始だ!」
——次の日
俺は子供達の半分をタスク中央街に向かわせた。
「さて⋯⋯どうなるかな?」
その日の結果は1件だけの仕事依頼だけで、ヘチウマたわしの注文はなかった。
「まーそんなもんだろう。とりあえずこの1件の仕事の評判が口コミで広まるかどうか⋯⋯だな」
次の日も同じように子供達の半分をタスク中央街へ向かわせる。その次の日も、その次の日も⋯⋯。そして、そんな日が1週間続いた後、
「リ、リオ兄ちゃん!?」
午前の仕事が終わって、孤児院に戻ってきた子供の一人が慌てた様子で俺に声をかけてきた。
「ん? どうした、そんなに慌てて?」
「ヘ、ヘチウマたわしの⋯⋯注文が⋯⋯」
「おお! ついに注文が入ったか!」
「さ、30個⋯⋯30個の大量注文が入ったぁぁぁー!!!!」
その子の話によると、今朝中央街に行くと前日に家の掃除を依頼した人から声をかけられたらしく、「何事か」と思ったら「昨日、掃除で使っていたやつは売り物じゃないのか?」と聞かれたとのこと。
つまり、ヘチウマたわしの注文だったようで、それで「ヘチウマたわしですね、販売していますよ!」と伝えると「それを5個ちょうだい!」と食い気味に言われたとのこと。
しかも、それを見ていた周囲の奥様連中から「私も」「私も」と注文が入り、さらに、それを見た人たちがどんどん集まってきて、気づけばその子の前にはヘチウマたわしを注文しようとする主婦の行列ができるほどだったらしい。
結局、午前中だけでヘチウマたわしの注文が30個⋯⋯と大量注文になったとのことだった。
「す、すごい勢いだ⋯⋯な⋯⋯(ごくり)。よ、よし! それじゃあ、午後は全員タスク中央街に行ってきてくれ! ここは勝負どころだぞ、みんなぁぁーーーっ!!!!」
「「「「「はーーーいっ!!!!」」」」」
俺は「このビッグウェーブを逃す手はない!」と判断し、孤児院キッズ全投入を決断。結果、
「リオ兄ちゃ〜〜ん! 午後は40個以上の注文が入ったよぉぉぉ!!!!」
「いよっしゃああぁぁぁぁっ!!!!」
見事、さらなる大量注文をゲット!
賭けに勝ったのだ!!
そんなタスク中央街で『ヘチウマたわし』が一度売れ出すと、勢いはさらなる拍車をかけ、結果的にこの月の売上は前月の倍以上を記録した。
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「「「「「乾〜杯!」」」」」
当初は、孤児院の寄付が止まりどうしようかと皆が不安を抱えていたが、しかし「何でも屋」を始めようと俺が提案し、さらには俺のスキルで製作した『ヘチウマたわし』を販売するとこれが大ヒットし、ノルマである孤児院の毎月の運営資金である『大金貨1枚』を賄うどころか、その4倍以上の売上を2ヶ月で叩き出した。
大成功である。
それで、今日は社員(孤児院の子供たち)を
普段、牛肉や豚肉が孤児院の食卓に並ぶことはない。あるとしたら、たまに森に仕掛けた罠に引っかかったウサギや猪、あとは子供達が川で採ってきたカエルの肉だったりする。
つまり、子供達は今日生まれて初めて牛や豚の肉を食べるのだ。
「うわぁぁぁ、美味しい! こんなの始めて食べたぁー!」
「うまっ! うまっ! うまっ!」
「はうぅぅ! お肉うま〜い!」
「⋯⋯そうか」
俺は皆が「美味しい、美味しい」と一生懸命食べているその様子を見てニコッと笑顔を見せるも、子供たちにバレないよう、影でフッとため息を漏らす。
(今日のテーブルに並んでいる料理⋯⋯俺たちにとっちゃ豪勢な食事だが、貴族や少し良いところの平民の家なら普通に出てくる料理⋯⋯なんだよなぁ)
この世界で『一番身分差を感じる代表例』がまさにこの食事内容である。
(考えたら、
いまさらな感想を漏らすリオ(山田三郎)であった。
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【毎日12時更新】
明日もまたお楽しみください。
あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
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