第12話012「シスター・マリーのスキルのようです」



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名前:シスター・マリー

年齢:24歳

身体能力:57

魔力:121

魔法:治癒ヒール異常治癒デトクス

スキル:天啓(光)


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「で、出た⋯⋯俺の脳内に⋯⋯」

「ん? どうしたのですか、リオ?」

「え? シスター・マリーってスキル持ちなの⋯⋯!」

「っ!? ど、どうして、それを⋯⋯!」

「あっ!?」


 俺は、シスター・マリーがスキルを持っているということをつい言葉に出していたようで、それをシスター・マリーに気づかれてしまい、慌てて口を閉じ、両手で塞いだが、


「手遅れよ、リオ。それよりも、あなたどうして、私がスキルを持っていることをわかったの?」

「え? いや、あの⋯⋯」


 ど、どどど、どうしようっ!? 言っていいのか? この他人のステータスボードが見れる能力のことを⋯⋯。


 でも、シスター・マリーは俺にとっては母親みたいなものだ。この異世界で俺の親代わりとしてここまで暖かくのびのびと育ててくれた。


 この人に言わないなんて選択肢⋯⋯⋯⋯無いな。


「実は、俺には自分の能力だけじゃなく、他人の能力も見れる能力があって⋯⋯」

「っ!? リオ⋯⋯!」

「それは、身体能力とか魔力とかスキルとかが見れるんだ⋯⋯。俺はこれを『ステータスボード』って呼んでいるんだけど⋯⋯これが自分のだけでじゃなく他人のものも見れるんだ。とは言っても、他人のも見れるってわかったのは今、シスター・マリーに試してわかったことなんだけど⋯⋯」

「なるほど。だから、私と手をつなぎたいなんて言ったのですね?」

「は、はい。すみませんでした」

「そう⋯⋯」


 すると、シスター・マリーは顎に握り拳を持っていきコンコンしながら上下に頭を揺らしていた。これはシスター・マリーが何か考え事をしている時に無意識に出てくる癖のような仕草だ。


 そんな、仕草がピタリと止まる。


「⋯⋯リオ。あなたのその能力はおそらく『鑑定』の一種よ」

「鑑定⋯⋯!」


 いや、でも、そんなスキルはなかったが⋯⋯。いや、待てよ? もしかして、これも『造型士(無)』のスキルの一つなのか? たしかに『造型士(無)』のスキルは物を作る能力だから、物を観察する『鑑定』のような能力があるのかもしれない。


 そんな、俺がこの鑑定のような能力なのかと考えていると、


『完全鑑定(対象物の情報を見ることができるスキル造型士の能力の一部)』


 というメッセージが響いた。


「うわっ!?」

「えっ! ど、どうしたの、リオ?!」


 突然、頭の中にメッセージが流れてきたので思わず声を上げて驚いてしまった。いかん、いかん。


「あ、すみません。何でもないです⋯⋯ははは」


 シスター・マリーは一瞬、様子を伺うような顔をしたように見えたが、すぐにいつもの柔和な表情に戻ると、


「それにしてもすごいわ、リオ。本来なら神殿でしか確認できないもののはずなのに⋯⋯。ちなみに、あなたがさっき言った『ステータスボード』というのは、神殿では『ステータス』と呼ばれているわ」

「⋯⋯ステータス」


 へ〜、この世界でも『ステータス』って呼ばれているんだ? こんな偶然あるんだな〜⋯⋯って、そんなわけないよな? これ絶対、この世界に俺以外にも『地球』からの転生者か転移者⋯⋯いるよな?


 まー、今はその話について深掘りするのはやめておこう。長くなりそうだから。


「そして、この『ステータス』は神殿の教皇様か司祭様、もしくは神官様しか見れないものなの」

「それって、教皇様や司祭様、神官様はそのステータスが見れるスキルを持っているということなの?」

「そうよ。『鑑定』というスキルです。しかし、このスキルはとても稀有で神殿関係者以外使えるものはいないとされています。なので、もし、リオが私のステータスを今見れたということであれば、その力は決して神殿関係者に見られてはいけません」

「え? なぜですか?」

「もし、リオがステータスを見れるとわかったら、あなたを拘束し、一生神殿に閉じ込め、ステータスを見ることを強要させ続けられるでしょう」

「(ごくり)」


 嘘⋯⋯? 神殿、怖ぁぁぁぁっ?!


「それに、もしかするとリオが始めた『何でも屋』や『ヘチウマたわし』なんかも、神殿関係者に知られるのはあまりよくないでしょう」

「ど、どうして⋯⋯ですか?」

「神殿は『普通とは異なる子供』を見つけると『天孫かもしれない』と目をつけるからです」

「天孫⋯⋯?」


 え?『天孫』⋯⋯って、日本神話や古事記に出ていた『天孫降臨』の天孫のこと言ってる? え? 何で? 何でそんなのがこの異世界に?


「神話の話です。その話はまた今度しますが、とにかく、神殿はその『天孫』を探すのは彼らの大事な『教義』の1つでもあります。なので、目立ちすぎるのは少し危険なの。わかりますか⋯⋯私の言っていることが」

「は、はい⋯⋯」

「よろしい。とにかく、この辺の話はまたいずれしますが、まずは子供達が帰ってきたら、今回の事業やヘチウマたわしなどの発明がすべてリオが発案者だということを誰にも言わないよう言い聞かせておきましょう」

「⋯⋯お願いします」

「リオ⋯⋯あなたは自分が思っている以上に才能豊かな人間よ。でも、それはあなたを苦しめるものにもなりかねないから気をつけなさい」

「は、はい」

「私が必ずあなたを守りますからね!」

「は、はいっ!!」


 シスター・マリーの愛情が込められた熱い言葉に、俺の中についさっきまであった大きな不安が一瞬でかき消され、大きな安心感に包まれた。



********************



 2時間後、子供達が帰ってきた。


 どうやら、午後も2件の依頼があったらしい。どちらも依頼者は掃除の完成度に驚くと同時にとても喜んでくれたらしく、しまいには「今度、みんなにあなたたちのこと宣伝しておくわね!」とまで言われるほど大絶賛だったそうだ。


 しかも、もう1件の依頼者からは「その擦っている道具、売ってないの?」と聞かれたらしく、販売していると伝えたら「5個ちょうだい!」と言われたらしい。


 話によると、すごく使い勝手が良さそうだし、汚れがすごく簡単に落ちるのを見て、親戚にもあげたいから5個も買ってくれたらしい。


「おお! ヘチウマたわしが初日で1件売れたんだ! すごい、すごいっ!!」


 ぶっちゃけ「初日はどうかな〜」と不安だったが予想以上に最高のスタートがきれた。


 ちなみに、今日依頼を受けた子と、ヘチウマたわしを売った子らには褒美として『俺手作り賞状』を授与した。俺は「本当にこんなんでいいのか?」と授与前に再度聞いたが「むしろこれがいい!」と言われ、賞状を受け取った子らはすごい笑顔で喜んでくれた。


 なんだ、ただの天使か。


 それにしても、今日はシスター・マリーに勇気を持ってスキルのことを告白したら、神殿のショッキングなことを聞かされたこともあって、だいぶ精神的に疲れた。


「神殿⋯⋯か。絶対近づかないようにしなきゃな」




 俺は、心にそう誓った。





********************


【毎日12時更新】

 明日もまたお楽しみください。

 あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330655156379837

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