第9話009「スキルで売り物を作るようです」
「俺のスキル『造型士(無)/LV1』で売り物を作る⋯⋯か」
う〜ん、どうなんだろう? ありか? ありなのか?
「いや、ありも何も⋯⋯スキルで作った物が売れるのならガンガン売るでしょう。これ、すなわち自然の摂理アル」
ということで、スキル『造型士』で売り物を作ることを決めた俺氏。あとは、
「あとは、何を作るか⋯⋯か。相手は平民なんだよな〜。だから、あまり高級な物じゃダメだし、普段の生活で使える物とかであれば⋯⋯⋯⋯あっ!」
そこで、さらに俺の脳内にアイデアが降り注いだ。今日の俺、冴えてるぅ〜。
「掃除グッズとかどうだろうか!? 掃除グッズの有用性は『何でも屋』の仕事で評価してもらえれば、それがイコール、宣伝になるからな。これぞ、一石二鳥! 俺って天才!」
ということで、俺はまず売り物とする掃除グッズのオリジナルの具現化から始めた。
********************
「そうだな〜。最初はなるべく材料代が少ないものから⋯⋯だな」
そう言って、俺は思考する。
「あ! あれとかいいじゃん!!」
そうして、すぐに頭の中で掃除グッズが閃いたので、それのオリジナルを早速具現化してみた。
ポポンッ!
「できた!」
出てきたのは『何かの植物を使った丸っこい何か』⋯⋯。
「テテテ、テン⋯⋯! ヘ〜チ〜マ〜た〜わ〜し〜」
どこぞの『ネコ型ロボットえもん』のごとき演出は忘れない。
ということで、俺が閃いたのは『ヘチマたわし』だった。
「設計書はどれどれ⋯⋯⋯⋯おお! すげえ、わかりやすいじゃん!」
設計書を確認してみると、前回のスキル確認で作った『本棚』と同様、ヘチマたわしの作り方が図入りでかなりわかりやすく書かれていた。それに、
「このヘチマがわりの植物⋯⋯『ヘチウマ』もこの森で自然にいっぱい生えているし! これなら、材料費はゼロだ!」
ということで、俺は森からそのヘチウマをいくつか採ってから孤児院に戻った。
********************
「リオ兄ちゃ〜ん!」
ドゴォォン!
「ゴフゥゥゥ! う、うん、今日のタックルはいつもよりちょっと威力マシマシだね、ミトリ」
「だって! リオ兄ちゃん、また私に黙っていなくなったし! 奥さんに黙っていなくなったし!」
「ミトリ? ミトリは俺の奥さんじゃないよね?」
「認めないの? それじゃあ、私との関係はただの遊び?」
「いや、認めないも何も、遊びも何も⋯⋯ミトリは俺の奥さんではな⋯⋯」
「リオぉぉー! お前、いつからミトリと結婚したんだぁぁー!」
「ペ、ペトラ!? い、いや、それは誤解⋯⋯誤解だから! いや、誤解というかそもそもミトリが勝手に⋯⋯」
「⋯⋯そう。私が勝手に妻だと勘違いしてただけだから。リオは悪くないの。私が勝手に⋯⋯本気になっていただけ⋯⋯だから⋯⋯」
ミトリの頬からツツーと涙が⋯⋯。
「お、お前ぇぇぇ! リオぉぉぉー!! ミトリとは遊びだったのかぁぁ!!!!」
「あああああ⋯⋯もう面倒くせぇなぁぁ!!!!」
いつもの寸劇が終わったタイミングで、俺はミトリに院長先生や他の子供たちを食堂に集まるようお願いした。⋯⋯ていうか、ミトリの演技力が上がってる?!
——5分後
ゾロゾロ、ゾロゾロ⋯⋯と、食堂に子供達が集まってきた。
「何〜? どうしたの〜?」
「なんか、リオお兄ちゃんが話があるんだってぇ〜」
「何の話ぃ〜? リオ兄ちゃんとミトリお姉ちゃんの『ドロ沼婚』の話ぃ〜?」
おい、最後のキッズ。『ドロ沼婚』とかやめろ。⋯⋯っていうか、どこでその言葉覚えた?
「リオ」
「シスター・マリー院長先生!」
最後に院長先生がやってきて俺に声を掛ける。
「何か⋯⋯思いついたのね?」
「はい!」
「楽しみにしてるわ」
「まかせてくださいっ!!」
食堂に全員が集まったのを確認した俺は『孤児院でやっているボランティア』をこれからはお金をもらって仕事としてやっていく旨を伝えた。
「そうねぇ〜。たしかに普段、孤児院のボランティアを使っている常連さんから『またボランティアを復活いて欲しい』って、頼まれているけど⋯⋯でも、ボランティア活動にお金を払ってくれるかしら?」
と、院長。ごもっともである。
「それなんだけど⋯⋯ぶっちゃけ、最初は町の人の『同情』を引いて仕事を取ろうと思っているんだ」
「まぁ!」
シスター・マリーは俺のぶっちゃけトークに思わず驚きの声を上げる。
「もちろん、それは最初だけだよ。町の人だって最初だけしかそういった『同情』はしてくれないだろうし⋯⋯。大事なのは再度依頼されることなんだけど、それには『仕事の質』が問われると思うんだ」
「仕事の⋯⋯質?」
「うん。例えば、最初は『可哀想だから』とか『子供だから』っていう同情で依頼したとするでしょ? で、そういう同情で依頼してくれた人って『仕事の質』はあまり気にしないと思うんだよね。だって、あくまで『同情』だから⋯⋯」
俺がそう説明すると、院長先生や話を理解している何人かの子供は「うんうん」とうなづく。
「でも、もし、同情でほとんど仕事に対して期待していなかった依頼者の⋯⋯期待を超えるような仕事をこなしたとしたら?」
「「「「「あっ!!!!」」」」」
俺の話を理解して聞いていた子供達が「ピンときた」とでも言いたげな表情を見せる。
「また仕事を依頼してくれる!」
「そうだ」
「あと、他の人にも私たちの仕事のことを宣伝してくれる!」
「そうだ」
「そしたら、孤児院のボランティアを知らなかった人たちも仕事を依頼してくれる!」
「そうだ」
「うわぁぁ、すごぉぉぉい〜っ!!!!」と、何人かの子供達が興奮した面持ちで歓声を上げる。
「え? 何? どうしたの、みんな?」
「なんだ? 何か良いことでもあったのか?」
「え、えーと、まあ⋯⋯そんなとこだ」
「「???」」
ミトリとペトラは俺の話を理解できなかったようだ。そんないつもと変わらない二人の安定の反応にほっこりする俺(あれ? ほっこりしていいのか、これ?)。
********************
【毎日12時更新】
明日もまたお楽しみください。
あと、下記2作品も読んでいただければ幸いです。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます