第7話007「孤児院が大変なようです」
——現在(リオ8歳)
「さて、そんなわけでプロローグ1話冒頭に戻るのだが⋯⋯」
そんな小粋なメタ発言を挟み余裕をかます俺だが、しかし実際はクソったれ貴族のおかげで孤児院の寄付がストップしたという最悪な状況に
「シスター・マリー、今、どういう状況なんですか?」
「そうですね。とりあえず、このままでは孤児院を運営できないので解体⋯⋯ということになりますね」
「あんの、クソ貴族がぁぁぁ〜〜〜っ!!!!」
「リオ、やめなさい」
「
さて、そんな悪態をついたところで現実が改善させるわけではないので、俺はどうしたものかと考える。ちなみに、今は孤児院の食堂で皆が夕飯を食べ終わったところなのだが、周囲には子供達が部屋に戻らず、皆が院長先生と俺の話を聞いていた。
「ねぇねぇ、院長先生」
「な〜に? ミトリ?」
「どうしたら孤児院、無くならない〜?」
「う〜ん、そうね〜⋯⋯どうしたらいいだろうね〜?」
「⋯⋯」
シスター・マリー院長は、ミトリのストレートな質問に苦笑いを浮かべながらごまかす。
「そんなの決まってんじゃん!」
「「ペトラ!」」
すると、ここでペトラが間に入ってきた。⋯⋯そうか。ペトラ正義感強いからな。辛い現実ではあるが、ちゃんとミトリに説明するつもり⋯⋯、
「神様にすんげぇお祈りすればいいんだよ!」
ああああああああああああああああ〜〜〜、ペトラぁぁぁぁっ!!!!
くっ!? やはり、ペトラじゃダメだったか⋯⋯!
「シスター・マリー院長先生」
「⋯⋯リオ」
「いくらですか? この孤児院の運営に必要なお金は?」
「! い、1ヶ月につき⋯⋯大金貨1枚よ」
大金貨1枚⋯⋯金貨で10枚。金貨は1枚日本円で1万円相当だから大金貨1枚は金貨10枚で、日本円だと10万円相当となる。
一見すると「大した額じゃないじゃん」と思うだろうが、実はこれが結構な大金である。なぜかというと、この世界の物価が日本の物価の『10分の1』に相当するのだから。
例えば、日本でいうところの『ソフトドリンク』は、ここでは銅貨10〜15枚となる。日本円で10〜15円程度だ。鬼安いと感じるだろ?
で、これは逆も然りで、給料から見れば、例えばこの世界の平民1ヶ月の収入は平均して『金貨2枚程度』。日本円だと『2万円程度』となる。給料鬼低いと感じるだろ?
でも、これが日本よりも物価が10分の1も低い世界の普通だ。
だから、『大金貨1枚』ってのは『日本円で10万円相当』の価値ではあるが、日本にいる時の感覚で言えば『100万円相当の価値』ということになる。
孤児院の運営に必要なお金が『毎月100万円』必要⋯⋯大した金額だろ?
これで『大金貨1枚』が穏やかな額じゃないってことは理解できたかな?
ちなみに、この世界のお金の単位はこんな感じだ。
——————————————————
<お金の価値>
銅(銅貨・大銅貨) → 銀(銀貨・大銀貨) → 金(金貨・大金貨) → 白金(
・銅貨1枚(1円)
・銅貨10枚(10円) → 大銅貨 1枚
・銅貨100枚(100円) → 大銅貨10枚
・銀貨1枚(100円) → 大銅貨10枚/銅貨100枚
・銀貨10枚(1000円) → 大銀貨1枚
・銅貨100枚(1万円) → 大銀貨10枚
・金貨1枚(1万円) → 大銀貨10枚/銀貨100枚
・金貨10枚(10万円) → 大金貨1枚
・金貨100枚(100万円) → 大金貨10枚
・白金貨1枚(100万円) → 大金貨10枚/金貨100枚
・白金貨10枚(1000万円) → 大白金貨1枚
・白金貨100枚(1億円) → 大白金貨10枚
・虹金貨1枚 → 1億円
※この世界の物価は、日本の10分の1程度の物価
※平民(一般民)の収入は日本円で月2万円くらい。同様に物価も同じく10分の1程度の値段(果実水10円(銅貨10枚/大銅貨1枚)、ふかし芋30円(銅貨30枚/大銅貨3枚)など)
——————————————————
つまり、孤児院の月の運営費用を稼ぐには、平民の平均収入の4倍以上は稼がないといけない計算となる。
「無理ゲー⋯⋯とは、言ってられないよな」
なかなかの現実の高い壁に弱気になる俺。すると、
「わたし、がんばる! がんばってお金稼ぐぅ!!」
「⋯⋯ミトリ」
ミトリがそう言って、「ふんす!」と両腕を胸の前に持ってきてグッと締める。
うん、あざとかわいい。これが無意識ってんだから、末恐ろしい7歳である。
さて、それはさておき⋯⋯。
「僕だってがんばるー!」
「俺もー!」
「わたしもー!」
ミトリの掛け声をきっかけに、孤児院の子供たちが声を上げる。
「ふふ⋯⋯ありがとうね、みんな」
「俺だって、めちゃめちゃ頑張るよ、院長先生!」
「まあ! 頼もしいわ、ペトラ」
「へへへ⋯⋯」
ペトラもまた相変わらず天然脳筋男児なので、その言葉に特に根拠はなく、ただただ、孤児院の役に立ちたい⋯⋯その一心だけだろう。
しかし、俺はそんなことはない。
お金のことはもちのろんだが、あのクソ貴族に目にもの見せてやりたい気、満々である。
コノウラミハラサデオクベキカ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます