第17話 マダラ模様のゴブリン
黒いマダラ模様のゴブリンから逃げることを選択したケータ達は、急いで転職神殿へ向かって走りました。
しかし、あと一息で安全な転職神殿へ辿り着くというところで転んでしまったルミナに、マダラ模様のゴブリンが飛び掛かりました。
「グギャッ!!」
「いやーっ!!」
身を起こしつつ振り返ったルミナは、飛び掛かって来たマダラ模様のゴブリンを目の当たりにして恐怖に顔を歪めて叫び声を上げました。
「とりゃぁ!!」
ガコン!
危機一髪のところで、ケータが割って入り、棍棒の一撃を振るいましたが、マダラ模様のゴブリンの腕で防がれてしまいました。
しかし、マダラ模様のゴブリンの勢いを止めることが出来たようで、奴は警戒するかのように一歩下がって対峙する形になりました。
「ナイスだ、ケータ! ルミナ、ぼけっとするな! 急いで神殿へ走れ!」
「えっ、あ、うん!」
駆け付けたジェニファーが、剣を構えてケータと並び立ち、すぐにルミナへ指示を出すと、恐怖で硬直していたルミナが動き出しました。
「ここは、私が時間を稼ぐ! ケータも神殿へ向かえ! アンドレ! 距離を取って援護を頼む!」
「……」
「了解だ!」
ルミナが起き上がり走り出すのと同時に、ジェニファーが、矢継ぎ早にケータとアンドレへと指示を出すと、無言で眉間に皺を寄せるケータに対して、先行して逃げていたアンドレからは了承の声が届きました。
どうやら、ジェニファーは、1人でしんがりを務めるつもりのようです。
一方、マダラ模様のゴブリンは、逃げ出したルミナに目を付け、動き出しました。
「グギャギャッ!」
「行かせるか!!」
ガキン!
ルミナを追おうと駆け出したゴブリンに、ジェニファーが、行く手を遮るように剣を叩きつけましたが、マダラ模様のゴブリンは、手の平で剣を受けるとジェニファーの体ごと大きく弾き返してしまいました。
マダラ模様のゴブリンは、手の平から血が流れ出すも構うことなく、地面を転がるジェニファーの脇を走り抜けます。
すれ違いざまにジェニファーの焦る顔を見て、下卑た顔で嘲笑うように口角を上げたマダラ模様のゴブリンが、標的のルミナへと視線を移したその瞬間です。
奴の死角から一気に詰め寄ったケータが、棍棒を振り抜きました。
「とりゃぁ!!」
ガン!
「グギィッ!?」
棍棒を無防備なまま顔面に受けたマダラ模様のゴブリンは、呻き声を上げて、地面を転がりました。
「ファイヤーボール!!」
そこへ、タイミングよくアンドレの魔法が飛んできて、地を這うマダラ模様のゴブリンへと直撃しました。
「ケータ! ジェニファー! 今のうちだ!!」
すかさず、アンドレの声が飛んできて、ケータとジェニファーが、転職神殿へ向かって駆け出しました。
「グギャギャギャギャーッ!!!!」
マダラ模様のゴブリンは、怒り狂い、咆哮を上げて跳ね起きると、ケータ達を追って駆け出しました。
死角から不意を突かれて顔面に強打を浴び、さらには、追撃のファイヤーボールまで喰らってしまい、マダラ模様のゴブリンは、怒りが頂点に達しているようです。信じられない速さで、ケータの背後へ迫ります。
「ケータ!」
「くっ!」
ジェニファーの叫び声とほぼ同時に、ケータは、横っ飛びで背後から襲い掛かって来たマダラ模様のゴブリンの引っ掻き攻撃を躱しました。
しかし、怒り狂ったマダラ模様のゴブリンの攻撃は止まりません。ケータは、次々と襲い来る攻撃を棍棒で何とか受け止め、転がるように躱すことしか出来ません。
「はぁぁ!!」
ガキィン!!
「グギャァッ!」
ジェニファーも参戦し、背後からマダラ模様のゴブリンの背中を切りつけると、奴は悲痛な声を上げ飛び退きました。その隙にケータも立ち上がり、体制を立て直しました。
「くっ、やはりゴブリンと思えないほど硬いな……」
ジェニファーは、一度距離を置いたマダラ模様のゴブリンへと剣を向けたまま、苦い顔で呟きました。
ケータとジェニファーが2人掛かりでマダラ模様のゴブリンと対峙しながら、じりじりと転職神殿へ向けて後ずさります。
「グギャッ!!」
マダラ模様のゴブリンは、ジェニファーの攻撃を受けて少し冷静になったようですが、再びケータへ向かって攻撃を仕掛けます。
マダラ模様のゴブリンのパワーは通常のゴブリンよりもずっと強く、真正面から当たればケータの方が力負けしてしまうようです。
ケータは、マダラ模様のゴブリンの攻撃を棍棒を使って受け流したり躱したりするのが精いっぱいです。
要所要所でジェニファーが攻撃を仕掛けますが、マダラ模様のゴブリンも警戒していて、上手くダメージを与えられません。
しばらくの間、2対1の接近戦が繰り広げられる中、マダラ模様のゴブリンは、執拗にケータを狙って攻撃してきます。
「グギャギャッ!!」
「くぅっ!!」
マダラ模様のゴブリンが、一瞬の隙をついてケータに強烈な蹴りを浴びせると、ケータは、もの凄い勢いで吹き飛ばされて、大きな岩に背中から打ち付けられてしまいました。
「ケータ!」
「グギャッ!」
ジェニファーが、ケータの心配をして僅かに視線を逸らしたところで、マダラ模様のゴブリンに詰め寄られ、体当たりで剣ごと突き飛ばされてしまいました。
マダラ模様のゴブリンは、転がるジェニファーに下卑た笑みを浮かべて見せると、真っ直ぐケータへ向かって駆け出しました。
「ケータ! 起きろ!!」
ジェニファーが、大声で叫びましたが、ケータは気を失っているようで、地面に倒れたまま動きません。
「ゲヒャヒャヒャヒャ!!」
マダラ模様のゴブリンは、下卑た笑い声を上げながら、気を失ったケータへ飛び掛かり、右手を叩きつけるように振り下ろしました。
刹那、ケータが、体を捻ってマダラ模様のゴブリンの攻撃をギリギリで躱すとともに見事な体術で奴に蹴りをぶち込みました。
「グギェッ!?」
確実に止めを刺したと思っていたのでしょう、蹴られて転がったマダラ模様のゴブリンが、驚いた様子で顔を上げると、ケータがすたこらさっさと転職神殿へ向けて駆け出していました。
「ヒャッハー! 危ないところだったですネー!」
そして、何ということでしょうか、ケータは、走りながらギプスっぽい口調で喋りました。その両手首、両足首には、いつの間にか銀色のリングが嵌められています。
「ジェニファー! 今のうちに逃げるですネー!」
「あ、ああ……」
ケータが、ギプスのような口ぶりでジェニファーに声を掛けると、彼女は、駆け出しながら、何だか戸惑うように返事をしました。
「グギャギャギャギャーッ!!!!」
マダラ模様のゴブリンは、再びケータに意表を突かれてしまったからか、顔を真っ赤にして怒り狂った形相で叫びながら、もの凄いスピードで追いかけて来ました。
「ヒャッハー! 怒ったみたいですネー!」
ケータは、走りながら振り返り、マダラ模様のゴブリンのようすを確認すると、ギプスのような口ぶりでテンション高く言いました。
マダラ模様のゴブリンは、すぐに追いついて来て、背後からケータへと襲い掛かってきましたが、ケータは、頭の後ろに目でも付いているかのように、タイミングよく横へ飛んで躱します。
「グギッ!? ギャギャギャー!!」
マダラ模様のゴブリンは、背後からの攻撃をあっさり躱されたことに一瞬驚いたようですが、すぐにケータを追い回すように左右の腕で次々と引っ掻き攻撃を繰り出します。
しかし、ケータはどこか余裕の笑みを見せて蝶が舞うように躱します。ケータがギプスのような口ぶりとなってからは、それまでの動きよりもずっと戦い慣れた感じがして、まるで別人のようです。
「ヒャッハー! そろそろ終わりにするですネー!」
どこか余裕の笑みを見せるケータは、腰の後ろに括り付けてあるナイフを鞘から抜くと、マダラ模様のゴブリンの攻撃をすり抜けるように躱して間合いに切り込むと、すれ違いざまにスパッと切りつけました。
「グギャァ!!」
脇腹を切られたマダラ模様のゴブリンは、苦悶の表情で悲鳴のような声を上げ、仰け反りました。その傷は、ジェニファーが切りつけた傷よりも深く見えます。
「グギャギャギャギャー!!!」
バチッ!!!
マダラ模様のゴブリンが、怒り狂ってケータの後を追いますが、唐突に見えない壁に阻まれてしまいました。
「グギャッ!?」
「ハッハー! 残念だったですネー! ここは、もう転職神殿の敷地内ですネー!」
突然のことに、驚き身構えるマダラ模様のゴブリンに、ケータは、腰に手を当てドヤ顔をして、ギプスの口調で高らかに笑うのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます