心情を書く実験作

斧田 紘尚

心情を描くための実験(お勉強のための作文)

今日は何時もよりも空が暗い。

ずっと庭から見えていた星々は今日は見えない。


子供の頃からずっと見ていたベガとアルタイルとベテルギウス。

今はもう見えない。


山の上にある我が家の景色は格別だった。1万ドルぐらいの価値はあると思っている。

夏の暁には眼下の街路に朝霧が立ち、夏の夕は見事な紫光が部屋に差し込む。

寒暁には霜が朝日で万華鏡を作り、霜夜には遠くの国道がネオンのように輝いていた。

そして私だけの夜空には、ベガとアルタイルとベテルギウスが季節ごとに代わる代わる現れて、私の瞳を輝かせた。

今はもう見えない。


今、我が家の前に新しく家が建った。

我が家よりも大きい家、高く高く聳え立つ壁のような家が建った。

我が家から見えていたあの景色は、もう二度と見る事は出来ない。

夜の低空を旋回するあの星々も壁の中に吸い込まれて、もう二度と見る事は出来ない。


あの星々は今も輝いているだろうか。

自由に動き回るあの星々が羨ましい。

もう動く事の無い私の体もああやって少しでも動き回る事が出来たなら、きっともっと違う空の下に居たのだろうか。

とても羨ましい。


私は今日も庭の下から星を見る。

届かない空に魂だけでも手を伸ばして、見える筈もない目で星々に羨望の眼を向けて。

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心情を書く実験作 斧田 紘尚 @hiroyoki_naoyoki

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