05:ある行方不明者捜索案件の報告
境界警察局のいつものメンツ。
ベテラン局員、烏山雄二。
元異世界人、メリス・ガーランド。
メカニック、エルメナ・エンジード。
雄二の運転で彼等はある被害者宅まで向かっていた。
任務上ある程度の慣れこそあるものの、皆沈痛な表情である。
「…毎度のこととはいえ、気分がいいものではありませんね…。」
メリスが下を向きながら呟く。
運転しながら雄二がメリスに言葉をかける。
「そう言うな。今回は救いもある…向こうでも待ってくれているんだ。願いは叶えてやらんとな。」
「…えぇ、そうですね。」
向かった先はごく普通の一軒家。
現在この家には4人家族が暮らしており、家族構成は両親に姉と弟。
そのうちの一人、弟が行方不明となってしまっており、当初は警察への捜索願、やがて異世界召喚の痕跡を発見したため境界警察局へ移管されたのだ。
その後該当する異世界へ介入し、現地人の協力も得ながら捜索を続けたものの、残念なことに発見したときには既に亡くなってしまっていたのだ。
その事を、遺族である3人に報告することとなったのである。
外でエルメナが車内待機し、雄二とメリスが遺族宅である仲澤(なかざわ)宅へ入室。リビングへと通され、雄二とメリス、そして仲澤家の3人である父の一弘(かずひろ)、母の史絵(ふみえ)、姉の夕香(ゆか)が向かい合う。
「本日はお時間を頂きまして、ありがとうございます。」
メリスが口を開く。
史絵が続けて口を開く。
「えぇ、こちらこそご足労頂きまして…。」
「それで、事前に連絡は頂いてましたが…」
一弘の問いかけに、雄二が答える。
「はい、申し上げ難いのですが息子さんの良成(よしなり)さんは、現地で既に…。」
「あぁ………」
雄二の答えを聞いて、堪えきれず遺族3人は涙を流す。
「ただ、死因なのですが……老衰、なのです。」
メリスが続けた言葉により、流れていた3人の涙が引っ込んだ。
「……え?ろ、老衰……ですか?」
姉の夕香が率直な疑問を投げかける。続いて母の史絵も言葉を放つ。
「ど、どういうことですか?息子はまだ17歳の高校生のはずですが……?」
「それなのですが……今回、良成さんが転移した先の異世界に関してなのですが…。」
数日後。
メリスと雄二、そして手続きを終えてやってきた仲澤家の3人が、境界警察局日本支部の境界門管理所『ポータルステーション』に集まった。
雄二達局員はいつものフル装備、仲澤家3人は数日分の旅行を想定した準備を整えている。
「この度はご足労頂き、ありがとうございます。」
改めてメリスが仲澤家3人に礼を述べる。それに一弘が答える。
「いえ、こちらこそ色々手配してくださいまして…それで、この門から…」
「はい、この門の先が、良成さんの転移した先の異世界…『セレネイア』という世界です。」
メリスが指し示した先に開いている一つの門(ポータル)。その先が、大切な息子の転移先であるという。
「では、参りましょうか。」
雄二の声に全員がうなずいた。
ーーーーーー
門を抜けた先。
そこは異世界『セレネイア』の覇権国家の中央都市、そのさらに中央に位置する王城の広間であった。
門からまず最初にメリス、続いて仲澤家3人、最後に雄二の順に異世界の城の広間に降り立ったのだ。
彼等5人が降り立った瞬間、広間に集まっていた兵士や宰相等が「おおおぉぉ!」とどよめきを見せる。
そのまましばしざわざわするも、その場にいた一際威厳のある男、すなわち国王が「控えよ!」一喝したことにより場を収めた。
「ありがとうございます、そしてお待たせいたしました、ゲルトルート陛下。」
そう言ってメリスが敬礼する。
「うむ、この日を今か今かと待ちわびたぞメリス殿。」
この国の王、ゲルトルートは笑顔でメリス達の前に駆け寄った。
そして、側に立つ仲澤家3人を見て、更に嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そうか、そなた方が……!!」
そして、国王ゲルトルートは仲澤家3人に対し、なんとその場に跪いたのだ。
それと同時に周囲の兵士達や宰相達も同時に仲澤家に対し跪く。
「え、え、うぇぇ!?」
夕香が驚いて狼狽える。史絵も訳が分からない様子で王を見る。
オロオロしながらも一弘がなんとか王に問いかけた。
「あ、あのぉ…一体何がどういうことなのでしょう??」
その疑問に王が直々に答える。
「メリス殿らからお話は伺っております。貴方様方こそが、この世界に真の平和をもたらした偉大なる大賢者ヨシナリ様のご家族様であると!!」
「………大賢者ヨシナリ………様?」
捜査してゆく中で判明したこと。
良成が異世界へ転移したのは間違いないのだが、メリス達が辿り着いた際には既に良成が転移してから100年以上が経っていた状態だったのである。
地球側からするとまだ数ヶ月くらいしか経っていないのだが、異世界側では既に100年以上が経過。
地球側の経過時間と異世界側の経過時間は必ずしも一致しないという、典型的な例でもあったのである。
当時の記録に良成の年齢が17歳と記載されており、この世界でも70歳以上まで生きていたことになるらしい。
「左様にございます。私めは先代よりこの国をお預かりしております、現国王のゲルトルート・フォン・マルドゥクと申します。」
「は、はい!私は夕香といいます。こっちは父の一弘、母は史絵です。」
夕香が慌てて自己紹介をする。続けて史絵も頭を下げて挨拶をした。
「それで、メリスさんからお話を聞いているとおっしゃってましたが……?」
史絵が質問を続ける。
「はっ!メリス殿のお話では、貴方様方は大賢者ヨシナリ様のご家族様方…父君、母君、そして姉君であると。」
「え、えぇ…まぁ…。」
戸惑う史絵達に対し、王が更に続ける。
「まずは、我が国の愚かなる者共の策略により、貴方様方の大切なご家族であるヨシナリ様をこの世界に召喚してしまいましたこと、深く深くお詫び申し上げます…。」
王はそう言って頭も深く下げる。周囲の者達も頭を下げる。
その言葉を聞いて史絵や夕香は表情が曇り、一弘は拳を握りしめる。
が、その後続く言葉で緊張が解れる。
「そして、そんな恨まれるのも当然である我らに…ヨシナリ様は多くの知恵を授け、この世界を導き救いを齎して下さいました。」
「……あの子が?」
「はい、それはもう…!ヨシナリ様は本当に素晴らしいお方でありまして……」
王の語る『良成』の話を聞きながら、史絵達は表情が綻ぶのであった。
そして、一弘は思ったことを2点、王に聞いた。
「…王様、2点…聞いてもよろしいですか?」
「もちろん、何なりと。」
「…息子を召喚した者達は、どうなりましたか?」
「…当時ヨシナリ様を召喚したのは先代国王たる我が父上の弟、すなわち叔父上でございました。異界より大いなる知恵を授かり、それを持ってしてクーデターを起こし我が父上を追い落とそうと企んでおりました。」
現王の表情が少し歪む。しかしすぐに表情を戻し続けた。
「しかし、当のヨシナリ様がその陰謀に気づき、叔父上のもとから開放した奴隷達と共に蜂起…囚われの身であった父上や我が身自身を救い出してくださったのです。おかげ様で我らはこうして今玉座に座ることが出来ております…そして叔父上等逆賊共は皆投獄、その後極刑に処されました。」
「きょ、極刑…。」
一瞬聞こえた物騒な単語に引いてしまう仲澤家だが、下手人等はしっかり手を下されたことを理解しホッとするのであった。
一弘は、もう一つの点を問う。
「……ではもう一点……息子は、どんな最後でしたか?」
正直、聞くのも辛い内容であった。
それに対し、王は視線を横に向けながら答えた。
「そのことに関しては、我よりもあの者達に聞いたほうが詳しいでしょう。」
その視線の先、並ぶ側近達の中の数名。
その中の1人が前に出て来て口を開いた。
「改めまして…私はオルテシア・セージ・ナカザワ。偉大なる大賢者にして救国の英雄ヨシナリ・ナカザワの息子に御座います。」
仲澤家は皆、目が点になった。
「……息子??」
「え、良成の息子???」
「え?ちょっと、つまりあたし等って…??」
理解が追いついていない仲澤家。オルテシアが夕香の言葉に続く。
「お察しの通りで御座います、御祖父様、御祖母様、伯母様。」
「ちょ、あたしこの年で伯母さん!?」
「俺、祖父ちゃんになっちまったのかよ…!?」
狼狽える一弘と夕香。
しかし史絵はオルテシアの顔をまじまじと見つめていた。
そして確信した。
「あぁ……確かにあの子の息子なのね…顔がそっくりじゃない…!」
その呟きで一弘と夕香も改めてオルテシアの顔をまじまじ見る。
「…あぁ、史絵の言う通りだよ…。」
「ホントだわ…髪の色こそ違うけど…アイツの顔そっくりだわ…!!」
「そっかぁ……良成の子どもなんだねぇ……。」
感慨深げにそうつぶやく史絵を見て、夕香も泣きそうになった。
そんな3人を尻目に王ゲルトルートはオルテシアに問いかける。
「どうだろうか?ヨシナリ様の功績をご覧頂くためにも、そなた等で城下町を案内しては?」
「まさにそれを考えておりました。父上も「百聞は一見にしかず」と言っておられましたから。」
「ふむ、ならば早速行くがよい。」
「はっ!ありがとうございます、陛下。」
そう言って、オルテシアは仲澤家の方へ向き直り笑顔を向けた。
「では、皆さん参りましょうか。」
「お、おおぅ……よろしくお願いします。」
一弘が戸惑いながらも返事をする。
「良成の偉業を見るってことは……あの子の生きてきた軌跡を見るということなのよね……!」
史絵が嬉しそうな表情をする。
「ん~、なんか夢みたいよね……こんなことが起きるなんて。」
夕香も感慨深い表情になった。
ここまでの流れを一歩下がった場所からずっと見ていたメリスと雄二。
「これで、遺族の皆さんが救われます…よね?」
「少なくとも、絶望に沈むことはもうない、はずだ。」
オルテシア・セージ・ナカザワ率いる異世界ナカザワ家一行の案内のもと城門を抜け、馬車で城下町へと駆り出した地球世界の仲澤家一行。『門』の管理のため雄二が城に残り、メリスが一行に同行している。
城の様式はいわゆるバロック様式の厳かな城であったが、城下町の建物や道路様式は中世ヨーロッパ式の中に現代日本式の建物が入り混じった、地球世界側の仲澤家一行からすれば初めて見る光景なのにどこかデジャヴを感じる光景だった。
「…もしかしてこの建物とかって…。」
夕香が思った疑問にオルテシアが答える。
「えぇ、これらの建築様式はヨシナリ様の助言を元に作られたものでございます。当時は街中に衝撃が走ったと記録されています。当人いわく、『専門家じゃないから細かいところはさっぱりだけど』とのことでしたが。」
「あの子ったら…。」
史絵が思わずクスッと笑う。
「……しかし、やはりヨシナリ様の故郷とは違うようですね。」
「そりゃそうだろ、ここ異世界だし。」
「そうですけれど、街並みの感じがなんとなく……なのです。」
「まぁ、それは分かるかも。」
「うん、何となく雰囲気が似てるよね。」
オルテシアと夕香の会話を聞いて、一弘と史絵も同じことを考えていたらしい。
その後、街で有名だという大衆食堂に案内された。
「この食堂はヨシナリ様が大賢者として王城努めとなっても頻繁に通い続けた、思い入れの強い食堂なのですよ。」
「おぉぉぉ…。」
オルテシアの説明に感嘆する一弘。
そして扉を開けて店内へ入る。
店内は客で賑わっており、香しい料理の香りが漂う。
立派な口髭に筋骨隆々の店主が厨房から声をかけてきた。
「いらっしゃい!…おぉ、オルテシアじゃねぇか!今日はまた大所帯だなぁ!」
「相変わらず盛況ですねマスター。今日は大切なお客様を連れていましてね。」
「ほう、こりゃ珍しいな……よし、特別席を用意してやるよ!」
「いつもありがとうございます。」
「いいってことよ!」
オルテシアが店主とそんなやり取りをして店の奥の方へ向かい、一行はついて行った。
そこには宴会用の大きなテーブルがあった。
各々自由に着席し、オルテシアが注文を告げる。
「それではマスター、ヨシナリ様の大好物である『アレ』を人数分お願いします!」
「アレか!よぉ〜し超特急で用意してやるぜ!」
そう言ってマスターは厨房へと消えていった。
この一連の会話を聞いて、一弘と史絵がもしやと思い立つ。
「…良成の大好物…この店内の香り…まさか!」
「さすがヨシナリ様の御母堂様、わかりましたね?」
「えぇ、そりゃあもう!」
その後、一行の前にはかぐわしい香りを立てる、カレーライスが並んでいた。
「あぁ、確かに良成の大好物だよ…!」
夕香が供されたカレーライスを見て懐かしむ。
「それでは…。」
オルテシアら異世界ナカザワ家一行が、手を合わせ一斉に言う。
「「「「イタダキマス!」」」」
それにつられて地球側仲澤家等も同じく手を合わせる。
「「「「いただきます!」」」」
そしてスプーンを手に取り、皆で食べ始める。
「う〜ん、やっぱりこの味ですよねぇ〜!」
オルテシアはすっかり馴染みの味といった感じで笑顔で食べ続ける。
「なにげに初めて食べましたけどこれは美味しいですね〜。これもやはり良成さんが?」
境界警察局員メリスも美味しさに顔を綻ばせつつ、マスターに問う。
マスターは意気揚々と答えた。
「あぁ、この味の再現には随分と時間がかかっちまったが、ヨシナリ様はこの一皿のためにわざわざ大陸南方や西方諸島までドラゴン便で駆けずり回ってたからなぁ。今でこそ安定して仕入れられるようになったが、あの時のヨシナリ様は気迫がやばかったぜ。」
思い出を語り物思いにふけるマスター。
その横で、地球側仲澤家3人が、大粒の涙を流しながらカレーを食べていた。
「お、おい!?どうしたんだいあんた達!?」
思わず慌てるマスター。しかしそんなマスターを、史絵が涙を流しつつも手で制した。
「あぁ…ありがとうございます店長さん…。」
「いやしかし…。」
心配するマスターを制しつつ、史絵は続けた。
「このカレーの味……うちで作ってたカレーの味そのまんまなんですよ……!!」
メリスから事情を聞いたマスターは、思わず感動に咽び泣く。
「そうか…あんたらがあのヨシナリ様の親父さんにお袋さん、それに姉ちゃんか…」
「えぇ…このカレーの味…間違いなくあの子の好物そのものです…!!」
史絵も涙を浮かべながら答えた。
他の面々思わず貰い泣きし、嗚咽しながらカレーを食べるのであった。
しばらくした後、一弘がオルテシアに問いかける。
「オルテシアさん……あの子は、どこに埋葬されましたか?」
その問いかけに、オルテシアが答えた。
「御祖父様、どうか遠慮せず呼び捨てにしてください。…父上は、城下町にある運動公園内に建てられた霊廟で眠りについています。このあとお連れする予定ですが…。」
「そうですか…ありがとうございます、是非お願いします。」
礼を述べる一弘。
そこにマスターが声をかける。
「親父さん、もし霊廟に行くってんなら、こいつを持ってってやってくだせぇ。」
マスターの手には、琥珀色の酒瓶が一つ。
「こいつは街の酒屋ギルドのドワーフ達がヨシナリ様の助言で完成させた、『ウイスキー』っつう酒なんですわ。ヨシナリ様はこの酒を完成させるころに成人されましてね、こいつを水で割って愛飲してたんでさぁ。ドワーフ達はストレートでカパカパ飲んでましたがね。」
その酒瓶を見て、一弘は一つの約束を思い出したのであった。
「……あいつ、俺がよくウイスキー水割り飲んでたの覚えてたな?…それに、成人したら酒酌み交わそうって約束してたよなぁ…!」
一弘は酒瓶を受け取ると、酒瓶を抱きしめて涙を流した。
「ありがとうございます店長さん…あの子との約束、これで果たせます…!!」
「おうよ!またいつでも来てくれよな!」
「はい、必ず!」
こうして、一行はマスターと別れ、馬車で運動公園へと向かった。
運動公園、と称されていたのを証明するかのように、広大な公園の様式はほぼ現代日本式の公園風景となっていた。ランニングコートにテニスコート、野球場まである。
オルテシア曰く、これらスポーツも良成によってもたらされたらしい。夕香はそれを聞いて納得していた。
「あいつスポーツ少年だったもんね…。」
「それでは、こちらへ。」
オルテシアに案内されて向かった先は、運動公園中央にそびえ立つ、荘厳な雰囲気の霊廟であった。
霊廟の前に立つ石碑に、現地異世界語で刻まれていた。
『救国の英雄にして偉大なる大賢者、ヨシナリ・ナカザワ、そして最大の伴侶、イルマ・セージ・ナカザワ、ここに眠る』
「……良成……!」
一弘は石碑の前に立ち、静かに合掌した。
史絵、夕香も後に続く。
オルテシアら異世界ナカザワ家一行、メリスもその様子を見守る。
…長い沈黙の後、一弘は先ほど受け取ったウイスキーの栓を抜き、途中で購入した2つのグラスに注ぐ。そしてオルテシアから水を受け取って注ぎ、水割りにした。
一つのグラスを霊廟前に置き、一つを手で掲げる。
「……約束したよな、良成。成人したら酒を酌み交わそうって…。」
そう言って手に持ったグラスを置いたグラスに軽く打ち付け、一口飲んだ。
「…おいおい偶然かこりゃ…俺がいつも飲んでるやつと味がそっくりじゃないか…!」
涙を流しながら、二口、三口とウイスキーを飲む。
「…こっちの世界で、頑張ってたんだな良成…みんながお前のこと褒め称えてたよ…ホント、自慢の息子だよ…!!」
最後の一口を飲み干し、一弘は天を仰いだ。
「あんたが生きてきた足跡、見てきたよ…本当に、お疲れ様…!」
「よくもあたしをおばさんにしてくれたわね、バカ良成…お返しとして、甥っ子たちのことはあたしが全力で可愛がってあげるからね…!!せいぜい奥さんと向こうで幸せにね!!」
史絵と夕香はそんな一弘に抱きつき、涙を流し続けたのであった…。
日も沈み、夜もふけてきた頃に馬車で王城に帰ってきた一行。
今晩は地球側仲澤家3人はこのまま王城で一泊させてもらうこととなり、メリスと雄二は現地側担当局員に引き継いで帰還することになっている。
「一弘さん、史絵さん、夕香さん…本日はお疲れ様でした。」
「我々は次の案件がありますのでこれにて本案件対応終了となります。」
仲澤家3人に対し最敬礼をする。
「こちらこそ、これまで手厚い対応をしてくださり、ありがとうございました。」
「おかげで良成とも再会できましたし、思い掛けない形で新しい家族に会うことも出来ました…!」
「本当に…本当にありがとうございます!」
仲澤家の3人は各々最大級の感謝の意を述べた。
次にメリスと雄二はオルテシアと国王ゲルトルートに向き直る。
「それでは我々は帰還しますが、この御三方のこと、よろしくお願いいします。」
メリス等が敬礼する。オルテシアと国王ゲルトルートも敬意を持って答えた。
「はい、お任せください!」
「偉大なる大賢者の御家族様方を全力でお守りすると、我が名にかけて誓おう!」
「門はいつでも開けられるよう手続きしておきますので、御用の際はお渡ししているマギ・コールにてお願いします。」
「わかりました。」
こうして、メリスと雄二は門を通り、元の世界である地球に帰還した。
きっと今頃、地球側仲澤家と異世界側ナカザワ家でお互いにそれぞれの思い出話に花を咲かせていることだろう。後日、地球側仲澤家の案内で異世界側ナカザワ家を地球に招待するという話も出ている。これからお互いの交流は深まっていくことであろう。
帰還後、メリスと雄二は馴染みのバーに来ていた。
「これからセレネイアと地球での交流も盛んになるでしょうし、仲澤さん方はその架け橋になってゆくでしょうね…。」
呟きながらメリスはグラスに注がれた水割りウイスキーを飲む。
「感化されたか?カルーアミルクばかりのお前が。」
雄二も同じく水割りウイスキーを飲んだ。
「そういう雄二も、ロックじゃないんですね。」
頬を赤らめたメリスが、雄二の顔を覗き込む。
「たまには、な。」
照れを隠すように、水割りウイスキーを一気に飲み干す雄二であった。
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