喪失、ケイ。

 ショーゴの……クラッシュの持つ、魔力砲の輝きが発されたその時。


 ほぼ同時に、砲台の光線は———真下に向けられていた。


 その時、ケイは。


********


「ショーゴ……ッ、ショーゴ、ショーゴ、ショーゴォッ!!!!


 なんで……なんだよ……僕は……僕、は……なんだって……君より…………っっ!!」


『…………イ……ケイ、聞こえ……る、か……っ』


 ……!

 ショーゴだ、ショーゴの声だ……まだ生きてる、なら……!


「ショーゴ! まだ……」


『いや———


「っ……」


 何で……こんな僕のために……命を……そんなに…………なってまで…………っ!




「ショーゴ……何で、だよ…………



 ———君の帰りを、待っている人だって、いたのに……いたのにっ!」




『……お前、だって……言う、ん、だろ……』


「違うよ……違うんだよ、ショーゴ……っ!

 ニンナさんが……ニンナさんが、ショーゴのこと……好きだって…………っ!」



 ———あーあ。

 言ってしまった。絶対に言っちゃいけないって思ってて、口が裂けても言ってやるもんかって思ってたのに。


 ダメ、だった。


『———っは、はははは……っぶ、っ、俺……好かれてたんだな、アイツ…………にっ……』


「そうだよ、好かれてないわけない……なのに、なのに…………っ!」


『じゃあ、言っといて……ほしい……


 俺も…………、って……』


「———っっ!!」


 違う。それは嘘だ。そんなわけがない。

 あんなにリコについて話していたのだから、それは……それは、絶対に嘘なんだ。


 そんなことくらい、僕だって……分かるはずだ。


 でも、何で…………


『言っといて……くれ、愛してた……って……


 そうすりゃ、アイツも———、





 アイツも、……だろ……』


「そんな……そんなわけないだろ……あるわけないだろっ、ショーゴッ!」


『……』


「救われるわけ……ないじゃんか……ないよ、そんな……そんな言葉如きでっ!


 もしそれが……本当なら……いいや、本当でも嘘でも、救いたいと思うのだったら、その口で……言うべきだった……はずじゃないか、ショーゴッ!!」




『ぉ…………ん。


 そう…………だ、な……


 まち、がえた……みたい、だ……』


「っ、ショーゴッ!……まだ、まだ……っっ!!」





『っ、くっ……そ……

 ごめん……ケイ、おれ…………やれ、なかった……


 キズ、ひとつ……ついちゃ、ねえ……』


 そんなことどうでもいい、ヤツのことなんて、何も気にする必要なんて……っっ!


『ごめん……とお……さん……

 ぼく……まちがえ、た……みたい、で……』


「———っ……っっ!!」


 涙が止まらないって、こんなことを言うんだ。

 どうしてもどうしても他人を思って、その気持ちが止まらなくって。

 それでも、だからこそ。


『でも……イヤ、だったんだよ……




 もう、なに……も、せずに………………おわる、のは……



 ———とおさん、だって……イヤ、だろ……?』


「———っっ、っ……!!」


 助からない。もはや助かりはしない。そんなこと、既に分かっている。

 でも、その儚げな声を聞いて……僕は、スピーカーに必死にしがみつくしかできなかった。






『ごめん……とお、さん……


 ……り……リコ…………っ。


 その、えがお、を……もう、一度———』



 ザッ、ザッ、ザザーッ。



「ぅうっ、ショーゴォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!」








 ……もはや、何も聞こえなくなったコックピットにて。

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