絶望、神力光線。

『……っおい、ケイ!……後ろのモニター、見れるか?!』


「どどっ、どうしたの……何かあった?!」


 考え込んでいた意識は、ショーゴの驚愕の声に引き戻された。


『見ろ、アレ……!


 ……巨大な移動式砲台……とも言ったところか…………!!』


 ショーゴ機……クラッシュの後方、海の上に浮かぶようにして見えたのが、その新種の神話的生命体だった。





 見た目は四脚の付いた鉄の球体。しかし他の神話的生命体とは一線を画す巨体。


 その前方、球の中心部分には小さな穴のようなものが存在し、そこからソレは神力光線を放っていた。


 そいつが一度に放っている神力光線は、それがヤツの放てる限界なのだろうか。


『———い! ボケッとするな、ぶつかるぞ!』


「っあ、ご……ごめんっ!」


 ……よそ見は禁物だ。いくらあっちから誘ってきたとはいえ、見るのは一瞬にすべきだった。


 ただ、なんだあの個体は……光線を放つ巨大な砲台……そんなものが、あっち側にあったのか……?!


『そらそらあっ! ブチ飛ばすぜ、その肉丸ごとぉっ!』


 ショーゴの声が聞こえ続ける———なのに、僕はこのまま、ショーゴの進路を先に行くだけだ。


 ずっとショーゴにやらせてばかりなのに……僕は……


『ケイ! お前の前方に丘がある! 高度を上げるぞ、一気に!』

「あっ……了解!」


 その丘に衝突しないように、高度を上げた瞬間———だった。





『待て…………っケイ、伏せろぉっ!』


「なっ、えっ…………っっ!!」















 言われた通りにして伏せた。が、機体は地面に激突し、推力を失ったまま、転がるようにして地面を滑り続けた。


 その最中、僕の真上、上空を通り過ぎていたのは…………1本の光の線だった。



「ぁう…………っ、ショーゴ……! ショーゴ、ショーゴ! 何があったんだ、聞こえるなら応答———」


『……あ…………っ、ああ、生きてる、生きてるさ、俺は……』


 それと同時に、ノイズがかった視界も、徐々に復旧していく。


 真横に倒れていたのは、ショーゴのクラッシュだった。

 だが…………さっきの光線による損害は、あまりなさそうだ。しかし、肩部の2対の大砲のうち、1つが損傷しているのが見えた。


「よかった…………っっ、そっちの損害は……どう?」


『ああ…………っ、肩部の大砲に…………レーダーまでイカれちまった……


 そっちは……よ、レーダー……使えるか?』


 使えるか、と言われて、ようやく僕は、自機のレーダーがまだ生きていることを知った。


 ……今にも、あの肉塊共の群れが迫っている。それに…………あの光線を吐いてくるヤツも、既に上陸して間もない頃となっていた。


「うん……使える、けど……」

『そうか……じゃあ、敵は———どこにいる……?』


 そんなこと……聞く必要……いや、あるか。


「こっちに迫ってくる、あの肉塊の群れと……例の砲台も、既にこっちに上陸している……けど……」


『肉塊がここに来る時間は、あとどんくらいだ……?』


「多分……1分もあれば、ここはヤツらに飲まれる……と思う」


『……そうか…………ありがとう』


 そう言って、ショーゴのクラッシュは体勢を直した。

 直したはいいものの……腰部のスラスターだけは、どちらも前方に向けていた。

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