神力光線
「あっちは……嘘だろ、僕がいない間に……」
元の持ち場に戻ろうとそちらの方を見た瞬間、そこを埋め尽くしていた神話的生命体の群れを目に焼き付けてしまった。
関係ない、臆することはない。
ブレードマウントに長刀を収めたあと銃を取り出す。
空のマガジンを投げ捨て、サイドツー腰部に取り付けられた予備マガジンを銃に装填しながら、もう一度照準を構える。
「こっちに来るなぁぁぁぁあっ!」
ただひたすら、眼前に壁のように立ち塞がる敵を撃ちまくる。
……今気付いたが、こんなヤツら棒立ちでもある程度やれる。ただ前に突撃してくるだけの脳無しなのだから、ただ前に撃っているだけで勝手に道は開けてくる。
……弾が無くなればヤバいのだが。
でも、このままやればいけるはずだ。
例え無尽蔵とは言えど、敵はただ突進してくるだけ。スラスターがなくとも、長刀1本であろうと十分に相手は可能だ。
勝てる、この戦い、このままなら勝てるぞ……!
『き……教官! こちらコーラス9、前方……前方海上に、新種の神話的生命体確認っ!』
『何だとぉっ?!』
新型———?
新型、って、この雑兵共とはまた違うヤツだって事……か……?
『新型機、何やら光の線を———』
直後、右側上空にて爆発が起きる。……光の線?……まさか、そんなもので撃墜された……?
———と、咄嗟に目をやった上空には、爆発した跡とも言える黒煙。
……そして、それを貫く水色の光の線があった。
それも、なんと5本も。
『……指揮官機より全機通達! 後退だ、状況を一度確認する、全機後退! 繰り返す、全機後退だ!』
『右翼、コーラス9が撃墜されましたあっ!』
何がどうなっている、光の線———光線を発したモノは何だ、何が味方を撃墜させた……?
『こちらコーラス16! 光の線が……こちらに当たって……眩し———』
間抜けにもぶつりと声が切れた瞬間、またもや上空にて爆発が起こる。……また撃墜された……?
『……飛ぶな、飛んで目立ったら真っ先に殺られるぞ!
『後退……って言ったってぇええっ?! 照射、照射されましたあぁぁあっ! たす———助けて、隊ちょ———』
またもや爆発、体系が崩れて来ている、最悪だ……!
しかし、この状況で後退———無理だ、隙を見せればすぐに突撃されてこっちが死ぬ。
今この瞬間だって長刀を振り回しながら戦っているってのに、この波が終わらない限りは後退なんて絶対に不可能だ。
『前哨基地魔力支援砲、全機大破っ! 光の線にやられました!』
『作戦前哨基地司令部より通達———ヤツは———新型神話的生命体は、こちらに狙いを定めていますっ!』
退路など元からないに等しいと言うのに、その上でその退路を通れと……!
『もはやこの前線は崩壊した……各自2機行動だ、2機以上で陣形を組み、協力して後退しろ! もはや敵は通しても良い、何とかして後退して、生き延びてみせろ!』
———教官、今———前線は崩壊した、って……!
『こちら第0機動小隊指揮官機より作戦基地司令部に通達、第0機動小隊は新型神話的生命体の迎撃のための戦力温存の為に、撤退する許可をもらいたい』
『了解、既に人界王都近衛騎士軍は、ここより離れた場所に第二次防衛線を張り始めている。その奥、第三次防衛線が最後だ、第三次に総力を注ぐためにも、貴様らはここで撤退させるのが最適だろうな』
『……聞いていたか第0機動小隊全機! 撤退だ、全機撤退行動に出るぞ!』
もう、そんな早く撤退許可が降りたのか。
それほどまでに、ヤツがひっくり返した戦況は大きいのか……!
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