第9章:屍山血河〜第二次新王都防衛戦〜

Side-Other:ラウンズテーブル

◇◇◇◇◇◇◇◇


 その頃、王都、王城内部において。



 若干、その場にそぐわない鉄の機械が置かれた、一昔前だかの建築方式、建材がおおう部屋。


 天井は低く、若干の窮屈きゅうくつさを誰もが感じていた。しかして横は妙にだだっ広く、部屋の作られた目的を皆が思い出す。


 部屋の中央に堂々と置かれた円卓を囲むように、20人の男女問わずの集団が座る。


 ドアの正面に位置する赤に染まった椅子———上座に座った人物は、『トランスフィールド西諸国及び人界連合』総長にして、トランスフィールド諸国所属国『カイラ』の国王であるヴァラスク・カイである。


「では人界王、報告を」


 そのヴァラスクの正反対の位置に、部屋のドアを背にして座るのは、現人界王、ユダレイ・タッカーダル四世。


 ———問答が、始まった。


「我が人界軍は、本日16時47分、東大陸沿岸、真珠海に面する『西諸国連合直属真珠海監視用前哨基地』の報告により、現在海底を移動しながらこちらに向かう10万の正体不明の生命体を確認しました」


 一国の王でもあるはずの人界王ユダレイが、ここまで敬語を使い己の身をへりくだらせながら喋ることの裏には、カイラ国及びトランスフィールド西諸国の行った、サイドツーやサイドツーシュミレーターの大量提供という事実がチラついていた。


 まさにこれこそ傀儡かいらい政権の象徴であろう。



 ……そんなことで隷属れいぞくする人界王を横目に、握り拳を密かに作る女騎士が1人。






「生命体の特徴は?」


「ヒトや魔族とは似つかないながらも、神力反応、そして熱源反応を有する半有機的な生命体、と言うこと以外何も分かっておりません」


「軍の動きは?」


「この後19時00分より、我が国の人界軍が誇る第0機動小隊と、魔族で主に構成された『懲罰大隊』を先行させ、東大陸沿岸に防衛線を張る予定です。


 正体不明生命体———我々は

ミシカルオーガニズム神話的生命体』と仮称していますが、彼奴等の東大陸到着、上陸想定時間は、そのスピードから見て19時28分と予想されます。


 これまでに、神話的生命体の進行スピードの加減速は認められません」


「機神ゼウス———『標的Z』だったな……それの動向は?」





「……それについては、私がお答え致しましょう」


 そう言いつつ立ち上がったのは、人界王の後継になるのではと予想されている、現人界軍統括総司令官の青年、『黒』であった。


 ———なぜここにいるのか。その理由は、今のところ誰にも分からない。


「私が率いる『神殿国調査部隊』は、これまで1日1分1秒も欠かすことなく、標的Zの動向、及びそれを覆う標的Zのものと思われる神力障壁を監視してきましたが、これまでに変化は一切認められませんでした。


 これに関しては他の機神と思われる巨大神力反応源も同じです」


「では、黒……貴様に問おう、WSウェポンシステム-885はどうなっている?」


「順調……とは言いきれません、FMフロート・マジニック種抗重力型力場形成式機関の調整がうまく進んではおりません。



 ……生体CPU……もとい、使の調整、及び荷電粒子砲に関しては、予定通り順調に進んでおります」


「一大課題とも言われていた荷電粒子砲の首尾は上々か、素晴らしい成果ではないか、今後とも期待している」


「お褒めにあずかり、光栄にございます」


 誰もがその会話の意味することを知らぬまま、2人の会話は進んでいく……が。


 そんな中、部屋のドアを叩く者が1人。コンコンと、静かな部屋に合うような軽い音が鳴る。



「……伝令に参りました!」


 突如ドアが開き、向こう側より現れたのは、迷彩柄の服に身を包んだ軍人。服装から見て、トランスフィールド諸国所属の軍人だろう。


「ほお、申してみよ」



「先程、懲罰大隊が出撃、続いて第0機動小隊も出撃する模様です!」


「そうかなるほど、では見せてもらおうか。黒、そして人界王。


 ……貴様らの育てた、精鋭の力とやらを……!」

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