閑話

閑話〜体育祭〜

「おはよ。照。」

「あ、おはよー。」

影がいなくなって数日が経った。今日も、いつも通りの朝だ。照とはクラスが一緒だったらしい。席が離れていたからか、気づかなかった。気づかれてもいなかっただろうな。あの日に、話しかけられなかったのだから。俺は、まだ告白への返事はしていない。分からないんだ。やっぱり影花のことが好きだから。忘れられないから。いつも通り接してくれる照には感謝しかない。でも、少しだけ気になっていることもある。最近、ほぼ毎日だが、照が俺の家にいる時間が長くなっている。休日も、俺の家にいるのだ。家に、帰りたくない。そう言って。どうしてなのか、まだ、聞いていない。少しだけ、怖い。嫌な予感が…する……。


ホームルームの時間。先生から行事の話がされた。

「5月入ったらすぐに体育祭か〜何の競技に出るつもりなの?」

「運動はあまりしたくないからな……どうするか迷ってるけど…借り物競争は出るか。楽そうだし。」

「そっか〜…私はねぇ、リレーと玉入れ。」

「…玉入れも楽そうだな。借り物競争と玉入れにするか。」

「徹底的に運動しない気だね。」

「そりゃあな。」

体育祭、応援くらいはちゃんとするか…

「今日も来るか?」

「…!うん!」


・・・


体育祭。無事に希望していた競技になった。午前に借り物競争やリレーなどの道具を使わない競技。午後からは玉入れや障害物競走などの準備が必要な競技。というようなプログラムになっている。最初は…短距離か。次に借り物競争…早いな…。仕方ない。その後にリレーか。そして――。


集合時間か。

「行っといで〜」

「少しだけ頑張るか。」


よーいどんの合図でスタートした。

「さて…お題はっと………は?」

俺はすぐに照の所に走った。

「照、来てくれ。」

「ん。お題は何だったの?」

「秘密だ。」

「そ。」

2着目でゴール。1着、速すぎだろ。

「お題の確認をします。えっと…大切な人。大丈夫ですね。」

「……大切な…人。」

「1番じゃないけどな。」

「知ってる。頑張ったね。輝。」

「ああ。」



次にリレー…結果は2位だった。照はアンカーでバトンが渡された時は最下位だったが、一気に盛り返した。

「お疲れさん。速かったな。」

「でしょ〜。逃げてたらいつの間にか速くなってたんだよね。」

「逃げてた?」

「……ごめん……忘れて。」

「無理。でも、いつか、話してくれる日を待つよ。」

「うん。ありがと。」


昼食を食べ終え、玉入れを行う。背が高い人は簡単に投げ入れられる。背が低い人の中には、籠にすら届かないという人もいる。つまり、身長が高い人が多いと有利になるということ。俺は、身長はあまり高い方ではないが、投げる力を調節することで籠に玉を入れた。ほとんど外したけど。

結果は2位だった。


俺が出る競技は終わった。後は終わるのを待つだけだ。




「お疲れ〜。」

「無事に運動せずに済んだよ…。」

「…あはは…」

「帰るか。」

「うん。」



こうして。体育祭は幕を下ろした。

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