第二章 〜輝と照と猫〜
第二章
1月6日。つまり、影花の誕生日。輝と照は、ショッピングモールに来ていた。
「葬式に持って行く花ねぇ…なんで前日までに準備しとかないのさ…。」
「そういう照だって準備してないだろ。」
「テヘッ」
「全く…白のユリで良いんだっけ。」
「うん。供花っていうんだって。」
「それくらいの知識はある。」
「そう。良かった。」
時間は…
「会計済ませたら急ぐぞ。」
「オッケー。」
俺達は、急ぎつつも安全に式場へと向かった。
その後、式は滞りなく進み、俺達は帰ることにした。
「照、少し、寄り道しないか?」
「良いよ。私みたいな可愛い子を連れてどこに向かうのかな?」
「そうか。自画自賛しすぎると引かれるからな。気をつけろよ。」
「…分かってるよ。」
まぁ…一応、照は可愛い部類に入る。容姿は整っていて、髪は肩より少し下くらいの長さ。俺の意見では、影花の次に可愛いと思う。
「んで、どこに行くの?」
「公園。」
「あー…確かにここからは近いね。」
「………どこの公園か言ってないのにどうして分かるんだ?」
「あーー…えっと……私も、同じアパートに住んでいたからって言えば良いのかな?」
「……は?」
「ホントだよ!だから輝の事情も知ってるの!」
「あー、なるほど。」
「納得できちゃうんだ。」
「っと、話してる間にもう……ん?何か聞こえないか?」
「…ホントだ。――猫の鳴き声?」
「少し急ごう。」
「うん。」
少しだけ走り、公園に。そこには、
「……可愛いっ。」
出産直後の赤ちゃん猫と、母猫がいた。
捨て猫でないことに安堵しつつ、俺は感動していた。
新たな生命の誕生。生命には、人間も猫も関係ない。そう、思わせてくれた。要するに、赤ちゃんは可愛い!
赤ちゃん猫を堪能した後、俺達は帰った。その間に、こんな会話をした。
「猫、可愛かったな。」
「私ね、あの小さい肉球で癒やされたい!」
「……薄々気付いたが、念の為聞く。一番好きな動物」
「猫。」
ですよね、はい。
後、数日間は平和に過ぎていった。照に、スマホの待受画面の画像が影花だってことに気づかれた時は焦ったが。その時照は、笑っていたが、どこか寂しげだった気がする。
1月16日。始業式があった日の放課後。猫が俺の家の前に座っていた。10日前に見た、赤ちゃん猫だった。
「……えっと……マジ?」
猫がなんで家の前にいるんだよ。確かにそこまで遠くないとはいえ、まだ生後10日だぞ?成長が流石に早すぎないか?とりあえず、近くの動物病院に連れてってみるか。っと、その前に照に電話しないとだな。
結果から言うと、異常は何もなく、健康そのものだった。飛んできてくれた照にも感謝だが、この子をどうするか……。
「何かいい案は……」
「私の家では飼えない。」
「親が猫アレルギーなのか?」
「いいや。アレルギーはない。」
「じゃぁ…いや、何でもない。」
照には照の事情があるのだろう。
「俺の家で飼うか。」
「ホントに!?」
「それが1番良いだろ。」
猫が同意するように、ニャアと鳴く。
「決まりだな。今からペットショップに行こう。必要な物は大抵売ってるだろ。」
「それじゃあレッツゴー!」
「ニャア!」
……可愛すぎだろ。
ペットショップに着いた。店員さんに色々聞くことにした。
「あの、猫を飼うのに必要なものってどこらへんにありますか?」
「付いてきてください。」
ペットショップって、いろんな物を売っているんだな。犬用品や魚用品、ハムスター用品、亀用品まである。大量のペット用品の中から猫用品を見つけるのは大変だっただろうから、店員さんには感謝だ。たまに茶化してきて、照が赤面していたが。
「こちらになります。」
「ありがとうございます。」
「えっと…おすすめってありますか?」
「えーっとですね…トイレでしたらあまり匂いがしない、これ、爪とぎは…これですかね。価格も良心的ですので。」
「なるほど。ありがとうございます。」
「猫ちゃん、いっぱい可愛がってあげてくださいね。」
「はい。」
店員さんは次のお客さんの相手をしに行った。とりあえずこの2つは決まりとして、ほかは、
「寝床とキャットフード、いや、ミルクか?」
「どっちも買っておこう。それとも離乳食?」
「離乳食にしようか。食器も忘れずに。あとは、おもちゃと…」
「かわいい首輪を着けてあげたい。」
「分かった。」
と、いうような感じで必要なものを買った。
今思うと、どうして店員さんはたったの2つしか紹介してくれなかったんだろうか。気まぐれだと思うが…。
「あの性格だよ?狙ってやったんだよ。」
「……何を狙ったんだろうな。」
「……バカ……」
「ニャア。」
「なんで猫も照に同意してるんだよ!」
「…鈍感」
「どういうことだよ…」
もはや反論する気にもなれなかった。
「さて、どこに置こうか?」
「部屋の広さが仇となっているんだが…」
「こういう時は猫に任せようよ。」
「にゃ〜。」
猫は、まるで輝の家の間取りを熟知しているかのように歩いた。そして猫は、輝の部屋の近くに座った。
「にゃ。」
「そこが良いのか。」
「にゃぁ!」
「それじゃあ置くぞー。」
全てのものを置き終えた。
「よし。今日からここが家だぞ。えっと…名前決めてないや。」
「あ、確かに。」
…何か…いい名前……―――あ…
「影花。一文字貰っても良いかい?」
「…良いね…それ。」
「
影は、目を輝かせて言った。
「にゃ!」
・・・
「影、一応、名前の由来について話しておくよ。猫だから理解できないかもだけどな…。俺にはさ、大切な人がいたんだ。影花っていうんだけど、俺は………俺はその子のことを幸せにできなかった。だから、君には影花にしてやれなかったことを目一杯してあげて、たくさん幸せにしたい。そういう理由でつけた名前なんだよ。絶対、幸せにするからな。影。」
「にゃん。」
そして影は玄関の方へ行き、にゃあ。と一つ鳴いた。
「ん?どうした?」
インターホンが鳴った。
「なるほどな。」
扉を開けると、案の定、照がいた。
「来ちゃった。」
「そうか。」
「影ちゃん。」
「にゃん。」
影は外を見ている。
「散歩か?」
「にゃあ!」
「行くか。もちろん、照も一緒に。」
「――うん!」
「寒…」
さすが1月。寒い。照は着込んでて温かそうだ。俺ももう少し考えれば良かったか。
「影ちゃん、寒くない?」
「にゃぁん……」
「寒そうだな。服、買いに行くか。」
「そうだね。」
「にゃ。」
ってことで、今はペットショップに来ている。
影の服は照に任せることにしよう。
「照、任せたぞ。」
「任されたよ!」
・・・
数分で影の服は決まった。淡いピンク色の服が選ばれた。
「にゃあ!」
影は嬉しそうだ。
それから、少し散歩して、家に帰った。
影は、俺が学校に行っている時や、出かける時などに、イタズラをしない。とてもいい子だ。
ずっと、この日常が続いてほしい。
それが叶わないことは、知っている。
・・・
今日も、インターホンを押す。大好きな、2人に会うために。家から、家族から、少しでも逃げ出すために。私は今日も、輝の家のインターホンを鳴らす。
「おー、照。悪いな。今日はこれからバイトなんだよ。」
「バイトかー。なら仕方ないね。それじゃあ、」
「にゃあ…にゃん!」
「……はぁ、わかったよ。照。これ。」
「なにこれ。」
「家の合鍵。俺がいなくても家に出入りできるだろ。」
「イタズラするかもよ?」
「大丈夫だって信じてるから渡してるんだよ。」
「そう。ありがとね!」
「それじゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。輝。」
「にゃー。」
鍵、もらっちゃった。
「影ちゃん、何したい?」
「にゃにゃ。」
「散歩?」
「にゃあ!」
「分かった。それじゃあ準備しよう……どこにあるんだっけ?」
「にゃあ……。」
影は、呆れたように鳴き、散歩道具を取りに行った。
「ありがと。」
照は影に服を着せた。
「それじゃあ行こっか。」
「にゃあ!」
散歩を始めて5分程経った時、不意に影ちゃんが走り出した。
「影ちゃん!?」
どこに向かうのだろう。どうして走り出したのだろう。
その疑問は、すぐに解消された。あの公園。影が、生まれた公園に走っていた。
やや遅れて公園に着いた私は、信じられないものを見た。
「影ちゃ…影花!?」
公園にいたのは、影花だった。
「影花、どうして」
「照、無事に生まれ変わったよ。照の、大好きな動物に。」
そっか…だから、
「うん。あの手紙に、書いてあった。」
「まさか同じような名前を付けられるとは思ってなかったけど。」
「そうだね。影花、ずっとこのままってことは、」
「無理。輝には言わないで。私は、ここでしかこの姿にはなれない。そして、1日10分だけ。それ以外は、猫の影なんだよ。休息期間も必要だけど。」
「そう…なんだ。」
「ねぇ、照は輝のこと、どう思ってるの?」
「好きだよ。でも、」
「輝は、私のことが今でも好き。でしょ?」
「その通りだよ。」
「私も、輝のことが好き。もう、叶わないけど。輝も、わかってるんだと思う。だけど、怖いんだ。一歩が、踏み出せないだけなんだよ。きっと。背中を押してあげて。照の、照だけの方法で。」
「分かった。」
「それじゃあ、戻るね。」
「帰ろっか。」
影花は、猫に戻って言った。
「にゃあ!」
・・・
「ただいま。」
「おかえり、輝。」
……え?
「まだいたのか。帰らないのか?」
「まだ大丈夫。」
「そうか。まぁ、好きにしてろ。」
いつまでいるつもりなのやら。影と楽しく遊んでいるから、よしとしておくか……。しかし、この何もない家に4時間いるなんて、思いもしなかった。8時までには帰ってもらうか。あと30分、好きにすれば良い。俺は夕食でも作るか。
・・・
20分経った。
「影ちゃ〜ん」
帰ろうとする様子がない。
「照、夕食できたけど、」
「食べる。」
「即答!?……食べたら帰れよ。」
「はーい。」
「影もごはん、食べるだろ?」
「にゃ!」
さて、俺も食べるか。
「いただきます。」
・・・
「それじゃあまたね。輝、影ちゃん。」
「気を付けて帰れよ。」
「にゃにゃー。」
………照のいない家は、思ったよりも寂しかった。
・・・
「ん…」
朝か。
「おはよ。影。」
「にゃぁ……」
顔を洗い、朝食の準備をする。
「影ー。朝ごはんできたぞー。」
「にゃぁ…」
眠そうだな。そういう俺も眠い…。
「いただきます。」
準備を済ませ、少し、影と話す。
「今日はどうする?」
「にゃ?」
「散歩」
「にゃ〜……にゃ!」
床に置いてある数字の上に手を置き、コミュニケーションをとる。どうやら影は、人の言葉を完璧に理解できるらしい。
「4時か。昨日と同じ時間だな。」
「にゃん!」
「何かほしいものは?」
「にゃ〜… 」
「今は特にないと。分かった。それじゃあ、そろそろ時間だから。」
「にゃ。」
「行ってきます。」
「にゃにゃー。」
と、いつも通りの日々を過ごしていった。何も起こらず、ただただ平和な日々が過ぎていく。
この日々には、終わりがない。そう思わせてくれる程。
そして、あっという間に2月14日になろうとしていた。
・・・
うーん…どうしよう。どうやって渡そう………。
今日は、2月14日。バレンタイン。私は輝のためにチョコを作ったけど……渡す隙がない。輝の家で渡しても良いけど、今日はバイトがあるらしいし、前みたいにずっと家にいるわけにもいかない。今日は親が早く帰ってくるらしいから。最早為すすべ無し、と言ったところ。
「どうしたの?照にしては珍しい顔をしてるよ?」
「
「ふ〜ん。輝君にねぇ。」
「なんでニヤついてるのさ。」
「だって…照にも好きな人がいたんだなーって思って。」
「と、友チョコだよっ。」
友チョコ?いいや、本命だ。慌てて嘘を言ってしまった。
「そっか〜。本命か〜。やっぱり好きなんだね。」
「へ?」
「顔に出てるよ?」
「うう…。」
「頑張って。帰り道とか、家の前とか。候補はまだまだあるんだから。」
「うん…。ありがとね。三夏。」
「どういたしまして。恋する乙女さん。」
「からかわないでよぉ……」
「えへ。」
でも…まぁ、良かった。ちゃんと渡そう。きっと、大丈夫だ。
・・・
いつも通りの朝。学校では、男子がそわそわしている。一部の女子もそわそわしている。何の変哲もない日のはずなのに、なぜ?今日は2月14日。ただそれだけだ。特別な何かがあるとしても、俺は知らない。
そのまま何事も無く放課後になった。やはり、何も起こらない。
「照。帰るぞ。」
「あ、う、うん。」
「どうした?落ち着きがないけど。」
「なんでもない。」
「そう。」
照もそわそわしているのか?まぁ、俺には関係ないことだ。
その後も、照はあまり落ち着きがなかった。なぜなのか、疑問に思っていたら、いつの間にか家に着いていた。
「それじゃあ、」
「ま、待って!」
「ん?」
「これ!」
そう言い、照は袋を渡してきた。
「どうしたんだ?急に。」
「え…まさか今日が何の日か知らないの?」
「?何か特別な日なのか?」
「バレンタインだよっ!」
「……あーー。あったなそんな習慣。」
「…バカ」
「つまりこの中はチョコか。ありがとな。」
「どういたしまして。それじゃあ、帰るね。」
「ああ。また明日。」
バレンタインか…自分とは無縁のことだと思っていたから忘れていた。いるんだな。俺にチョコを渡す人が。
「照。ありがと。」
・・・
はぁ…まさか今日のイベントを知らなかっただなんて。気付いた後にお礼を言ってくれたのは嬉しいけど……流石に驚いたなぁ。ホワイトデーにはお返し貰えるよね?忘れていたとかないよね?大丈夫…大丈夫……だよね?
・・・
照がくれたチョコは美味しかった。確か、ホワイトデーとやらがあったな。いつ?えっと……3月14日……なるほど。先の話だな。何をお返しにしようか。まぁ、ゆっくり考えればいいか。
・・・
3月に入った。
ホワイトデーのお返しを考え始めないとな。そもそもお返しに意味はあるのか?ネットで調べるか…。
えっと、
『マシュマロ:優しくお断り。クッキー:仲の良い友達。マカロン:あなたを特別な人だと思ってる。チョコ:あなたと同じ気持ちです。』
他にも色々あるが、クッキーが良さそうだな。もしも影花だったら、マカロンにしていた。
「影花……」
「にゃぁ…」
影…ありがと。
大丈夫…今は、照と影がいる。
13日に買いに行くか。
・・・
14日になった。朝、輝をいつもの場所で待つ。お返しはくれるのかな。どんなお返しかな。
「おはよう。はい、これ。お返し。」
「ありがと。」
え?これだけ…輝らしいからいいか。
中身はクッキーだった。私の気持ちは伝わっていない。少し、寂しいけど…良かった気もする。きっと、輝は影花のことを想い続けているはずだ。私の気持ちは、言葉にしないと伝わらない。分かってる。輝が、私のことを振ることも。分かってるよ。でも、少しでも良いから、私を見てほしい。振り向いてほしい。ただ、それだけ。
輝は、照の気持ちに気づかずに、いつも通りの日々を送る。
春休みに、2人はショッピングモールに出掛けた。照は、輝に星型のキーホルダーをプレゼントした。輝は、照に色違いのキーホルダーをプレゼントした。照は喜んだ。輝は下心というものがないことを分かっていながら、明るく笑った。ありがとう。と、感謝の言葉を添えて。
そして春休みが終わり、輝達は2年生になろうとしていた。
影花の死から3ヶ月。輝の想いは、ずっと変わっていない。
・・・
春休みが終わり、俺達は2年生になる。もちろんクラス替えはあるが、興味ない。一緒のクラスになりたいという人はいな…いや…照がいたら孤立はしないか。もしかして、俺は照を縛り付けているんじゃ……。影花が、いなくなったから。ああ、影花がいたら、願いながら行ったんだろう。だが…今はいない。代わりに影がいる。ただそれだけ。いつまでも隣で笑っていてくれれば、俺は変わっていたのかもしれない。
「っ………」
「にゃぁ……にゃーにゃー。」
慰めてくれてるのか…
「あり…がと……。」
不意に、声が聞こえた。
『大丈夫。私は、いつでも輝の側にいるから。』
心臓が跳ねた。
「えい…か?影花?」
「にゃあ!」
今のは…いったい…?
・・・
……遅い。なんで!?こうなったら輝の家に行こう。大丈夫。まだ時間はある。
輝の家に着いた。インターホンを押す。
「にゃ!?にゃー。」
「影ちゃん。輝は!?」
鍵が開き、影ちゃん、いや、影花が出てきた。
「もう、学校に行ったよ。」
「ええ!?影花、前の話って…」
「あー。えっと…ごめん。嘘ついた。」
「まぁいいや。どうして輝は1人で行ったの?」
「分からない……照を置いていくなんて……」
「そっか。それじゃあ、聞いてみないとね。行ってきます。」
私は急いだ。
「行ってらっしゃい。………学校かぁ…私も、行きたかったな……。照、輝をよろしくね。」
・・・
えっと…クラスは…4組か。照は……いや、いいか。もう、いいんだ。照と関わっても、照に迷惑がかかるだけ。俺なんかが、照と関わってはいけないんだ――。
・・・
結局、学校にはギリギリに着いて、輝のクラスを確認できなかった。しかも、放課後になっても輝は見つけられず、家にもいない。影ちゃんに聞いても分からないって。影ちゃんと探しているけど、全く見つからない。
「輝…どこ…?」
日は暮れかかり、空が赤く染まっている。
もう、輝は見つからない。そう、思ってしまった。だけど、諦めたくなかった。
「見つかった?」
「にゃぁ…。」
「そう……輝、どこにいるの?」
どこか、探していない場所は………
「公園、探した?」
「にゃ…!にゃ!」
「行こう。」
日は暮れ、暗くなっている。私は、祈るような気持ちで、夜空の中を走った。
ああ…良かった…見つけた。
「輝…」
輝は、振り返らずに言った。
「……どうして、来たんだよ。」
「心配だったから。」
「俺なんかと一緒にいて、時間の無駄だろ。もう、君を縛りたくない。」
なんでなんで…どうして輝は、自分のことを卑下して、いなくなったのは私のため?
「バカ…」
「?」
「バカ!輝のバカ!」
「は?」
「私がいつ輝と一緒にいて嫌だと言った!?私は、輝と一緒にいたいから一緒にいるの!私は、君と過ごす時間が、一番心が楽になる。それでもダメなの?」
「俺の他に、もっといい人が」
「輝が良いの!輝のことが、好きだから!」
ああ…勢いで言ってしまった。
「……そうか…帰るか。影、いるんだろ。」
影ちゃんには、壁裏に隠れてもらっていたけど…
「残念。今は影じゃ無いよ。」
出てきたのは、影花だった。
「影花!ダメ!」
「影花…」
「ごめんね、輝。今まで、黙ってて。照、少し、待ってて。」
「…分かった。」
「影花…どうして、」
「輝、今日でお別れだよ。猫の影は、今日で最期。私は、この世界から消えてしまうんだよね。神様との約束。」
「っ……そう…か。」
「輝、照は君に、好きだって伝えたよ?返事は、しなくていいの?」
「……」
えっと…急…だね。
「…まだ…分からない。俺は、影花が好きだから。」
「……えっと…不意打ちはずるいよ、輝…」
「影花…ここで口を挟んじゃう?まぁ、予想通りの回答だったからいいけどさぁ…。」
「ごめん。」
「それじゃあ、輝、照。私からの、最後のお願い。本当は、いつまでも、輝の側に、隣にいたかったけどね。……2人とも、幸せになってね。」
頷く。
「それじゃあ、バイバイ。」
「バイバイ。影花。」
「またな。」
影花は、光の粒になって消えた。同時に、影もいなくなった。まるで、最初から猫なんかいなかったかのように。
「照。ちゃんと返事ができるようになったら言うから。待っててくれるか?」
「もちろん!」
「んじゃ、帰るか。」
私達は、また歩き出した。
第二章〜end
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