第103話 魔神竜戦
「グルアアアアアアアアアアア!!!」
魔神竜が腕を薙ぎ払う。轟音と共にその爪が床を抉り取る。その巨大な腕がジェラルド達を襲う。
「ロナ!! 来い!!」
「うん!」
ジェラルドがロナを抱き止め、ガントレットを大地へ向ける。
「
ガントレットがバカリと開く。そこから
「師匠! マント!」
「ああ!」
ジェラルドが飛び上がったと同時に、ロナがマントで2人を包む。直後、2人の下で猛烈な爆発が起こり、2人を上空へと吹き飛ばす。
「師匠! 掴んでてね!」
ロナが飛び上がり、その脚をジェラルドが掴む。その瞬間、ロナがルミノスソードから技を放つ
「クロスラッシュ!!」
成長したロナが放つ十字の斬撃。その一撃が魔神竜の顔面に叩き付けられる。
「グルオオアアアアアア!!」
叫ぶ魔神竜。竜は、ジェラルド達を捕えようとその手を伸ばした。
「エアスラッシュ!!」
「
空気の刃と爆風がその腕を吹き飛ばす。
「ブリジット!! 頼む!!」
「行くでありますよ!!」
「ギ!!」
「ギギ!!」
ブリジットと2体の魔導騎士か魔神竜の右脚へと攻撃を加える。それと同時にもう3体の魔導騎士が左脚へ。腕と両脚。同時に衝撃に見舞われた魔神竜は、バランスを大きく崩し、大地へと倒れ込む。
「グルアアアアアア!!?」
響き渡る轟音。部屋をめちゃくちゃに破壊しながら魔神竜がその全身から黒い光を発射する。
「っぶねぇ!?」
ジェラルド達に攻撃が当たる瞬間、ロナが「エアスラッシュ」で落下の速度を柔げ回避する。彼らを外した黒い光は、天井を切り裂き、穴を開けた。
「しめた! もう一度エアスラッシュだ!」
「分かったよ!」
再び放つエアスラッシュ。それが天井へと直撃し、脆くなって天井がガラガラと崩れて行く。それが魔神竜へと直撃し、魔神竜は大地へと叩き付けられる。
「ひゃあああああ!! 潰されるでありますぅ!?」
「ギィ!?」
「ギギギ〜!!」
逃げ惑うブリジット達。その背後で再び魔神竜が起き上がった。
両眼が眩く光り、大きく開けた口にエネルギーが集約されて行く。眩いまでに凝縮されたエネルギーは魔王の間を明るく照らす。
「カアアアアアアアアアアアアアアアア……っ!!」
「マズイ! ブレス攻撃が来る! 撃たせるな!!」
ジェラルドの声に合わせて、仮面の男、レウスがその手を空高く掲げ、魔法名を告げる。
「
その声と共に、魔力が上空へと昇っていく。3体の飛竜が現れる。
「「「キュオオオオオオオオオオンンン!!!」」」
魔神竜よりも小さいが、3体の飛竜がその全身へと噛み付いていく。
「グギャアアアアアアアア!!?」
雄叫びを上げる魔神竜。竜が見上げた頭上には
「私がトドメを刺してあげる!!
エオルが両手を勢いよく降ろすと、煬炎魔法が魔神竜の口へと向かう。
「グルア!! グルアアアアアア!!」
その熱に反応した魔神竜が逃れようと飛竜の1体を壁に叩き付ける。あまりの衝撃で、1体の飛竜は形状を維持できず、消え去ってしまう。
「く……っ! 逃すな!」
「「「キュオオオオオ!!」」」
レウスが魔力の
「グルアアアアアアアアアアア!!!」
「終わりよ!!」
エオルの煬炎魔法が魔神竜の口へ直撃する。ブレス攻撃のエネルギーとエオルの魔法がぶつかり、その空間を
「カッ……っ!?」
ジェラルド達全員が目を閉じる。
光。
眩い光。
それが急速に引いていく。
光が消えた後、最初に目を開いたのはエオルだった。
「魔神竜は……?」
エオルが目を向けるとそこには……。
「カアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
今にもブレスを発射しようとする魔神竜がいた。顔は原型をとどめておらず、両眼さえ見えなくなったであろう魔神竜が……それでもなお攻撃の態勢を崩していなかった。
「嘘。ちょっとタフすぎない……?」
止まらぬブレス攻撃のチャージ。
「カッ!!!」
発射されるブレス。
眩い光にエオルが目を細めた次の瞬間——。
「
聞き慣れた声と共に、空間が歪む。
「ガ、ア、アアア、ア……」
その直後、魔神竜の首が切断され、空へとブレスが発射される。魔王城の天井に発射されたブレスが爆発を巻き起こす。魔王城の上部には巨大な穴が空き、魔王の間に光のカーテンが降り注ぐ。
魔神竜の大地へと落ちていく。地面へと激突し大地を揺らした。
困惑するエオルの耳にカシャンという鎧のような足音が聞こえる。
「真打ちはジブンでありましたな! エオル殿!」
そこには、脳天気に斧を構える鎧騎士が立っていた。
「はぁ……心臓に悪すぎよ……」
エオルの安堵と共に、魔神竜は経験値の光となって勇者パーティーのメンバーへと吸収されていった。
◇◇◇
激しい戦いが繰り広げられた魔王の間。その中央でジェラルドが全員に声をかける。
「今のうちに体力と魔力を回復しとけ。すぐ魔王戦だ」
「はぁ……キッツイわねぇ……」
「皆攻撃をまともに受けなくて良かったでありますな」
「何言ってんだよブリジット。直撃してたら即死だったかもしれねぇぜ? 魔神竜は攻撃力全振りの竜だからな」
「ひいいいぃぃぃ……っ!? 良く生きているでありますなぁ!?」
ブルブルと身震いするブリジット。魔導騎士達はそれが指示だと思ったのか、彼女の真似をし始めた。
「ちょっ。やめさせなさいよ」
「ブリジットがいるとこんな時でも和むね〜」
ロナがそんな様子を見ながら笑みを浮かべる。
その時。
レウスがゆっくりとロナへ歩みよった。
「レウス? どうした?」
ジェラルドは、仮面の奥の瞳と目があったような気がした。しかし、彼の問いかけにレウスは答えない。
「ロナさん」
レウスが回復薬を差し出す。ロナは一瞬、怪訝な顔をしたが、それを受け取った。
「レウスさん。ありが──」
レウスがロナの腕を掴む。
「え?」
驚いた表情のロナを引き寄せ、仮面を外したレウスが彼女の瞳を覗き込む。
「
「あ、……う……」
精神支配をかけられ、
「レウス! 何やってるのよ!!」
「ロナ殿に何を……っ!?」
「……っ?」
「動くな」
レウスが「
「魔王様」
彼の声に合わせたように空中にボワリと黒い影が浮かぶ。角の生えた頭にコウモリのように黒い羽根。黒い鎧を装備している以外は……ジェラルドは確かにその姿を見たことがあった。
ゲイル族の里。ドロシーの記憶の中で……。
魔王デスタロウズが、ゆっくりと大地へと舞い降りる。
「随分手間を取ったようだが?」
「申し訳ございません。奴らを
「この責任は重い。王都陥落後は……分かっているな?」
「覚悟はできております」
「まぁいい。せいぜい陥落までに武勲を立てるのだな。私の気が変わるように」
「はっ」
レウスが
「レウス!! なんだよこれは!?」
ジェラルドが叫ぶ。その声にレウス——魔王軍知将シリウスはポツリと呟いた。
「全て予定通りですよ。器さえ手に入れば何も問題無い」
仮面を外した彼の顔は人形のように生気の無い顔をしていた。
―――――――――――
あとがき。
レウスの裏切りによって魔王の手に落ちたロナ。次回。ジェラルド達は……?
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