王都襲撃編
第94話 隻眼の意志
──王都エメラルダス。
ジェラルドとロナはオウンス王へと王都攻撃の情報を伝えた。
イリス部隊の先行投入。そして、それと時を同じくして開始される、大規模部隊による別方向からの攻撃という情報を。
「ジェラルド殿!? その話は本当なのか!?」
オウンス王が玉座から身を乗り出す。
「この状況で嘘なんてつく必要あるか?」
「そ、そうだな……すまなかった」
王の様子を見てジェラルドが腕を組む。
王の動揺も理解できるぜ。今までギギン、エメラルダス周辺には進軍して来なかったヤツらがこのタイミングで仕掛けて来る……サザンファムとの同盟前に潰すって魂胆かよ。
「だが、信用できるのか? その魔王軍の裏切り者というのは?」
「ああ。ヤツの目的は魔王を倒すこと。それは
「ジェラルド殿がそう言うのなら……信じよう」
レウスからあった
「俺達は魔導列車ホームでイリスを迎え撃つ。魔王軍本体はエメラルダス軍に任せるぜ」
大臣のパトリックが声を荒げる。
「勇者パーティには敵軍本体と戦って貰うべきでしょう!? サザンファムで大量の敵を燃やし尽くしたのだろう!? そんな力を持っているのであれば最前線で戦うべきだ!」
「大臣のおっさん。俺達はイリスと戦わなきゃいけねぇんだ」
「何を!?」
興奮するパトリックをオウンス王が手で制した。
「待てパトリック。まずは彼らの話を最後まで聞こうではないか」
「ロナ。頼む」
ジェラルドの視線を受けて、ロナはコクリと頷いた。
「王様。大臣のおじさん。僕達は魔王軍知将シリウスの提案を受けてあることを行います」
「あること、とは?」
「魔導騎士はそれを操る魔導書によって従う者を変える。だから、イリスから魔導書を奪います」
「奪ってどうするつもりだ! 戦争になるのだぞ!? それが始まればその程度では……」
「大臣さん。違うよ。僕達は、その魔導騎士達を連れて
「なんと……」
「突入……?」
ロナの言葉に呆然とするパトリックとオウンス王。我に帰った王が玉座から立ち上がった。
「ロナ殿! それは危険すぎる! 罠かもしれんのだぞ!」
声を荒げるオウンス王。それが、ロナ達を心配してだと感じ、彼女は微笑みを浮かべた。
「大丈夫。これは僕達にとっても絶好の機会なんだ」
レウスの提案とは
「1番危険な役回りは俺達が。これなら大臣のオッサンも納得だろ?」
原作知識のある俺はレウスに
「俺達が魔王を討つ。そうすりゃそのまま戦闘も終結するってことさ」
「だが……」
オウンス王は疑問を持っていた。魔王城へと乗り込む。それも裏切り者とはいえ、幹部からの提案。それを採用するのはあまりに無謀では無いかと。ロナ達が騙されている可能性も十分考えられる。
疑問を口にしようとした王。そんな彼はふと気づく。ジェラルドの隻眼が真っ直ぐに自分を見つめていることに。
「いや、勇者達がそこまで言うのだ。我らは信じよう。君たちの力を」
「お、オウンス王……!? ですが!」
「パトリック。そもそも情けない話とは思わんか? 己の国を守ることを勇者達に頼るなどと。ただでさえ彼らは魔王と戦ってくれているのだ。我らは我らの最善を尽くさねばなるまい」
「むうう……確かに、それは、その通りですな……」
震える拳を握りしめるパトリック。彼は意を決したようにジェラルド達へと口を開いた。
「すまなかった。この国の大臣として勇者殿達に恥ずかしい申し出を……許してほしい」
「王様……大臣さん……ありがとう」
ロナは彼らの言葉を噛み締めるように目を閉じる。そして確固たる意志を込めた瞳で王を見つめた。
「魔王は僕達が必ず倒すよ」
「うむ。情けない我らだが、最大限の援護はさせて貰おう。
「うん!」
ロナへと微笑むオウンス王。それと同時に彼は何かを悟った。彼女を守るように側に立つ勇者の師。ジェラルドには何か考えがあるのだと。
そして、それはきっと勇者ロナには言えない何かなのだと。
―――――――――――
あとがき。
ジェラルドは何かを考えている様子……次回、時間は少し進み、決戦前夜のお話をお送りします。
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