第54話 新たなる旅立ち
サザンファムで数日の時を過ごした頃、ジェラルド達はアゾム女王へ呼び出された。
謁見の間では女王が微笑みを浮かべて待っていた。
「ロナさん。この前はどうもありがとう」
「ううん。僕も何かしたかったから」
ロナはアゾム女王に魔王について教えてもらう中で交流を深めていた。
ロナが女王が傷ついていたことを気遣い、女騎士ルリーナの埋葬に立ちあったりと女王を支えようと努め、その影響で女王もほんの少しずつだが明るさを取り戻していた。
「もしサザンファムに住みたくなった時は私に言って下さいね。特別待遇でお迎えします」
「い、いえ……僕は特別待遇なんて……」
遠慮するロナに女王が少女のように意地悪な笑みを浮かべた。
「ふふ。ロナさんならそう言うかなと思っていました。何か困ったことがあればいつでも私に言って下さいね」
そう言うと、女王が真剣な顔つきへと変わる。そして、指示を出すと1人の兵士がジェラルドに何かを渡した。
「これは……」
それは古い地図だった。サザンファムから遥か東方。ボルティア地方の一ヶ所に印が打たれた地図。女王は、ジェラルド達が地図を確認したタイミングで1冊の本を取り出した。
「それは我が王室に眠っていた古き地図。貴方達の魔王討伐に役立つかと探し出しました。思いのほか時間がかかってしまいましたが……」
「これは何の地図なのよ?」
エオルの質問に、女王が本のページをめくる。
「そこには、この世界の秘宝『原初のアミュレット』の場所が記されています」
そのアイテムの名前にジェラルドの中で一気に緊張感が高まる。
来たか。原初のアミュレット。
それはロナ生存に必須アイテム。エンディングの分岐、魔王を倒す為の切り札の名前であった。
「原初のアミュレットはこの世界にとっての異物——その真実の姿を露わにするアミュレット。その輸送任務をお願いしたいのです」
「何に使うのでありますか?」
「アミュレットの光を使い、外界から来た魔王の真実の姿を引き
「でも、真実の姿って……イマイチ何の為なのか分からないであります」
疑問符を浮かべるブリジットにロナが説明する。
「女王様に聞いたんだ。この世界に現れたばかりの魔王はただの黒い影で、サザンファム軍の攻撃でダメージを負ったって」
「そう。しかし、戦闘の
「厳密に言えば魔王にダメージは与えるぜ。だが、その魔王の姿は仮初だ。倒したと思っても倒し切れていない」
「ジェラルドさんはよくご存知ですね。我らも勝利を確信した瞬間に魔王が復活し、兵士達の大半は消滅させられました」
アゾム女王が目を閉じる。それは、殺された兵士達へ思いを馳せているように見えた。
「貴方達のおかげで私もヤツへ立ち向かおうと決意できました。そして、辿り着いた答えが原初のアミュレットなのです」
女王の言葉にジェラルドが頷く。
「女王の話は真実だ。俺が保証する」
ロナもエオルもブリジットも、その瞳に疑いの色は浮かんでいなかった。彼女達は本能的に分かっていたのだ。ヴァルガンやフィリアの力を考えれば、その
「貴方達には原初のアミュレットの輸送をお願いしたいのです。
頭を下げる女王を、ロナが真っ直ぐな瞳で見つめる。
「安心して女王様。そのアミュレット。必ず女王様の元へ届けるね」
「任せなさい。私達は魔王軍幹部を2人も倒した勇者パーティよ」
「絶対任務遂行するであります!」
全員の意思を確認したジェラルドがニヤリと笑う。その姿からは絶対的な自信を感じさせた。
彼らの姿を見た女王が安心したように息を吐く。
「ありがとう。私も、もう恐れません。ルリーナの
「任されたぜ」
アゾム女王の依頼を受けたジェラルド。新たな目的を胸に彼は思う。
原初のアミュレットは魔王も存在に気付いているはず。輸送中に襲われる可能性が高い。何としても守り抜いてやる。
全ては弟子のロナの為に。彼女が笑って生きられる居場所を作ってやるために。
ジェラルドが頬を叩いて気合いを入れる。
「よっしゃ! いくぜ
こうして、ジェラルド達は新たな地域へと旅立った。
―――――――――――
あとがき。
新たな目的の為旅に出たジェラルド達。次回。ブリジットにある出来事が……?
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