第39話 アゾム女王の依頼
門を通るとその先には広大な地下空間が広がっていた。
「すごい……物凄く広い洞窟の中に街があるみたい……」
驚くロナ。そんな彼女にエオルが得意げに説明する。
「
「詳しいじゃねぇか。来たことあるのか?」
「う……ほ、本で読んだのよ……」
「にわか知識を得意げに語っていたのでありますな!」
ブリジットの言葉にエオルは顔を真っ赤にした。
「う、うるさいわね! 知らないよりいいでしょ!?」
兵士の案内で城へと向かうジェラルド達。石造りで作られた街並みは、エメラルダスとはまた違う雰囲気を
すれ違う人々には活気にあふれ、商人や職人の声が飛び交う。ロナもエオルもブリジットも、全員珍しそうにキョロキョロと辺りを見回す。
「なぁ門番さんよ。この街に交易はあるのか?」
「国同士のつながりはほぼありませんから、民間の商人に頼っていますね。なんといってもあれだけは豊富にありますから」
門番が指差した先では商人が宝石商と交渉を行なっていた。
「宝石が有名なの?」
ロナがジェラルドの後ろから顔を出す。
「地下ですからね。地上では希少な宝石類は豊富に取れるのですよ」
「宝石は
「僕のベニトアイトみたいなもんかぁ」
ロナがルミノスソードを撫でる。兵士がその様子をちらりと見た。
「
俺も
そんな会話をしていると、兵士が急に立ち止まる。
「お静かに。これよりアゾム女王様の領地。失礼の無いようお願い致します」
◇◇◇
その後、庭園を抜け検問をくぐり、アゾム女王の城へと入ったジェラルド達。
「王様がいる部屋はどこも似てるんだね」
「しっ。アゾム女王はエメラルダス王と違って厳格だから静かにしてな。俺が上手くやるからよ」
「ご、ごめん……」
ジェラルドがロナを安心させるように頭を撫でる。
その時、兵士の1人が号令をかけ、全員に
謁見の間の空気が急激に張り詰めていく。
しばらくすると高貴な様相の女性——アゾム女王が現れ、中央の玉座へと座った。
玉座の隣に立つ女騎士がジェラルド達をジロリと見つめた。その頭に付けられた花のような
ん? あの飾り……どこかで見た気が……。
「貴殿らがエメラルダスの勇者とその連れか」
ジェラルドの思考を
「俺達はこの勇者ロナと共に魔王討伐の任を受けている。その中で魔王軍がアゾム女王を狙っているとの情報を得た」
ジェラルドが女王へと視線を向ける。
「どうか俺達に女王様の護衛をさせて頂きたい」
ジェラルドの言葉を聞いた女王の目付きが鋭くなった。
「それはありがたいご忠告ですが、我らには魔法障壁があります。エメラルダスの手の者に世話になる
「それは外から攻撃を受けた場合だろ? 既にこの国に魔王軍が入り込んでるかもしれないぜ?」
女王の眉がピクリと動く。
「その言葉……我が国の兵達を
「女王様こそ魔王軍を舐めてるぜ。奴らは姿さえ変えることができる。自国を盲信すると痛い目を見る。そうなったら民はどうなる? サザンファム地下王国の女王は自国の民を何よりも大切にすると聞いてここに来たんだ」
ジェラルドは原作知識を元に最もらしい言葉を並び立てた。
「……」
アゾム女王が黙る。畳み掛けるようにジェラルドは言葉を続ける。
「考えてくれ。自国のプライドか、民の命か。何も起きなければそれでいいじゃねぇか」
謁見の間に沈黙が流れる。
原作のアゾム女王なら絶対に民を見捨てるようなことはしないはずだ。もし断るようなら次の手を……。
ジェラルドが女王の言葉を待っていると、先ほどの女騎士が声を上げた。
「アゾム様。
……こういう展開かよ。
「どうでしょう? 彼らの人間性、そして腕前を確かめる為に任を与えてみては?」
「ルリーナ。何か考えがあるのですか?」
女王を諭すように、ルリーナと呼ばれた女騎士が続ける。
「近頃、クリスタルの岩壁でモンスター被害が発生しております。我が軍も討伐隊を組織しようとしていた所……ならば、この者達にモンスター討伐を任せてみてはいかがでしょう?」
モンスターだと? 地下にそんなボスクラスいたか?
「ふむ。確かに案としてはいいかもしれません」
女王がジェラルド達へと視線を戻す。
「どうでしょう勇者達よ。モンスターを無事倒すことができれば貴方達の話を信じましょう」
ここでは絶対にアゾム女王を守らなきゃいけねぇ。ロナの為にも……。
「俺は受けるぜ。いいかみんな?」
ジェラルドがロナ達を見る。
「僕は他の人が犠牲になるのは嫌だ。だから、受けたい」
「人助けはジブンの使命であります」
「ふふ。決まりね」
ジェラルドが頷く。彼の隻眼がまっすぐに女王の瞳を見つめた。
「では詳細は後ほどルリーナより伝えましょう」
アゾム女王はうっすらと笑みを浮かべた。
―――――――――――
あとがき。
モンスター討伐を依頼されたジェラルド達。
次回、モンスターの棲家へ向かったジェラルドたちにある試練が……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます