魔導騎士編
第20話 勇者パーティ、新たな仲間の元へ
助け出したメイド達を連れてジェラルド達は館から最も近いレーデの街を訪れた。
「いやはや、
「執事さんはもう大丈夫なの?」
ジェラルドと戦った執事が、ロナの質問に人の良さそうな笑みを浮かべる。
操られていた時と比べ、その顔は
「もうすっかり大丈夫だよ。後の事は私が手配しよう」
メイドの1人がロナとエオルの手を取った。
「ロナさん達のおかげで家族の元へ帰れます……本当に……本当にありがとう……師匠さんも……」
「気にすんな。執事のおっさんが馬車手配してくれるからよ。気を付けてな」
「はい……」
そう言うと、助けられた者達は去って行った。
「メイドの中には魔法学院の生徒もいたわ。学生とはいえ魔導士すらやられちゃうなんてね」
エオルが肩をすくめる。
「ファントムフェイスは本来ずっと離れた森に現れる悪霊だ。
ジェラルドが
エオルがニヤニヤと笑みを浮かべた。
「普通のヤツ? それって私が特別だってことよね? やはり私は天才だったか……」
「し、師匠……エオルがニヤケすぎて怖いよ……」
「自己肯定感が回復していくのが分かるぜ……」
◇◇◇
宿屋での手続きを済ませたジェラルド達は食事を取る為に酒場へと入る。夕方の酒場は仕事を終えた労働者達で賑わっていた。
「すごいね! 王都も人が多かったけどここもすごい活気!」
「レーデの街は労働者が多いからな。夕方から深夜にかけて
キョロキョロと食堂を見渡すロナ。屈強な肉体を持つ労働者にぶつかったのをジェラルドが慌てて連れ戻し、なんとか席を確保する。
そして食事が届いた頃、エオルが口を開いた。
「ところで、この後はどうするのよ?」
「王都を出た時はドーケスの館に行くっていう目的があったけど、今は宙ぶらりんだもんね」
ロナが皿の上に乗ったヒュウチキンの山賊焼きをフォークで
「行儀悪いからやめてよロナ。ねぇジェラルド? 行く当てはあるの?」
「目的地は決まってるぜ。アレクス山脈だ」
「はぁ? 山脈?」
エオルが不思議そうな顔をする。
「そこの古代遺跡が目的だぜ」
「もしかして……仲間を迎えに行くの?」
「お、察しがいいなロナ。そこに鎧騎士がいるんだよ……そいつが」
「ちょっと待ちなさいよ。何でそんなこと知ってる訳? しかも確実に仲間になるような口ぶりだし」
混乱するエオルにロナは得意げな笑みを浮かべた。
「そっかぁエオルは知らなかったんだねぇ。師匠はね、あの眼帯の奥の瞳で過去、現在、未来が見通せるんだよ。そういうスキルを持ってるの」
「ん? あ、ああ! そうだぜ!」
そういやそういう設定で話してたな。
うぅん……そろそろ俺の目的話した方がいいか? でもなぁ……どうやって話す? 上手く言わねぇと俺がロナを利用する為に迎えに行ったってなるよなぁ。
まぁ……事実なんだけどよ。
チラリとロナを見る。
ジェラルドのことを得意げに話す姿に、罪悪感が湧き上がった。
もうちょっと……このままにしておくか。ロナが強くなる障害になるかもしれねぇしな。強くなることに損は無いし。
「だからね。伝説の戦士である師匠は特別なスキルを〜」
「はいウ」
「ウソ」と言おうとしたエオルが言葉を止める。
「……」
彼女は、ロナが得意げに話をしている姿をただ静かに見つめた。
「ま、信じてあげるわ。
「やっと分かったぁ?」
「まぁね」
得意げな顔をするロナを見て、彼女は優しげに笑う。
「それで、その鎧騎士がなんなの?」
「そうそう。その鎧騎士はな。古代遺跡を守ってる門番なんだ。強力な斧使いだから前衛にはもってこいだぜ」
「それだったら王都でも強力な前衛見つかりそうだけど」
ジェラルドが大袈裟に眼帯を押さえる。
「いや! 俺の右目が告げている! ソイツこそ魔王討伐の最後の鍵だとな!」
「すごいよ師匠! 魔王討伐の鍵まで分かっちゃうなんて!」
「は、はははは! 当然だぜ! いや〜伝説の戦士から賢者に転職しちまうかな〜」
「やっぱり怪しいわね……」
ジェラルドは、また本当のことを言うタイミングを失った。
◇◇◇
翌日からジェラルド達はアレクス山脈を目指した。
船で
遭遇したモンスターは打ち倒してロナ達の成長へと繋げた。ガルスソードの為に逃げる事も多かったが。
……。
そして2週間後。
——アレクス山脈。
「お、見えて来たぞ。古代遺跡だ」
「すごい! 遺跡なんて初めて見た!」
ロナが目を輝かせながら遺跡へと駆け出して行く。反対にエオルは杖をつき肩で息をしていた。
「よ、よくあんな険しい道通った後に元気でいられるわね……」
「ロナには体力上昇のエナジーキャロット中心の食事与えてたからな」
「それで……ていうかアンタ食事管理までしてたの!?」
「そりゃあな。健康な肉体は健康な食事から作られるぜ」
「いやらしい……」
「は? 何が?」
「なんでもないわ」
んん? よくわかんねぇな……。
ジェラルドが視線を戻すと、ロナが岩の上をヒョイヒョイと飛び移っていた。その動きは、明らかに出会った頃の彼女とは一線を画している。
あの体力の上昇具合、エナジーキャロットによるステータスアップだけじゃねぇな。そろそろロナ
……ロナの出自の話もしねぇとなぁ。それもタイミング計んなきゃいけねぇな。
「師匠!! エオル!! 古代遺跡が!?」
突然のロナの声にジェラルド達が走る。
遺跡へと辿り着いた時、2人は声を失った。
「なんだよこれ……」
ジェラルド達の目の前に古代遺跡がそびえ立つ。
しかし、そこには破壊された入り口と、全身バラバラにされた鎧騎士が横たわっていた。
―――――――――――
あとがき。
古代遺跡前には鎧騎士の遺体が……。
驚愕するロナ達。そんな中、エオルがあることに気付いて……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます