性癖について語る猟奇殺人鬼と一定の理解を示す魔法使い

ボクとアーケアスが顔の無い使用人フェイスレスのボスの元に来ると

そこに居たのは剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパーだった。


「驚いた、 大物じゃないか」

「有名人なの?」


アーケアスが尋ねる。


剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパー

娼婦を殺して皮を剥いで回ってる殺人鬼だ、 姿見を見た事有る」

「顔が割れてるのに何で逮捕されないの?」

「分からなかったが・・・顔を隠していたらそりゃあ見つからないな

そもそも顔が割れている時点で殺人鬼としてはどうなのと思ったが」

「しょうがないんだよ・・・私、 いやワタシにはポリシーってものが有る

・・・・・いやポリシーとは違うか? 性癖、 と言った方が正しいか」


『何で今初めて会った人間の性癖を聞かなくちゃならないんだよ

そもそも何で今初めて会った人間に性癖を披露してるんだよ』


と言いたかったが、 時間が経てばたつほどに此方が有利になる。

この惨状だ、 時間が経てば

冒険者や【右道】の魔法使いもやってくるだろう。


「まぁまぁ聞けよ、 性癖とは大事・・・あ

いや、 待て、 お前達、 性別は? 多分男と女のコンビだと思うけど有ってる?」


確認を取って来るので肯定した。


「良し、 なら良いか、 じゃあ語ろう

人間の始まりは誕生にあるがその誕生には性交が必要不可欠だ

その性交の始まりにあるのが性癖だ、 性癖は人間の原初で有ると言って良い

そこで私の性癖なんだが、 ワタシは売女ビッチが好きだ

女は淫らな程良い、 当然ながら体が良い事が最重要事項だが

世の中には処女ヴァージンを重視する

処女厨なる連中もいるが、 経験豊富な事は良い

寧ろ童貞を馬鹿にする連中は多いのに処女を馬鹿にしない風潮には

ほとほとうんざりする、 取引相手にポッと出の商会を選ぶか?

経験豊富という事は良い事なんだ、 まぁ良い

私は処女か非処女かは重視していない、 最初なんて如何でも良い

肝心なのは最後・・だ」


あ、 何を言いたいのか分かった。

自分がこの殺人鬼と似た様な思考な事にイラついた。


「ワタシは女と███した時

その女の最後の男になりたいんだ

故にワタシと███した後には殺す

皮を剥ぐのは死体を犯されない為だ、 皮が剥がれた死体相手では

例え██████でも███出来ないだろう」

「この外道が・・・」


悪態を吐くアーケアス。


「落ち着け御嬢さん、 ワタシの顔が割れている理由にも関係している

ワタシはさっきも言った通り███した後には殺す

逆に言えば███しなければ殺さない

故に君の生存もMEAT MELT肉の溶解

「!?」


アーケアスの体が突如として高熱を発した。


「肉を溶解点まで熱する魔法だ、 死ななくてもただでは」


ボクは指差しカースを撃ったが剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパー

掴んでいた女を盾にした。


指差しカースは魔法使いで防げる」


魔法使いには魔法に耐性がある。

人体を簡単に貫けるボクの指差しカースだが流石に魔法使いを貫ける威力は無い。

それでも盾にされた女はほぼ死体だが。

明らかに戦い慣れている。


「!・・・・・抱いていない女は殺さないんじゃなかったのか?」

「あぁ、 さっきの話ね、 さっきの話は

健康診断で病気じゃないかって疑われて禁欲する事になってね

尿検査5日前から禁欲生活しないと駄目らしくて

で久々の女と言う事で娼婦を何人か呼んだんだけど

途中で満足しちゃって、 残りを帰しちゃったんだよ

それでワタシの面が割れてしまってね」

「その反省から女を無差別に?」

「いや、 ワタシはずっと禁欲生活を続けている

皮を剥ぐ経験から【皮膚の兄弟団】に身を寄せる事になってね

ワタシの皮を剥ぐスキルは高く評価されているんだ

そこで聖女って人が居るんだけどこの人がステキでねぇ

その人を抱く為に色々と頑張っているんだよ

故にワタシは聖女以外を抱かないから他の女は

ストライクゾーンから外れている

だから殺せる」

「猟奇殺人鬼の癖に純愛?

そして最後のストライクゾーン云々は訳が分からない」

「子供には分かるまい」

「殺人鬼と共感はしたくないね」

「「ははははは」」


穏やかな雑談に見えるだろうが違う。

魔法の発動には時間のかかる物が有るのだ。

互いに時間をかけているのだ。


WITHER LIMB手足の萎縮!!」

「|CURSE OF THE PUTRID HUNK《腐った外皮の呪い》!!」


WITHER LIMB手足の萎縮は相手の手足一本をの内

どれかを萎ませる魔法、 剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパー

右足を萎ませて動けなくした。

が、 こちらも喰らった。


「ッ!!」


ボクの肌が腐り始めて内蔵が露出し始める。


「何だコレ・・・強過ぎないか?」

「詠唱以前に下準備に大分時間をかけてるからな

お前こそ人様の足をこんなにしやがって・・・帰ったら治療して貰わないと」

「・・・・・」


内蔵がぼろぼろとはみ出るのはあまり気持ちのいい物では無い。

わが身を切らせて骨を断つと言うのは創作物で良く見るが

それ所ではない。


「倒れてくれないか? お前の頭を切り落としてさっさと帰りたい」

「ッ・・・」


剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパーの煽りに何も返せない。

魔法を唱える事すら難しい、 人差し指を指しても指差しカースが出ない。


「アーケアス、 後は任せた」


ボクは眼を閉じた、 と当時に覆面が取られ

柔らかい物が唇に触れ、 何かが口に入る。


「・・・・・」


眼を開くと目の前には舌を出して涎の糸がボクとの間に引いている

アーケアスだった。


「幻覚よ」

「・・・・・」


お腹を見ると腐った皮膚が元通りになり

内蔵も元通りだった。


「キスで回復ぅ!? 何だそりゃ!?」


剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパーは驚愕した。

と言うかボク、 キスされてたのか・・・?


「ありえん!! 何だお前は!!」

「お前に言う筋合いは無い」


アーケアスは剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパーの元に一息で移動する。


VANISH消滅ッ!!」


剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパーはその場から消え去った。


「転移魔法か・・・【ゲッシュ】逃げるよ」

「え、 あ、 うん」


ぞろぞろと足音が聞こえる。

恐らく冒険者達だろう、 遅いって・・・

ボクとアーケアスは窓から飛び出して逃げ去ったのだった。




服を捨ててアーケアスと家に戻る。


「・・・婚前交渉はしないんじゃなかったの?」


ボクはアーケアスに悪戯っぽく尋ねた。


「危機的状況だから仕方ないよね」


ずいっとアーケアスが迫って来た。


「そ、 そうなんだ」

「あ、 いや、 待って」


がし、 とアーケアスに捕まれた。


「え?」

「まぁ危機的状況とは言え婚前交渉しちゃったし

最後までやろう・・・・・・・


ボクはアーケアスに押し倒された。

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