対面

ゴハリは早朝の出勤中から面食らっていた。


「おいおい何だこりゃ!?」


顔の無い使用人フェイスレス達がパレードをしながら

街中で暴れまわっている、 抗議活動の筈が何時の間にか略奪になっている。


「コイツ等子供達にも襲い掛かってるぞ!!」

「ぶっ飛ばせ!!」


子供にも手を出すとなると最早大人たちも黙っては見ていられない

乱闘騒ぎになり始めた。

とは顔の無い使用人フェイスレスの方が圧倒的に劣勢である。

仕事もせずにグダグダと社会に愚痴を言っている連中では

仕事をしている大人たちには遠く及ばないのだ。


「あ、 【右道】の人!! 何とかして下さい!!

あいつ等私達を襲って来たんですよ!!」


顔の無い使用人フェイスレスがゴハリに助けを求める。

ゴハリに賄賂を渡していたので【右道】は基本的には

顔の無い使用人フェイスレス贔屓であった・・・・


「・・・・・」


ゴハリは心底嫌そうな顔をして去って行った。

流石に数が多過ぎて自分一人では如何しようも出来ないし

流石に擁護し切れないのだ。

何もみなかった事にしようと思ったが


ドゴォオオン!! と轟音が鳴り響く。


顔の無い使用人フェイスレス達の乱闘も一気に冷めた。


「な、 なんだ!?」


――――――――――――――――――――――――――――――――


商会では【皮膚の兄弟団】達の襲撃に対して

デリシャスの私兵達が戦っていた。


流れ流れてネバーリバー!!」


【背水】の魔法の一つである。

水を地面に流して敵の歩みを留める魔法である。


尊火ヤサダ・アータル!!」

交差路クロスロード!!」


火球や矢の雨が【皮膚の兄弟団】達に襲い掛かる。

しかし彼等も準備はして来たGRAFT FLESH肉移植と呼ばれる魔法で

魔法の肉を移植する事により非凡なる耐久を得ているのだ。

この為、 倒される訳が無い、 と思っていたのだが。


「また来るぞ!!」


ドゴォオオン!! と轟音が鳴り響く。

そしてまた【皮膚の兄弟団】が倒れる。

落雷で有る、 落雷の命中により【皮膚の兄弟団】は

一人、 また一人と倒れて行った。


「糞ッタレ!! こんなん聞いてねぇぞ!!」


【皮膚の兄弟団】の一人が叫んだ。

こんな馬鹿みたいな威力の魔法使いが居るなんて聞いてない!!

流れ流れてネバーリバーによって前に進むのが遅くなるが

逆に逃げるのならば問題無く逃げられるので逃走する【皮膚の兄弟団】達だった。


「やった、 か?」


魔法使いの1人が呟く。


「沙羅双樹さん、 さっきの雷はなんだ?」

「分からん・・・魔法なのか?」

「魔法だろう、 こんなに晴れてるんだぜ?」

「だが落雷の魔法なんて知らないぞ・・・?」


狼狽えるデリシャスの私兵達だった。


――――――――――――――――――――――――――――――――


顔の無い使用人フェイスレス【金の淵】支部の支部長室にて

支部長が商会の有る方角を見ていた。


「ふーむ落雷サンダーか」

「何よそれ」


ライムが尋ねる。


「【黄金】の魔法ですね」

「【黄金】!?【反逆派】の!?」

「ですね、 噂には聞いていた・・・

【金の淵】には【黄金】の魔法使いが潜り込んでいると」

「ど、 如何するの!?」

「・・・・・」


支部長は懐中時計で時間を見た。


「突入開始時刻から15分、 商会に向かった方は逃げ出して

役所の方は音沙汰無し・・・全員やられたか

完全に抜かった」

「抜かった・・・って如何するのよ!!」

「逃げる」


覆面を脱ぐ支部長。

整いながらも幼さを残した端正な顔立ち。

ライムは震えながらも彼の名を呼んだ。


「じゃ・・・剥ぎ取りジャックジャック・ザ・ストリッパー?」

「その名前は好きじゃないな、 アンタも覆面脱いで逃げた方が良いぞ

覆面被ったままじゃあ逃げるのも難しいだろうしアンタは放火魔だが小物だ

誰もアンタの事なんか知らないだろ」

「・・・私の事知っていたの?」

「まぁ隠しているから知らんぷりしていたよ、 とりあえずこれ」


ぽいとずっしりと重い金貨袋を渡されるライム。


「アンタの取り分、 どうせガサ入れで無くなるだろうし持って行きな」

「あ、 アンタは?」

「だから言っただろ逃げると」

「そうじゃない!! アンタは失敗したのに何でそんなに平然としている!!

皮が剥がされた死体はアンタの仕業!?」

「まぁ確かに街を乗っ取れなかったが

馬鹿を騙して欲しい物は手に入ったから良いんだよ

あと死体は手下達に皮の剥ぎ方を教えていただけだ

私は手を加えていない・・・ん?」


支部長はスンスンと鼻を鳴らした。


「焦げ臭いな」

「へ?」


部屋の外から声が響く。


「支部長!! 火、 火が!!」

「仲間が火をつけ始めて仲間ヲ!?」


ずちゃり、 と外から湿った音が響く。


「副支部長、 ドアに向かって最大出力の魔法を」

「っ!!」


支部長は自然にライムの背後に移動する。

逆らったら殺すと言う事を暗に宣言している。


「・・・・・」


ライムも落ちぶれているとはプロ。

瞬時に思考を切り替えた。


善きは善き!! 悪しきは悪しき!!燃え盛る真理!!」 


両手から炎球が溢れ出て円陣を組み巨大な業炎と化してドアに向かった。

ドアごと壁を貫く、 火に巻かれる2人は即座に炭化した。


「叫び声が聞こえない!! デコイだ!! 弾幕張れ!!」

「ッ!! 祭儀の心得ヤスナ!!」


支部長は叫び大量の火の玉の弾幕を貼り始めるライム。

ライムの腕が吹っ飛ぶ!!


「っ!! ぇ」


ライムの体を掴んで支部長は部屋の外に飛び出した!!

外に居たのは覆面を被った二人!!


指差しカース・・・厄介な相手だ」

「君には劣るよ!!」


【ゲッシュ】は叫んだ。

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