皮膚の兄弟団

ボクとアーケアスが偉そうな覆面フェイスレスと擦れ違った後

家に帰ってパパっと食事を摂った。


「【ゲッシュ】、 気が付いているだろうから

口にするのは如何かなって思ったけど」

「分かってる、 さっきの擦れ違った奴だよね?

何だかヤバそうだった」

「それもだけど、 監視されてる」

「マジで?」

「マジ、 数は二人、 こっち・・・と同系統の魔法使い」

「こっち?」

「君がお父様から教えて貰った魔法と同系統って事

いや同系統と言うか同郷?」

「確かに発音とか明らかに違うけども・・・

系統とか無いの?」

「特に無いよ? 【魔法】は【魔法】で特に体系は無い

まぁどこどこの誰々が使う魔法とかあるけどね

強いて名付けるなら【Magiマギ】・・・かな」

「中々にステキなネーミングだね

・・・で、 外の連中は【Magi】の魔法使い?」

「そうだね、 如何する?」

「見張られるのは厄介だからさっさと片付けよう」

「OK、 敵さんは下で見張っている奴と建物の上から見張っている奴が居る

私は上、 【ゲッシュ】は下ね」

「分かった」


アーケアスが家から出た。

ボクは窓から外を見る、 確かに怪しい奴が居た。


EVIL EYE邪眼


この魔法はそれなりに魔力と

少しの精神力を消費するが対象を視界に収めるだけで発動出来る。

効果は『運を悪くする』。

大した事無いように思えるが街中で使うと酷い事になる。


男の頭上から植木鉢が落ちて脳天に直撃し倒れた。


とりあえず無効化は出来た、 しかも怪しまれないスムーズな形で


――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・・・」


屋上で監視していたレチエルは完全にやってしまったと蒼褪めていた。

監視対象の1人が家から出て来たので身を乗り出したら

植木鉢にぶつかって下にいた相棒に”偶然”当たってしまった。


「ヤバいな・・・如何しよう・・・」


流石に黙って見ている訳にはいかない、 さっさと助けに行くとしよう。

レチエルは振り返るとそこには監視対象の女。


CONTROL SKIN皮膚の制御!!」


CONTROL SKIN皮膚の制御は対象の皮膚を操作して

捻じれさせ変形させる魔法である。

顔を変形させれば呼吸が出来なくなる、 筈なのだが・・・


「な、 何故効かん!?」


不定の落し子であるアーケアスには通用しない。

彼女は人型に見えるだけで実体は存在しないのだ。

アーケアスは触手状に伸びた粘液でレチエルを拘束した。


「これから質問をする、 答えなかったら殺す」

「な、 舐めるな・・・」


ぐちゃり、 と言う質感と共に首を絞められるレチエル。

彼は久方ぶりに死を強く意識した。

自分は人を多く殺しており死なんて平気だと思っていたのは

思い込みだと自覚した。


「しゃ、 喋る!! 喋るよ!!」

「まずアンタは何処の誰?」

「お、 俺は【皮膚の兄弟団】のレチエル!!」

「【皮膚の兄弟団】・・・厄介な奴が来たわね

顔の無い使用人フェイスレスとは如何言う関係?」

「連中は俺達の隠れ蓑だ!! 俺達が行動する為に一緒に居る!!」

「全員がアンタみたいな魔法を使える?」

「い、 いや!! 俺達の目晦ましのゴミ共ばかりで

魔法使いは殆ど居ねぇ!!」

「じゃあ何人?」

「10人!! 俺達下っ端の神父とボスの司祭だけだ!!

後ボスが連れて来た【拝火】の魔法使い!!」

「この街に来た目的は?」

「こ、 この街を乗っ取る事だ!! ゴミ共暴れさせて

気を取られている隙に役所と商会を乗っ取る!!」

「そう、 CLOUD MEMORY記憶を曇らせる、 私との接触は忘れろ」


CLOUD MEMORY記憶を曇らせるは特定の記憶を曇らせる魔法である。

これでアーケアスとの接触は記憶できなくなったのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――


「と言う訳でこれから攻め落としたいと思います」

「待て待て待て」


アーケアスが仕入れて来た情報を聞いて

速攻カチコミに行こうとするアーケアスを止めるボク。


「【皮膚の兄弟団】って何?」

「【無貌の神】の化身の一つ

【皮膚なき神】を信奉する小規模なカルト集団よ」

「化身?」

「この前も言ったけど正体が無い故に

無限の顔を持ち合わせるのが【無貌の神】

化身とは【無貌の神】の正体の一つ」

「・・・つまり【無貌の神】とは【皮膚なき神】の事?」

「【皮膚なき神】でもあり、 他の正体も同時に成立する

要するに化身A、 化身Bと二つの正体を同時に権限出来る

って事」

「・・・・・」


理解が追い付かない、 が何となく分かった。


「要するに二人で一人の神様って事?」

「∞人で一人と言っても良い、 ハッキリ言うけども

一人一人が父上よりも強い上に性格の悪い奴等揃い

そして【皮膚の兄弟団】は【皮膚なき神】を呼び出したがっている

これはドミノ会場に犬を放つが如くの暴挙!!」

「・・・・・言わんとする事は分かったよ、  でも危険なら逃げれば良くない?

この街にそこまで愛着有るの?」


アーケアスはチッチと指を振る。


「ドミノ会場とはこの世界全体を指す」

「あぁ・・・呼ばせたらアウトなのね・・・」


また面倒な事になった。

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